71、暗躍と陰謀:1
また突然に場面が変わります。
●【No.071】●
臨王国、
『四済昌』の南側にある、とある街での某所にて。
ある日の真夜中の出来事。
宿屋のとある一室には、黒色の服を着た三人の男が座っていて、そこにレイドルノが部屋の中に入ってきていて、その男たちの目の前で向かい合う様に座っていた。
どうやら、江戸時代風の密談的な事が行われていた。
「よく来てくれたな。 レイドルノ、待っていたぞ!」
「………で、今回は一体どんな用件で呼び出したのだ?」
「ああ、時は来た! 我々は遂に動くことにしたのだ!」
「我々の悲願である "蔭王国" の再興……いや、復興と言うべきなのか?」
「ああ、その通りだ! 我々の "蔭王国" はまだまだ健在なのだ! そう、少し "猫" に引っ掻かれた程度なのだ!」
「………」
(何言ってんだ? コイツら!)
「いよいよ…我々は臨響昌に攻め込み、宋尊城の中にいる暗君.臨王の首を取る!」
「どうだ? 貴様も協力しないか? レイドルノ!」
「………遠慮する…」
「なにっ!!?」
「バカなっ!!?」
「なんだとっ!!?」
黒服を着た三人の男が、かなり動揺して片膝を立てていた。
「………不可能だ…」
「どういうことだっ!!?」
「まず暗殺するにしても資金が必要なのだが、貴様らは金塊や財宝の回収に失敗している。」
既に臨王は臨軍を派遣して、東側にある[許童昌洞窟]と、北側にある[刑布昌洞窟]と、西側にある[四済昌洞窟]と、南側にある[修塁昌洞窟]の中にある、金塊や財宝の回収を全て完了していた。
「……ぐぅっ……」
「ちぃっ!!」
「た、確かに……」
「次に臨軍十万の兵力を相手にどうするか…だが、貴様らがその少ない資金で、どれだけ頑張っても劣勢は確実だな。 それをどうするつもりなのだ?」
「……っ!!?」
「………むむっ!!」
「そ…それは…その……」
「さらに中央には、あの勇者が帰還したと聞いているし、南には大魔女も健在なのだ! これでは勝算はゼロ……可能性はない!」
「な、なんだと!? 我々が命を惜しむ腰抜けだとでも思っているのか!?」
「その通りだ! 我々は命を賭けて、この志を臨の愚民共に見せつけなければならない!」
「そ、そうだ―――」
「ふざけるなっ!!!」
ここでレイドルノが、会話を遮るように間に入って、大声を上げて制止していた。
「―――えっ!?」
「な、なにっ!?」
「うぐぅっ!?」
黒服を着た三人の男が、レイドルノの大声にかなり驚愕していた。
「目的も達成できるかどうか解らないのに、命を賭けるなどとは、それはただの犬死にになるだけだぞ!! それにこちらは、依頼された仕事の報酬を、まだ受け取っていないのだ!! 貴様らはまたこの俺を、ただ働きさせるつもりなのかっ!?」
「……っ!!?」
「な…なっ!?」
「いぎぃっ!?」
黒服を着た三人の男が、凄く悔しそうな表情をして、うつむいていた。
「無駄なことはやめろ! そして、諦めるんだな!」
そこでレイドルノが、立ち上がり踵を返して、そのまま部屋を出ていった。
「ちっ やっぱり……報酬金は……諦めよう……」
それからレイドルノが、すぐに宿屋を出ていくと同時に入れ違いで、臨軍の兵士の一部隊が急ぎ足で宿屋の中に入っていき、先程レイドルノと黒服を着た三人の男が、密談していた部屋に押し入った。
「そこまでだ!!」
「遂に見つけたぞ! 敵の残党め! 神妙にしろ!」
「おい、おとなしく捕まれ! この国賊め!」
黒服を着た三人の男は、まだ部屋の中にいた。
「畜生おおぉーーーっ!!」
「くそっ!! こんなところでぇっ!!」
「……ぐぅっ!!」
臨軍の兵士の一部隊と黒服を着た三人の男が、言い争い衝突していたが、結局は黒服を着た三人の男が、臨軍の兵士の一部隊に捕縛されて、そのまま連行されて、宿屋の外に出てきていた。
一方で、レイドルノが野次馬に混じって、物陰からその様子を眺めていると、背後から臨軍の一部隊の部隊長が立って現れていて、レイドルノに声をかけて、謝礼金を手渡していた。
「………ん?」
「ご協力…感謝します!」
「ああ、そうかい…それは良かったな…」
「はい、では失礼します!」
臨軍の一部隊の部隊長が、一礼すると踵を返して、そのまま立ち去っていった。
「………」
レイドルノはそれを見送っていた。
レイドルノの真の目的が、一体何なのか……まだ解らない?




