72、暗躍と陰謀:2
●【No.072】●
臨王国、
国内の西南側にある、とある森林の中の某所にて。
その森林の中の何処かに、レイドルノが使用している大型洞窟の入口があり、そこに再び戻ってきていた。
その大型洞窟の中に入ると、内部が非常に広くて、レイドルノだけが住めるように、ある程度の物が置いてあった。
その大型洞窟の奥の方にある、大きな空間の住居スペースにレイドルノが到着してきた時、
「……っ!?」
「あら、おかえりなさい」
その一番奥にある石で作られた玉座の様な椅子に、一人の女性が座って待っていた。
「………誰だ!?」
「うふふふ、さすがに怪しんでるようですね。」
どうやらレイドルノ自身にも、まったく知らない女性のようなのだが、かなりの美人のようである。
「………ちっ! 誰だ!」
不審者で侵入者を前に、レイドルノは素早く、黒色の長細い鉄製の棒【ブラックスコーピオンズロッド】を取り出し、臨戦態勢をとっていて、その無表情のレイドルノの身体からは、とてつもない闘志と殺気が、物凄い勢いで噴き出していた。
「うふふふ、何か勘違いしてるようですわね。 私は別にあなたと、戦うつもりはありませんわ。」
「………」
レイドルノはその謎の美女を相手に、無言で睨み付けながらも間合いをとり、戦闘準備をほぼ完了させていた。
「おい……誰だ……と聞いている!?」
「うふふふ、私の名前はデイラルス、上位魔族ですわ!」
「―――っ!?」
(……この女が次の……)
なんと、黒色のワンピースを着てきた上位魔族のデイラルスが、凛々しく立ち上がっていた。
「私はあなたとお話しがしたいのですわ。」
「……お話し……だと!?」
「はい、あなたが捕縛してきた "狩侯聖者" を、私に渡して欲しいのですよ。」
「………」
「勿論、タダではありませんわ。 あなたが私に "狩侯聖者" を渡してくれれば、何でもお望みのモノを与えますわ。」
「………」
「さぁ、どうしますか?」
レイドルノは相変わらずの無表情で、無言と臨戦態勢のまま、徐々にデイラルスとの距離を詰めていた。
「……残念だったな…… "狩侯聖者" は……もうここにはいない……この中もとっくに探したのだろう?」
「ええ、確かに……ここにはいないようですね。 ではアレは一体、何処にいるのですか?」
「アレは……既にギドレファナス王国へ送りつけている。 今頃はギドレアス国王のところに到着している頃だよ。」
「……っ!? ギドレファナス王国ですって!? ……ギドレアス国王!? じゃあ、あなたの依頼主は……っ!?」
デイラルスがひどく狼狽しており、驚きを隠せないでいた。
「ああ、そうだよ。 俺の今回の依頼主はギドレアス国王だよ。 そして、その関係でこの臨王国に来ている。」
「………」
今度はデイラルスが無言になっていた。
「そういう訳なので、もうお前に "狩侯聖者" を渡すことは出来ない。」
「ま、まさか……ここでギドレファナス王国が絡んでくるなんて……そんなバカな……」
デイラルスがかなり動揺しており、遂には丁寧語ではなくなり、まるで独り言のように話していた。
「さて、どうする?」
今度はレイドルノが、デイラルスに問いかけていた。
「なるほどね、あなたはギドレアス国王の遣いで、この国に来て、目的を果たしている……と言う訳ですか?」
「ああ、そうだな」
「……くぅっ……」
(これがレイドルノ……少し甘く見ていたわ)
珍しく、デイラルスはおとなしくなり、うつむいていた。
「かなり落胆してるようだが、心配はいらない。 すぐに、お前も "狩侯聖者" に会わせてやるよ。」
「………え??」
「俺の目的はまだ完全に終わっていない。 第二の依頼はこれからだよ。」
「…第二の依頼…?」
「あぁ、最近の俺は運がいい……獲物から寄ってきてくれる……探す手間が省ける。」
「なんですって!?」
「第二の依頼……それはお前の捕縛だよ……デイラルス!」
レイドルノの標的になったデイラルスの運命はいかに!?




