66、狩侯聖者:2
レイドルノが追跡中で、再び登場します。
●【No.066】●
四済昌の南側から修塁昌の西側まで続く巨大な森林を、狩侯聖者が木の枝をまるで忍者の様に、跳んでつたって逃走していた。
勿論だが、狩侯聖者はまだ身体がうまく動かせない様で、移動速度もかなり遅く、逃走行動もどこか……ぎこちなく、また……何処に向かっているのか、よく解らない。
「くっ! この・ボクが・こんなことに……なる・な・ん・て……っ!!」
逃走中の狩侯聖者が、後ろを振り向いて見てみると背後には、レイドルノが狩侯聖者を物凄い速度で追跡していて、レイドルノがあともう少しで、狩侯聖者に追いつけるところまで来ていた。
「おのれ! 他の奴らとは違って、俺はそう容易く逃がす訳にはいかないぞぉ!」
「くっ! しつこいな!」
ゴゴゴオオオォーーーッ!
すると狩侯聖者が、レイドルノの方に向かって、口から激烈な炎を吐いて、レイドルノを焼き尽くそうとしていた。
だが…今度はレイドルノが、ふたつの小型ナイフを、激烈な炎の方に投げつけて接触すると、激烈な炎が瞬時に凍結してしまった。
ピィッキィィィン!
「くっ! 何ぃっ!? そんなバカなぁっ!? このボクの炎がぁ……っ!?」
「ははは、まだ…抵抗できるだけの力が残っていたのか…? …さすがだなぁ…」
レイドルノが所有している複数の小型ナイフには、様々な能力がついており、対象物に接触すると効果が発動するようになっていて、"炎を瞬時に凍結するなど" の行為も、その能力のひとつである。
さらにレイドルノが、ふたつの小型ナイフを、狩侯聖者の左足の方に投げつけて接触すると、瞬時に凍結させて左足の自由を奪った。
ピィッキィィィン!
「え? 何? 嘘? 左足が凍ったの?」
「よし! まずは左足を封じたぞ! 次にこいつも喰らえ!」
続いてレイドルノは、追撃のふたつの小型ナイフを、狩侯聖者の右足に投げつけた。
ピィッキィィィン!
レイドルノが投げた小型ナイフが、狩侯聖者の右足に接触すると、なんと今度は右足の方も凍結してしまい、狩侯聖者の右足の自由も奪い、動きを完全に停止させた。
「よーし! 右足も捕らえたぞぉ!!」
「な、何ぃぃっ!!?」
またしても狩侯聖者が、凄く驚愕して狼狽していると、レイドルノが狩侯聖者にさらに急接近して、持っていた黒色の長細い鉄製の棒の両先端に、白色の光のエネルギーの刃を出して、狩侯聖者の腹部を貫いた。
ジュシャァン!
「ぐあがっ! そんなっ!」
ドサッ!
この時……初めて狩侯聖者が赤い鮮血を吐血して、木の枝から転落して地面に倒れてしまい、もう立つことすら出来ないでいた。
「ははは、どうだい? 俺の【ブラックスコーピオンズロッド】の切れ味は?」
「…そんな……バカな…? このボクのレベルは、300を超えているのに……たかが人間ごときに、このボクが敗北する訳がない…のに…?」
「…300…? ははは、残念だったなぁ! 俺のレベルは600を超えているのだよ!」
「……っ!!?」
狩侯聖者が目を丸くして、口を開けたままで、言葉にはならない驚きぶりの表情をしていた。
「…納得したか? ここまで来るのに……結構、苦労したけどなぁ! さぁ、さっさと貴様を捕縛して、仕事を終了するとしようかなぁ!」
そういうとレイドルノが、完全に行動不能になった狩侯聖者を左肩に担いで―――そこに狩侯聖者が、
「ま、待て! やめろ! このボクを一体何処に連れて行こうとするのだっ!?」………と、
「うるさい! 黙れ!!」
そこで二人共に、また…何処かに姿を消してしまった。
どうやらレイドルノは、狩侯聖者の捕縛が今回の仕事だったようだが、彼の仕事はあくまでも、「爵位」を「狩猟」することであり、今回の仕事と何か関係があるのか?
※【ブラックスコーピオンズロッド】とは、レイドルノの主力武器であり、黒色の長細い鉄製の棒で、両先端に白色の光のエネルギーの刃を出す………アレである。
レイドルノもなかなか強そうだが、もしかして…?




