74、狩侯聖者:3
大魔王エリュドルスはレイドルノと会話する。
●【No.074】●
大魔王エリュドルス!
全ての魔族と魔族の国を統べる大王にして、大魔王城の主である。
その大魔王は、レイドルノが使用している大型洞窟の中の、奥の方に出現してきて、デイラルスとレイドルノが対峙している場面に、突如として乱入してきた。
その大魔王は、丁度デイラルスの真後ろに立っていて、二人の会話にも乱入してきた。
「さぁな、余も悪魔神の居場所までは、あまりよく解らぬのだよ。 少し前までは、暗闇の中にいたのだが、現在は何処にいるのか、もう解らぬのだよ。」
「ほう、なるほど、そういうことなのか? まさか…自らここまで出向いて来るとはなぁ。」
「……うぐっ……」
「ところで、その "狩侯聖者" という者は、一体…何者なのだっ!?」
「…詳細は不明。 魔族だと言われてるが、一説には悪魔神の分身体とも言われている謎多き生命体なのだよ。」
「な、なんだとっ!? そんな者がいたとは、余はそんな報告を受けていないぞっ!?」
「ほう、それは御愁傷様だな。 だが問題なのは、何故…デイラルスが "狩侯聖者" を欲しがるのか……だが?」
「―――っ!?」
大魔王はレイドルノの発言に驚愕しており、この瞬間になって、初めてデイラルスの本当の目的が、判りかけてきた。
「そ、そんなバカなっ!? 一体…何を言っているのだっ!? この人間めがぁっ!!」
デイラルスはレイドルノの発言に、明らかに動揺しており、少し錯乱している。
「ふん、どうやらはっきり言った方が良さそうだな。 デイラルス、お前は悪魔神の内通者……もしくは協力者なのだ。」
「ち、違う! デタラメだ! だ、大魔王様! その人間の言うことを信じてはなりません! そ、そいつは我々を混乱させようとしています!」
デイラルスの顔からは、汗が止まらずに流れていて、かなり焦っている。
「………」
大魔王はデイラルスの必死の弁明を、まるで無視するかの様に、なにやら考え込んでいた。
「レイドルノよ…質問させてくれ…お前の意見が聞きたい。」
「………何かな?」
「仮に…お前の推測通りならば、何故…Aクラスの爵位を持つ上位魔族共が、余のもとにいて、従っておるのだ?」
「おそらくは、大魔王エリュドルスの情報収集と監視……であろうな。 今でこそ、人間の中にも強力な力を持つ者が、少しずつだが現れてきているが……当時の悪魔神はまだその事実を知らない。 つまり…取り敢えずは、大魔王さえ抑えておけば……なんとかなる……と言う考え方だな。」
「……悪魔神は……そこまで計算して……?」
「あくまでも、憶測の域ではあるが、それでも何か心当たりぐらいは……あるだろう?」
「………」
大魔王がまたしても、なにやら考え込んでいた。
「……質問は以上かな?」
「いや、次の質問だ…テミラルスもデイラルス同様に、悪魔神の手先の可能性があるのか?」
「おそらくはな……これも憶測の域なのだが、もしかしたら……以前から勇者や大魔女たちの情報収集と監視が、彼女の本当の目的……かもな。」
「そうか……さすがはレイドルノだな……沢山の情報を持ってるだけのことはあるな。」
「ふん、情報というよりも憶測で言ってるだけで……それが真実かどうかは……解らない。」
「………」
「……質問は以上かな?」
「いや、まだだ……これが最後の質問―――」
※ ※ ※
―――すると、突然……
「もういいよ……もう充分……そこまでだ!」
大魔王、デイラルス、レイドルノの三人が、謎の声に気がつき、その声がした方向を振り向いて見ると……そこにあの "狩侯聖者" が立って現れていた。
「そ、そんなまさかっ!? あなたは既に捕縛されて、ギドレファナス王国に送りつけられてるはずではっ!?」
強烈に驚くデイラルスに "狩侯聖者" が淡々と答えていた。
「その通りだよ。 だが忘れていないか……ボクは悪魔神の分身体だよ。 分身体は全部で七体いる……その内の一体が、ようやくギドレファナス王国の潜入に成功したよ。」
「な……なんと!?」
最早、そこまで計算しての行動は……それほど、悪魔神トニトリエクルスの策謀や暗躍が、物凄いモノであると言う事だ。
しかし、大魔王やレイドルノは、何故か…あまり動じていないようだ。
「……やっぱり…な……」
「ふん、なるほどな、悪魔神もテミラルスには、余と同じ命令をしていたのか?」
「少し……皮肉な結果だけど……大魔王にも、情報は届いているはずだよ。」
「………ちっ!」
「どうやら……余が想定していた以上に、人間世界に侵入している様だな……悪魔神よ!」
「ふふふ、心配いらないよ。 こちらもまだ準備ができていないからね。 もう少し時間がかかるかな? ふふふ」
そういうと "狩侯聖者" は、その場から姿が消えてしまった。
「……逃がしていいのか?」
「構わぬ、今回の事で大変勉強になった……その礼に今回だけは、見逃してやる。 では…さらばだ、レイドルノよ!」
「…ああ…」
「デイラルス! 帰るぞ!!」
「は……はいぃっ!!」
大魔王もデイラルスを引き連れて、その場から姿を消し去っていった。
判りかけてきた、悪魔神トニトリエクルスの目的と能力の一端……!?




