55、臨王の登場:1
※今回から "臨王国編" を開始します。
お楽しみに!
それでは、宜しくお願いします。
●【No.055】●
臨王国。
例えるなら、アーサンティラル王国は中世ヨーロッパ(ローマあたり)の世界観なのに対して、臨王国はさしずめ古代中国の世界観なのである。
勿論だが、皇帝と呼ばれる者はまだ存在していないが、王様は当然ながら居て、その名も『臨王』と呼ばれている。
臨王国は現在では、治世に入っているのだが、一昔前はそれぞれの国王が国取りの戦争をしている "群雄割拠" と言うモノであり、その中で臨と呼ばれる国が他国を制圧し、俗に言う "天下統一" を果たしたのである。
これは『臨王』が臨王国を建国した後のお話しである。
朝廷、…政。
臨王は一番奥にある玉座に座り、家臣たちと一緒に政治と経済と軍事について議論をしていた。
家臣には文官と武官がいて、文官とは事務をする人(事務官)、頭で行動するタイプで、政治に詳しく頭の回転も早く策略家であるが、武力を持たない人たちのことを言い、彼らが政治(政策)を受け持つ。
一方の武官とは、軍人の将軍クラスであり、武力が高く戦争が得意で、武器や戦略の扱いにも慣れているが、政治についてはあまりよく解っていない人たちのことを言い、彼らが軍事(三軍)を受け持つ。
そして最後の経済は、臨王と財政担当の側近が受け持つ。
臨王と財政担当の側近たちは、国家予算について議論をしていた。
「陛下、軍事における出費が酷すぎて、経済が立ち行きません。 国民からの税率をもう少し引き上げませんと……。」
「それは駄目だぞ! 国がまとまって、まだ日が浅い……国民の反感を買うと暴動が起きかねない!」
「しかし、それでは国家予算が定まりません。 そうなると国そのものが立ち行きません。」
「…まさか…今の臨の国家予算は赤字なのか…?」
「………」
臨王の財政担当の側近たちが沈黙していた。
「それはいかんな! さて、では…どうしたものか…?」
すると別の側近が―――
「それでしたら、軍事にかかる予算を減少させたらどうでしょうか?」
「……なに? 軍事の予算を減らす…? いや、しかし…それは―――」
(それでは……将軍たちの反感を買うのでは!?)
臨王は少し考え込むが―――
「皆の者、今は新しく国が建国してからまだ日も浅い…そう容易くいく訳がないのだ! 国家予算など多少の誤差があって当然なのだ!」
「では…今からでも修正されますか?」
「いや、違う! 国家予算決定を見送るつもりだ!」
「えぇっ!!?」
財政担当の側近たちが一斉に驚愕していた。
「この時期に国家予算を決定するのは明らかにおかしい! 翌日、家臣たちを全員、朝廷に召集させろ! この余から直々に説明する! よいか?」
「…は…はい…」
臨王は動揺している側近たちを一旦、解散させた。
翌日の朝廷、…政。
臨王の国家予算決定の見送りに家臣たちは動揺しており、一体どういう事なのか……と質問が続出していた。
臨王の説明では、今の時期では国民からの税収が完全に行う事ができずにいて、もう少し時間をかけてから国家予算を決定した方がいい為に、国家予算決定の時期を変更したいのだと言う。
「……国家予算の決定の見送り……?」
「……え? 国家予算決定の時期を変更されるのですか? それでは…政はどうされますか?」
「政と国家予算決定は切り離して行う。 さらには軍事も切り離す事にする。」
「……っ!!?」
「そもそも政と国家予算決定と軍事を同時期に行う必要はない!」
…ざわざわざわ
家臣や臨王の側近たちは、動揺しながらお互いに話し合っていた。
「…動揺しているようだな。 だが、国は新しく生まれ変わったのだ。 従来のやり方では、通用しない事もあるのだ。 それを家臣たちにも判ってもらいたいのだ。」
「……判りました。 それで時期については、いかが致しますか…?」
「うむ、それについては、後日あらためて議論するつもりだ。 それまでに各自は、自分の意見や見解を考えて聞かせて欲しいのだ。 よいか?」
「はっ 判りました!」
「それでは、今日はこれにて解散する。」
臨王は家臣全員を解散させて、それぞれの持ち場に戻らせた。
「………」
臨王も自分の部屋に戻っていき、椅子に座ってため息をついた。
「はぁー…勇者アドーレは遅いなぁー…まだ戻らないか…?」
やっぱり臨王と勇者は知り合いなのか?




