59、勇者の帰還:1
ここで遂に、ようやく主人公たちの登場ですよ!!!
●【No.059】●
臨王国の中央にある都市の『臨響昌』の臨王が住む、お城である『宋尊城』にて。
「なんということなのだ?」
自分の部屋にいた臨王が、前回起きた "化物狂暴事件" の……巨紅龍の暴虐ぶりと、味方の被害の報告を受けていて、頭を抱えていた。
「まさか、こんな結果になるとは……。」
臨王は思い悩んでいた。
自分の判断は間違っていなかったのか? 軍を出兵すべきではなかったのか? だが、敵の残党の好き勝手にやらせる訳にはいかない……さらに軍を派遣したからこそ、市民の被害を最小限に食い止められたが……それでも味方の被害は甚大であった。
娃魯将軍と臨軍の三万以上の兵士の犠牲は、あまりにも痛すぎたのだ。
「しかし、一体何故なのだ?」
そこに、あるひとつの疑問があった。
それが巨紅龍の謎の死であった。
臨軍の兵士が様々な武器を使用して、あれほど沢山……巨紅龍に攻撃したのに、傷ひとつつけられなかったと言う。
それなのに突然、巨紅龍の首が切断されてしまったのだと言い、しかも鋭利な刃物のような斬られ方でバッサリと……。
原因は不明……。
臨王が少し考え込むと、そこに一人の男が部屋の中に入ってきた。
「陛下、失礼致します。」
「ん? 何か用なのか?」
「はい、先程ですが、勇者アドーレ様が『許童昌』の街で、お見掛けになられたそうにございます。」
「―――っ!? 何ぃっ!? それは本当なのか!?」
「はい、これは確認情報でございます。」
「おお、遂にやって来たのか? よし、すぐにお出迎えするのだ!」
「はい、判りました。」
その男が一礼をすると、また部屋から外に出ていった。
「……そうか、やっと帰ってきたか? 余のもとに……!」
臨王はなんとも薄気味悪い笑みを浮かべていた。
―-―・●・―-―
臨王国の東側にある都市の『許童昌』内の、さらに東側にある街にて。
家・店などが沢山あり、沢山の人々が行き交う街である。
その街中には、ヴァグドー、勇者アドーレ、カグツチ、ロンギルス、エクリバ、ニーグルン姫、ルドルス将軍、テミラルスの八人が歩いていた。
ちなみにだが、馬車は街の外に置いてあり、中に入れることはできない。
ヴァグドーたちが街の風景を見て、感想を言っていた。
「ほう、これはまた、風情があっていいのう。」
「ええ、なかなか良い街でしょ? この国も…」
「しかし、師匠、アーサンティラル王国からこの臨王国までの道程は結構、長く遠かったですよね?」
「はい、この国に来る途中で大きな川がありましたし、船に乗ることになるなんて思いませんでした。」
「でも、楽しかったねぇ~♪」
「そ、そうですかね…?」
「姫様、体調の方は大丈夫ですか? お疲れではありませんか?」
「はい、大丈夫ですよ、将軍」
「はぁ~ それにしても、この国も人が多いわねぇ~」
「ん?」
「……!」
先頭を歩いていたヴァグドーと勇者アドーレの二人が、何かに気がついたようだ。
すると、ヴァグドーたちの行く手を、複数の兵士らしき男が、立ち塞がっていた。
よく見ると、その兵士たちは臨軍の兵士ではないようであり、なにやら黒色の鎧を着ていて、手には刀を持っていた。
街の人たちも、その兵士たちに気がつくと、「おい、敵の残党がいるぞ!」と言いながら、一斉に逃げる様にして、その場を立ち去っていった。
その敵の残党が、ヴァグドーたちの方を睨み付けていた。
「……何か用かのう?」
「貴様ら、よそ者だな! 一体何しに来たのだ!」
「…何者かは知らないが…」
「ここは貴様らが来るような所ではない! 命が欲しければ自分の国に帰れ!」
「ふむ、ワシらのことを心配してくれているようじゃが、心配するのは……むしろ、お前さんたちの方かものう。」
「……っ!?」
「な、何っ!?」
「なんだと!?」
「お前さんたちの後ろをよく見てみろ。」
「………?」
黒色の鎧を着ている敵の残党が、一斉に後ろを振り向くと、今度は青色の鎧を着て、手には刀を持った兵士たちが、敵の残党の五倍以上の数で、敵の残党の方を睨み付けて立っていた。
こちらはどうやら臨軍の兵士のようである。
「まだ、滅んでいなかったのか? しぶとい奴らだ!」
「敵の残党が何を偉そうに、言っているのだ!?」
「……り…臨軍か……」
「…くっ…臨軍…だと…?」
どうやら、臨軍の兵士と敵の残党(以前の他国の兵士)の鉢合わせのようです。




