73、側近との軋轢:3
今回も再度、大魔王の登場です。
●【No.073】●
レイドルノが使用している大型洞窟の中の奥の方で、レイドルノと上位魔族のデイラルスが対峙していた。
お互いが向き合う様に、少し距離を置いた場所で、話し合っていた。
「……私の捕縛……!?」
「ああ、その通りだよ。」
「あら、そうですのね。 私はAクラスの爵位を持つ、上位魔族ですよ。 あなたが捕縛してきた "狩侯聖者" とは、かなり違いがありますが、それでも私と戦うつもりですか?」
「いや、戦いには…ならない。 お前も先程言ってたじゃないか…… "戦うつもりはない" ……とな。」
「………えぇっ!?」
「………」
デイラルスはレイドルノが何を言っているのか、よく解らずに人差し指を唇に当てて、不思議そうな表情をしていた。
「あら、それは一体どういう意味ですかね? もしかして…戦わずに、私を捕縛するつもりですか?」
「………」
「うふふふ、言ってる意味がよく理解出来ませんが、あなたがどんなに強くても、そう容易く……私がやられるつもりはありませんわ。」
「………」
レイドルノの顔からは、何故か汗が出てきていて、無表情の顔から物凄い緊張感と恐怖感を漂わせていて、依然として無言と臨戦態勢のままで、デイラルスの方をずぅっと睨み付けていた。
「あら、どうかしましたか? また…急に無口になりましたけど、あなたが一体…何を考えているのか…まったく! よく解りませんわ!」
「………」
※ ※ ※
―――すると、突然……
「それはこちらの台詞だ、デイラルス!! 貴様こそ、ここで一体何をやっているのだっ!?」
「………え??」
「遂に来たか……大魔王エリュドルス!」
聞き覚えのある……この声……思わずデイラルスの動きも止まってしまった! デイラルスの真後ろには、突如として出現してきた、大魔王の黒色のマントとフードが少しなびいていて、顔を確認することは出来ないが、その強烈な気配と存在感に、デイラルスの顔からも、汗が出てきて流れていた。
「貴様の任務は、貴様の妹であるテミラルスとの合流と、ヴァグドーやアドーレたち人間の監視のはずだが、ここで一体何をしているのだ!?」
「あぁ……えぇ……いえ……その……あの……」
デイラルスが背後からの強烈な緊張感で、後ろを振り向くことが出来ない。
レイドルノも相変わらずの緊張感で、その場を動くことが出来ない。
「さぁて、ここで一体何をしているのか、正直に答えてもらおうか? …デイラルスよ」
「………」
デイラルスが無言のまま、顔から汗を流し続けていた。
「ほう、黙りなのか? ヴァグドーたちは遂に、大魔女シャニルとの接触にも成功している……この大事な時期に、貴様がここで油を売ってる理由を説明してもらえないのか? …デイラルスよ!」
「………」
デイラルスはまだ喋ることができない。
※ ※ ※
―――すると、突然……
「その女の目的は、俺が捕縛してきた "狩侯聖者" の回収だよ。 まぁ、"狩侯聖者" はここには、既にいないがな。 …大魔王エリュドルスよ」
レイドルノが大魔王に話し始めていた。
「……なっ 何を言ってる!? この人間めがぁっ!?」
デイラルスがレイドルノの突然の発言に、激しい動揺と驚愕をしていたのだが、
「ほう……構わん……続けろ」
「俺の依頼主はギドレファナス王国の国王ギドレアスだよ。 …俺に与えられた仕事は3つ。 それは "狩侯聖者" と "デイラルス" と "テミラルス" の捕縛・回収をして、ギドレアス国王のところまで、送りつけることだよ。 俺は既に "狩侯聖者" をギドレファナス王国に送りつけている。」
「……うぐっ……」
「ほう、なるほどな。 だが……依頼主の情報と仕事の内容を、第三者の余にバラしてもいいのか? そんなことをしたら、依頼主からの信用や報酬とかは、得られないだろう!?」
「ふん………余計なお世話だよ、要らぬ心配はやめろ! …大魔王エリュドルスよ!」
「ほう、そうかい……まぁ、別にいいがな……レイドルノよ」
「……こ、これは一体……?」
大魔王とレイドルノの会話や関係に、デイラルスがかなり困惑していた。
「さぁて、今度はこちらから質問させてもらうか……大魔王エリュドルスよ」
「ほう、それは一体何かな? …レイドルノよ」
今度はレイドルノが大魔王に質問してきた。
「……悪魔神トニトリエクルスは、現在……何処にいて……どうしているのだ!?」
「………」
今度は大魔王の方が、沈黙してしまった。
まったく! 最近の部下共は、どいつもこいつも言うことを聞かないな! (大魔王エリュドルス)




