60、勇者の帰還:2
ヴァグドー、臨王国の中央都市へ。
●【No.060】●
臨王国の東側にある都市『許童昌』内の、さらに東側にある街にて。
黒色の鎧を着ていて、手には刀を持った兵士崩れの敵の残党は、既に青色の鎧を着ていて、手には槍や刀を持った臨軍の兵士に包囲されていて、まさに "四面楚歌" 状態であった。
敵の残党も必死になって、無駄な努力をして、臨軍に対して抵抗しようとしていたが、自分たちの五倍以上の兵力がある精鋭部隊を相手に、あえなく……全員が捕縛されてしまった。
「はっはっはっ これはいい、勇者様をお迎えするだけのつもりが、敵の残党を捕縛できるとはな!」
「ふふふ、これでまた手柄が増えたな……こいつはいいぞ!」
「ち、畜生ぉおおおお! なんてことだ! 運が悪すぎる!」
「くそ! なんでこんなことになったんだ!?」
すると、臨軍の兵士の中から将軍と見られる立派な姿をした男性が、勇者アドーレの前に現れてひざまずいた。
「お怪我はありませんか? 勇者様」
「はい、大丈夫です。」
「ふう、それは良かったですな。」
「お久しぶりです。 鯉娃将軍もお元気そうで、なによりです。」
「はい、ありがとうございます。 …それで…後ろの方たちは…?」
「はい、ボクの仲間です。」
「はい、そうですか、判りました。 勇者様、陛下もお待ちになっております。 早急に『宋尊城』に向かいましょう。」
「はい、判りました。 それでは行きましょうか、ヴァグドーさん」
「ふむ、そうか、わかった」
ヴァグドーたち一行が、臨軍の兵士と一緒に街の外に出ると、大きな馬車が一台があった。
これはアーサンティラル国王である父親(王様)が、娘の為に用意した鉄製の少し大きめの馬車であり、今度のヤツは八人乗り(御者台を除く)を可能にしていて、さらに馬が三頭に増えている豪華な大型馬車である。
御者台にはルドルス将軍が座り、中には勇者アドーレ、カグツチ、ロンギルス、エクリバ、ニーグルン姫の五人が座り、ヴァグドーは相変わらず歩いて三頭の馬を引っ張っていき、テミラルスは馬車の上をプカプカ浮きながらついていく、従来通りのスタンスをとっていた。
そして、その馬車を取り囲むようにして、臨軍の兵士が一緒についてきていた。
この臨王国の道路には、軍用道路と言うモノがあり、この道路を使用すると、途中……街には一切立ち寄らずに最短距離で、臨王国の中央都市である『臨響昌』に到着する事ができるのだ。
勿論、一般人が無断で通る事ができない道路なのだが、既に臨王の許可は出ており、勇者様の一行が最短で『宋尊城』に到着させる為に、今回は使用している。
「では参りましょうか。」
「はい、行きましょう。」
ヴァグドーたち一行は、軍用道路で臨王がいる中央都市『臨響昌』を目指した。
―-―・●・―-―
約3日間の軍用道路での移動を終えて、遂にヴァグドーたち一行は、ようやく臨王国の中央都市『臨響昌』に到着して、中に入ると、そこからさらに臨王がいるお城『宋尊城』に向かっていった。
ヴァグドーたち一行が、『宋尊城』の前に到着すると、一人の男がお城の前に立って待っていた。
そこに鯉娃将軍が話しかけてきた。
「それでは、自分はこれで失礼します。 勇者様」
「はい、ありがとうございました。」
「………」
そう言うと鯉娃将軍と臨軍の兵士は、敵の残党を引き連れて何処かへ立ち去っていった。
今度はお城の前で待っていた男が話しかけてきた。
「これは…勇者様にお仲間の皆さん、お待ちしておりました、陛下もお待ちしております。 では…こちらにどうぞ、お入り下さい。」
「はい、判りました。」
ヴァグドーたち一行が、案内役の男と一緒に、臨王がいるお城『宋尊城』の中に入ると、非常に広く長い廊下が奥の方まで続いていて、両端には所々に大きな白い柱が立っていて、さらに両側の壁には部屋の扉がついており、廊下を歩いていると途中で向こうの方から歩いてくる人と、度々すれ違う事もあった。
しばらくして、廊下を歩いていると、案内役の男が途中で左側に曲がり…曲がった先に部屋の扉があった。
案内役の男が部屋の扉の方に向かって―――
「陛下、勇者様とお仲間の皆さんをお連れしました。」
すると部屋の中から男性の声が聞こえた。
「おお、来たか! すぐに中に入れろ!」
「はい、判りました。」
案内役の男が部屋の扉を開けて、ヴァグドーたち一行を部屋の中に入れると、部屋の奥の方で椅子に座った臨王の姿があった。
「おお、勇者アドーレ! 待っていたぞ! よくぞ、戻ってきたな!」
「はい、お久しぶりです。 臨王」
やっぱり、勇者アドーレと臨王の間には何かある?




