03、女神ハーディス:2
冥界の女神の事務作業はマニュアル通りです。
●【No.003】●
ワシとハーディスとの会話は続く。
「ハーディス? あのハーディスなのか?」
「どのハーディスかは解りませんが、とにかくハーディスですわ。」
「…その異世界転生とはなんじゃ?」
「はいはい、ご説明しますわ。 あなたが居た世界とは全く違う世界…それが異世界ですわ。 しかしながら現在、空きのある異世界はひとつだけですわ。 本来ならば異世界も選べるのですが、これがまた満員御礼の大渋滞ですの。」
「……そうなのか?」
「その代わりと言っては何ですが、色々とサービスしますわ。 まずは特典能力ですが、本来ならばこれも選んで貰うはずなのですが、もうありませんの。」
「……そうか……」
「な・の・で♪ 特別に作っちゃいましょう♪」
「…え? 作る…?」
「はい、ご希望があれば……」
「………」
ワシは少し考え込んだ。
「………」
ハーディスはワシを見つめていた。
「よし! このワシに【ストリンガー・デスロック】をくれ!!」
「………え? 何ですか? ソレ……?」
ハーディスは不思議そうな顔で質問した。
「ふむ、発動時、その世界からワシの存在を約10分間、消し去る能力じゃ。 発動中は他者がワシに関する記憶・視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などを、ことごとく認識する事が出来ない様にしてくれ!」
「それって、透明人間ってコトですか?」
「まぁ、間違ってはいないが、何か違う様な気もするが、どうじゃ? 駄目か?」
「ん~~~…… まぁ、いいでしょう。 その代わり発動中はお互いに触れる事が出来ない、という条件を加えさせて貰いますわ。」
「それで構わん」
「はい、では特典能力決定♪ 続いて名前を決めますわ。」
「名前…?」
「本名でもいいですし、作って貰ってもいいですよ?」
「よし! では【ヴァグドー】で頼む!」
「はい、続いてお顔と体型を決めて下さい。」
「当然、黒髪のイケメンじゃ! 身体は長身の筋肉モリモリのナイスガイじゃ!」
「はい、服と鎧と盾と剣はサービスでお付けしまーす♪」
「…そうかい…」
すると、ハーディスは眼を閉じて、何かをぶつぶつ言っていた。
「はい、完了しました♪ ステータス オープン♪」
すると、何もない暗黒空間にステータスが表示された。
●・●・●
ヴァグドー: 無職
レベル : 1
耐久力 : 20
魔法力 : 0
―――――――――
攻撃力 : 7
守備力 : 10
機動力 : 6
叡知力 : 4
幸運力 : 5
―――――――――
絶望力 :100
能力 :【ストリンガー・デスロック】【肉体固定】
●・●・●
「これは…?」
「これはあなたのステータスですわ。 説明しますわ。まずは耐久力はあなたの命を数値化したものですわ。 これがゼロになると死にますわ。 次に魔法力は魔法を使用する時に必要な数値で、ゼロでは使用出来ません。」
「………」
「次は攻撃力…まぁ、おわかりだと思いますが、高ければ高いほど敵に大ダメージを与えられますわ。 次は守備力…こちらは高ければ高いほど敵からのダメージを受けにくい、つまりはなかなか死なないと言うコトですわ。」
「………」
「次は機動力…これはスピード、速度ですね。 俊敏力もここに入りますわ。 次は叡知力…まぁ、簡単に言えば頭の良さ、高ければ高いほど頭の回転が早いですわ。 次は幸運力…まぁ、読んで字のごとく運の高さを表していますわ。 高ければ、それだけラッキーってコトですわ。」
「………」
「さらに今回は、特別大サービスで【肉体固定】を付けちゃいます♪」
「…【肉体固定】…?」
「はい、一応、設定では20歳の肉体を与えるつもりですが、そこで肉体年齢を固定させちゃいます♪」
「え!? それって、歳を取らない…?」
「はい、そうでーす♪ 老いで死ぬコトはありません。 つまり、耐久力さえゼロにならなければ、永遠に―――」
「不老不死!?」
「はい、そうなるように頑張って下さい。」
「おお、なんと!!」
「さて、最後に絶望力についてですが、あなたの【ストリンガー・デスロック】は絶望力が100の時に発動でき、一度発動すると0になります。」
「ほう、発動条件があると言う事か? 0の時はどうすればよい?」
「はい、自然回復で少しずつ100に近づきますが、嫌悪、危険、恐怖などの負の感情が出ると大幅回復しますわ。」
「なるほど、そういう仕組みか。」
「以上で説明は終わりますが、何かご質問はありますか?」
「むこうに着いたら、まず何をやればいいのじゃ?」
「はい、まずは街を探して下さい。 街中に "ギルド冒険商" という所がありますので、そこで手続きを行って下さい。」
「… "ギルド冒険商" …? それは必ずしないといけないものなのか?」
「強制ではありませんが、手続きしないと身分証や通行証、職業が手に入らないですよ?」
「そうか、では気が向いたら行くとしよう。」
「そうですか、ではご武運をお祈りしますわ♪」
そう言うとハーディスの身体が光始めて、ワシは意識を失った。
絶望老人、ヴァグドーは一体何処に向かうのか?