82、盗爵レイドルノ:2
引き続き、ヴァグドーとレイドルノが対峙しているところから。
●【No.082】●
臨王国、
国内の西南側にある、とある森林の某所にある、レイドルノが居る大型洞窟にて。
そこにヴァグドーたち11人が、レイドルノに会いにやって来ている。
前回では、半ば強引に戦闘にもっていき、レイドルノと勝負しようとしたヴァグドーと、逆にヴァグドーの底の見えない恐ろしい実力とビジネスの為に、戦闘を回避したレイドルノ……それぞれの思惑や駆け引きが、この二人の中で行われている。
むむむぅ~~!
くそ! まさか……あの絶妙なタイミングで、ひざまずいて謝罪して、逃げてしまうとは……のう!
ふーうー!
危ない、危ない、まさか本当に……ここまで戦闘好きだったとは……思わなかった……な。
レイドルノからヴァグドーに話しかけてきた。
「確かにビジネスなら、喜んで協力しよう。 俺も仕事の依頼ならいつでも受けている。」
「ほう、そうか」
「それでは早速ですが、レイドルノ……あなたに聞きたいことがあります!」
ここで勇者アドーレが素早く、二人の会話の間に割って入ってきたが―――
「ちょっと待った!」
レイドルノの方も素早く、勇者アドーレの会話を制止した。
「……っ!?」
「えぇっ!? 何ぃっ!?」
「何ですか? いきなり!」
「言った筈だぜ、これはビジネスだとね……俺は慈善事業をしている訳ではないから、働いた分の報酬は、しっかりといただくつもりだぜ!」
「なんですと、お金ですか?」
「な、何ぃっ!? お金を取るつもりなのかぁっ!?」
「なんだよ、お金なんて持ってないぞぉっ!?」
「あらら~~♪ 金銭解決は私の専門外だよねぇ~~♪」
「聞いてないですよね? マスターシャニル」
「……ちっ! ガメツイヤローだぜ……!」
レイドルノの協力依頼には、報酬……つまり、お金がかかるみたいだ。 確かに考えてみると、そういった場面は、今までの中でも結構あった気がするけどね。
お金がかかるということなので、一行がそれぞれ困惑していると、ヴァグドーが―――
「それで、いくらじゃ?」
「ん? ああ、そうだな……アンタらは、今回が初めての依頼主だからな、初回サービスで500金臨で仕事を受けさせてもらうよ。」
「………」
「え? 500金臨だと!?」
「ちょっと待て! そんなバカな! いくらなんでも、それは高すぎるぞぉっ!!」
「お仕事での報酬がそんなにお高いとは、お客様目線ではありませんね。」
「確かに客商売の値段じゃないよなぁっ!?」
「そうだぞ! もう少し安くしろ! この守銭奴がぁっ!!」
今度はレイドルノの報酬金額のあまりの高さに、一行が不満を持っていて、値段の改善を要求している。
臨王国のお金について。
臨王国の通貨とは、全国で統一されており、全て紙幣で流通されている。 紙幣の種類は三種類あり、『金臨』と『銀臨』と『銅臨』の3つに分かれている。 『1金臨』とは最も高い紙幣で、日本円で一万円の価値、『1銀臨』とはその次に高い紙幣で、日本円で一千円の価値、『1銅臨』とは最後に高い紙幣で、日本円で百円の価値にあたる。
今回の場合は、レイドルノの提示した報酬金額が、500金臨で……つまり、日本円で500万円の価値……確かにかなり高いのである。
「まぁ……いいじゃろう、その報酬金額で協力依頼を受けてもらおうか。」
すると……なんと、ヴァグドーがあっさりと500金臨の報酬金額支払いを受け入れた。
「―――えぇっ!?」
「ふふふ、こう見えてお金の蓄えは結構あってのう。 そのぐらいの金額ならば、なんとかなるじゃろうて。」
ヴァグドーには、アーサンティラル王国に居た時から、お金を必要以上に貯めていて、お金が結構あり余っているのだが、そのお金を使用する機会がなかなかなく、何処かで早く消費したいと常々思っていた。
「これでようやく……嵩張るお金から解放できる訳じゃな!」
「ふふふ、本当に面白い男だな。 まぁいいだろう、これで契約成立だな。」
ヴァグドーとレイドルノは、がっちりと握手をした。
「―――ということは、あなたはボクたちの仲間になってくれるのですか?」
「いや、違うな。 契約上での協力をするだけで、別にアンタらの仲間になる訳ではない。 俺はもともと一匹狼なので、アンタらと一緒に行動するつもりもない。 だが、引き受けた500金臨分の仕事に見合った働きはさせてもらうよ。」
「ふふふ、なんじゃぁ。 そういうお前さんも、なかなか面白い男ではないか。」
「……ふっ そうかな……」
こうして、遂に協力依頼を引き受けてもらい、ヴァグドーはレイドルノとの協力関係を築き上げることに成功した。
お金による味方が一人登場するが、コイツこそ真のぼっちなのか!?




