63、反乱分子の末路
臨王とヴァグドーたち八人の話し合いが、まだ続いていたが……?
●【No.063】●
『宋尊城』の中にある臨王の執務室にて。
部屋の中では、臨王とヴァグドーたち八人の話し合いが、まだ続いていた。
そこに一人の兵士が、臨王の執務室の中に入ってきていた。
「失礼します、ご報告に来ました。」
「ん? なんだ、どうした?」
「はっ 陛下、刑布昌洞窟内にありました金塊や財宝の回収が完了しました。」
「おお、そうか、それはご苦労だったな。」
「……はっ」
その兵士が、臨王の方に向けて一礼をすると、そのまま部屋を退室していった。
「ん? 金塊や財宝じゃと? なんじゃ、それは?」
「はい、東西南北の街の一番奥の方に、それぞれ奇妙な洞窟がありまして、その中には金塊や財宝が沢山あるのですが、何故か…強力で凶悪な化物も一緒に居るのですよ。 東側の『許童昌』にある[許童昌洞窟]の中の金塊や財宝は、既に我々が回収しましたが、その時には…化物はいませんでした。」
「なるほど、そういう訳でしたか? 宝の番人ですかね?」
「ほう、それは不思議ですな。 その凶悪な化物とは、一体何処から、わいて出てきたモノなのでしょうか?」
「さぁのう、じゃが、そいつを倒してしまえば…何も問題あるまい。 よし…早速だが、その四済昌と言う所に行き、その洞窟内にいる凶悪な化物とやらを退治してしまおうか。」
「いいねぇ~ ヴァグドー♪」
「ヴァグドー殿、勿論、私たちも同行しますわ。」
「ふむ、そうか、わかった」
「はい、判りました。 では…臨王、よろしいですね?」
「うむ、わかったのだ。 では…鯉娃将軍にも、一緒に行ってもらおうかな。」
臨王は鯉娃将軍に一万の兵士を与えて、ヴァグドーたち一行を乗せた馬車と一緒に、例の軍用道路を使用して、四済昌の方まで向かわせていった。
―-―・●・―-―
一方で、ここ四済昌の街の一番奥にある奇妙な洞窟……[四済昌洞窟]の入口付近では、黒色の服を着ていて、手には刀を持った怪しい複数の男が、集まっていてなにやら話し合っていた。
「おい、この洞窟の中に……沢山の金塊や財宝があるのか?」
「おい、それは本当なのか?」
「ああ、らしいぜ! さぁ、とっととお宝を頂いちまおうぜ! あれだけあれば……!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! この洞窟内にいるとされる凶悪な化物はどうするつもりなのだ?」
「おいおい、お前なぁ、あの愚王の言うことを本当に信用しているのか? バカか、そんなことがある訳ないだろう?」
「う……嘘をついているのか? だが……一体何の為に、そんなことを……?」
「ふん、知るかよ! そんなことは! 金塊や財宝を横取りされたくないから、そんな嘘をついたのだろう!」
「……っ!?」
「おい! そんなことより、さっさと行こうぜぇ! 邪魔者が入るかもしれねえぇぜぇ!」
「ああ、そうだな。 よし…では…行こうか!」
「……あぁ……」
その黒色の服を着ていて、手には刀を持った怪しい複数の男は、そのまま[四済昌洞窟]の中に入っていった。
―-―・●・―-―
その[四済昌洞窟]の入口付近の近くにある林の木の物陰から、一人の男が隠れていて、先程からの様子をずぅーっと見ていた。
「バカめ! まさか…北の刑布昌で起きた出来事を、何も知らんのか? まったくの愚か者たちだな!」
(ここにいるとされる強力で凶悪な化物とやらが、もし…あの赤色の身体をした龍程度の化物ならば、この俺…程度でも、まだなんとかなるだろうか)
「くそっ 奴らが洞窟内に入って、もし…奴らの悲鳴が聞こえてきたら……。」
(ちっ まったく、本当に身勝手な愚か者たちは……ロクな奴がいないよな)
それからしばらくして、洞窟内では先程入っていった、怪しい複数の男の悲鳴や断末魔の声が、突如として聞こえてきた。
「な、なんだ……こ、こいつは……っ!?」
「や、やめろぉーーっ!! た、助けてくれぇーーっ!!」
「ぎっ ぎゃああああぁーーーっ!!」
「うわああああーーーっ!!」
そうしている内に、やがて洞窟内では、その男たちの声もしなくなっていて、また静寂となっていた。
おそらくは、[四済昌洞窟]の中にいるとされる強力で凶悪な化物が、黒色の服を着ていて、手には刀を持った怪しい複数の男を、全員殺害したのだと、そう推察される。
「ちっ 奴め、ここまで…来るのか?」
洞窟の入口付近の近くにある林の木の物陰に隠れていた一人の男が、慌てて戦闘準備をして身構えていた。
――― "あの男" は、一体何者なのか……?




