76、新たなる目的
●【No.076】●
臨王国、
『宋尊城』の中にある臨王の執務室にて。
丁度、現在の時間帯は、ヴァグドーや大魔女シャニルたちが、大浴場で入浴している最中である。
部屋の中では、臨王と勇者アドーレの二人が、向き合って椅子に座り、話し合っていた。
「君たちのお陰で、無事に全ての金塊や財宝を回収する事ができて、これで我が国家予算の目処もついたぞ。」
「そうですか、それは良かったですね。 臨王」
「それで君の方は、旅は順調なのか? アドーレよ」
「……いや、駄目ですね。 残念ながら…悪魔神トニトリエクルスに関する手掛かりが…まだありません。 だから…もう少し旅をして、手掛かりを集めなければ…なりません。」
「アドーレよ、どうしても、その悪魔神トニトリエクルスとやらを、早急に…倒さなければ…ならないのか?」
「臨王よ、悪魔神を倒さない限り、この世界の人類の安息と平和は、二度と訪れないのですよ。 それでもいいですか?」
「……うっ……」
「彼がいつ、人類を滅ぼすのかは…まだ解りません。 おそらく彼の目的は、人間界の征服です。 きっと…その為ならば、手段を選ばないでしょう。」
「………」
「この世界の人々は、あまりにも危機感が足りませんね。」
「そ、そうか……それでまた、旅を続けるのか? ……アドーレよ」
「はい、それで臨王には…ご協力を、是非お願いしたいのですが……?」
「おお、そうか! それで…余は一体何をすればいいのだ?」
「……レイドルノ……」
「……っ!!?」
「大魔女シャニルから聞きましたが、レイドルノと言う名前の男が、この臨王国に入り込んでいるそうです。」
「レイドルノか……確か…ギドレファナス王国の王家親衛騎士団隊の一人だったか? 以前…ギドレアス国王の護衛で見たことがあるぞ!」
「……騎士……?」
「ああ、そうだ! 他にも色んな肩書きを持っている…と聞いているが……」
「……彼に会う方法は、何かありますか? 臨王」
「……確か…この臨王国の西南方向で、姿を確認したと報告を受けている。 そこは森林のある場所で…その何処かに、身を隠す場所がある。」
「……西南方向……」
「……会いにいくのか? ……アドーレよ」
「はい、今はどんな些細な手掛かりでも、欲しいですから……彼が悪魔神に関する情報を、何か持っていれば……いいのですが……」
「アドーレよ、大魔王の方は、どうするつもりだ!?」
「大魔王エリュドルスの方は、取り敢えず後回しにしますが、彼もいずれは必ず……」
「……そうか……」
「また、少し臨王国を離れるかもしれませんが、すみませんが…後のことは、宜しくお願いします。 臨王」
「おお、判っておるぞ! 勇者よ! お前には、悪を討つ責務があるのだからな! 悪魔神も大魔王も討てるのは、いつの世も勇者のみ!!」
「ありがとうございます。」
※ ※ ※
すると、お風呂に入っていたヴァグドーたち七人が、ようやく臨王の執務室に戻ってきていた。
「おう、待たせたのう。 アドーレよ」
「いえ、こちらもそろそろ、次の準備が出来ました。」
続いて、別行動をしていたルドルス将軍、アルベルス、アルラトスの三人も、臨王の執務室に戻ってきていた。
「シャニル様! お風呂はいかがでしたか?」
「ええ、とても気持ち良かったわよぉ~~♪」
「あっ そうなんですかぁ~~♪ 私も後で入ってこようかなぁ~~♪」
「それは良かったですね。 シャニル殿」
「ええ、ありがとねぇー、臨王ちゃん♪」
※ ※ ※
大魔女シャニルが、臨王に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、臨王ちゃん♪ 私たちもぉー、ヴァグドーちゃんたちに、一緒について行くことに決めたの♪」
「おお、遂にシャニル殿も、動き始めるのか?」
「なんだか、私もヴァグドーちゃんの毒牙にハマっちゃったみたいで、スゴく気に入っちゃったわぁ~~♪」
「おお、そうか! これで遂に勇者アドーレ、戦士ヴァグドー、大魔女シャニルの三人が揃い、無敵のパーティーになりつつあるようだな!」
「そういう訳だから、修塁昌の方は、臨王ちゃんの方で、ヨロシクねぇ~~♪」
「了解した、皆さんの健闘を祈りますぞ。」
「ヴァグドーちゃん、アドーレちゃんもヨロシクねぇ~~♪」
「おう、宜しくな!」
「こちらこそ、宜しくお願いします。 シャニル」
これでヴァグドー、勇者アドーレ、カグツチ、ロンギルス、エクリバ、ニーグルン姫、ルドルス将軍、テミラルスの八人に、大魔女シャニル、アルベルス、アルラトスの三人が、新たに仲間に加わり合計11人になった。
「皆さん、次の目的地は "レイドルノ" です。 それぞれ準備の方を宜しくお願いします。」
「おお、アドーレよ! 余の方からも、旅立ちの祝いに、この臨王からプレゼントを―――」
※ ※ ※
すると突然、一人の兵士が慌てて、臨王の執務室に入室してきた。
「た、大変です! 陛下!」
「なんだ、騒々しい……一体何があったのだ!?」
「反乱です! 魏慈鯉将軍が謀叛を起こし、金塊や財宝が置いてある宝物殿の中にて、籠城しております!」
「な、なんだとっ!?」
なにやらまたしても、事件勃発の予感である。
また…ヴァグドーたちは、足止めなのか!?