65、回収部隊の到着:1
●【No.065】●
臨王国の軍用道路。
ヴァグドーたち一行を乗せた馬車と、鯉娃将軍が臨軍一万の兵士を引き連れて、ようやく四済昌にある街に到着していて、早速だが四済昌の昌留吏が出迎えてきていた。
「これは鯉娃将軍、お待ちしておりました。 では…早速ですが、例の奇妙な洞窟の方に行かれますか?」
「おお、そうだな。 勇者様、ヴァグドー殿、では…洞窟の方に向かいましょうか。」
「ふむ、よし行こうか!」
「はい、判りました。」
「宜しくお願いします。」
「そうですか。 それでは皆さん…お気をつけて下さい。」
四済昌の昌留吏は、ヴァグドーたち一行や鯉娃将軍たちを見送っていた。
ヴァグドーたち一行と、鯉娃将軍や臨軍一万の兵士は、四済昌の西側にある街の一番奥にある奇妙な洞窟……[四済昌洞窟]の入口まで到着すると、
(※既にレイドルノの姿は居なかった)
「ん?」
「……?」
勇者アドーレとヴァグドーの二人が、少し不思議そうな表情をしていて、何か……を疑問に思っていた。
「……どうかしましたか、師匠…?」
「いや、洞窟の中からは、強力で凶悪な化物の気配などは、特に感じないようじゃが、本当に居るのかのう?」
「はい、ボクもさっきからずっと、強力で凶悪な化物の気配を、探っているのですが…ありませんね……どうやら…もういないようですよ。」
「え? そうなんですか? それは一体どういうことですか?」
「………え? 何?」
「え? それは本当なんですか? …ヴァグドー様!」
「ああ、何故かは解らんが……気配がない……確かに居ないみたいじゃぞ!」
「アタシも何も感じないぞ?」
「おい、お前たち……洞窟の中の様子を確認してこい。」
「はい、判りました。」
鯉娃将軍が数人の兵士に、洞窟内の様子を確認するように命令した。
暗闇の洞窟内に入っていき、中の様子を確認してきた数人の兵士が戻ってきた。
「将軍、報告します。 洞窟の中を探ってみましたが、化物らしきモノは確認できませんでした。」
「何っ!? な、なんと言うことかっ!?」
「……やはり…か……」
「………それであとは?」
「はっ 洞窟内には誰もおらず、金塊や財宝もそのまま置いてありました。」
「これは本当に、一体どういうことなのですかね?」
「……と言うことは、最初から居なかったのか、それとも既に…誰かに倒されたのか、だと思うけど……それかな?」
さらに言うと、洞窟の外も見渡したが、そこら辺を暴れまわった形跡もなく、強力で凶悪な化物の姿も見当たらなかった。
「ふむ、敵はもうおらんのか? まぁよい、それなら鯉娃将軍は、早く金塊や財宝を回収するがよいな。」
「はい、判りました。 よし…お前たちは、早々に金塊や財宝を回収してこい。」
「はっ ただちに回収してまいります。」
臨軍一万の兵士は、早速だが暗闇の洞窟内に灯台をつけて入っていき、洞窟内の一番奥にある金塊や財宝を運び出しており、ヴァグドーたち一行は、それを全て運び出すまで、兵士たちを護衛する形となっていた。
本来の目的が、[四済昌洞窟]の中にある金塊や財宝の回収なので、それを全部回収すると、ヴァグドーたち一行や鯉娃将軍たちは、再び四済昌の昌留吏の所まで戻っていった。
そこに四済昌の昌留吏が話しかけてきた。
「これは皆さん、お疲れ様です! 鯉娃将軍もお早いお戻りで……!」
「ああ、そのことなんだが…」
鯉娃将軍が先程の出来事を、四済昌の昌留吏に説明すると凄く驚いていた。
「えっ!? そうなんですかっ!? それは不思議ですね、私にも何がなんだか……解りません…けど…?」
「お陰様で何事も危険がなく、無事に金塊や財宝が回収できました。」
「そうでしたか、それは良かったですね。」
「まぁいい、他に何かあったら、すぐに知らせろ。」
「はい、判りました。」
四済昌の昌留吏は、鯉娃将軍に一礼をすると、立ち去っていった。
ヴァグドーたち一行や、鯉娃将軍と臨軍一万の兵士は、金塊や財宝を持っていき、また軍用道路を使用して、そのまま中央都市の『臨響昌』まで戻っていった。
※ヴァグドーとレイドルノの出会いがなかった。
※灯台とは、臨王国が使用している小型の照明簡易道具です。




