52、側近との軋轢:1
前回の大魔王のお話しの続きから。
●【No.052】●
魔族が支配する国の大魔王城の中。
そこの『玉座の間』の『玉座』に座って考え込む大魔王。
「ちっ ここ最近、部下共の余に対する忠誠心が低下しているようだな。 悪魔神討伐に心血を注ぎすぎたか? それとも部下の中に悪魔神の支配を肯定する者がいるのか?」
(まさか……この余を裏切るつもりなのか? おのれ! それだけは絶対に許さないぞ! 貴様らは余の手足なのだ!)
一方で―――
大魔王城の別室の某所。
ここは城内の比較的広い部屋で、上位魔族たちが大魔王の命令で集合・隔離されていて、大魔王に対する不満を漏らしていた。
「おい、聞いたか? 何で俺たちがこんな所に、居なければならない? 大魔王め! 相変わらず偉そうにぃ!」
「ちっ 何でベドゼルスやバロガルスがよくて、俺たちはダメなのだ?」
「ああ、テミラルスも人間の国で好き勝手にやっているのになぁ~?」
「ちっ あの野郎! ふざけやがって! 調子に乗っているのではないのか?」
「よろしいのですか? 大魔王様に向かって…『大魔王め!』『あの野郎!』…などと言っても……?」
「な、なんだとっ!?」
「はい、まったくですよね。 身の程知らずなのも困ったモノですよね。 大魔王様に向かって、その様な生意気な言葉を言われますとは……。」
「………っ!」
「左様、あなた方はあまりにも、大魔王様を批判しておりますが、余程、命が欲しくない……と思われますな。」
「はい、その通りです、あなた方。 我々を集合させた理由は、おそらくは悪魔神討伐の為のモノ……いよいよ大魔王様も本気になられた……と言うことです。」
すると上位魔族たちの背後から―――
「その通りだ!!」……と言う声がして、気がついた上位魔族たちが後ろを振り向くと、そこに大魔王の姿があった。
大魔王の登場に上位魔族たちが慌ててひざまずいていた。
「随分と好き勝手なことを言える身分になったな。 余を倒せる程の力でも身につけたか?」
「……くっ……」
「さて……これからまた悪魔神討伐に向かうつもりだが……貴様らは余と共に参加するつもりもないか?」
「………」
上位魔族たちは沈黙していた。
「やれやれ、どうやら……余の威光も地に堕ちたようだな。 我ながら情けないな。」
すると上位魔族の一人が―――
「お言葉ですが、大魔王様。 その悪魔神とやらは、本当に我らが居るこの世界に侵攻するのでしょうか?」
この質問に大魔王が大笑いした。
「わーはっはっはぁーっ! すると貴様らは悪魔神に、この世界を蹂躙され、支配されるのを待ってから、攻撃を仕掛けるつもりなのか?」
(それではもう手遅れだ! まったく、何と言うマヌケな連中なのだ!)
「貴様らは悪魔神の真の恐ろしさをまだ知らないようだな。 まったく、呑気なものだな。 それとも……この中に悪魔神と内通している者でもいるのかな?」
(ならば、こちらから先に討って出なければならないのだ!)
「……な、なにっ!?」
一人の上位魔族が怒りの表情を見せていた。
「今回は余に逆らう愚か者たちの討伐から先に行うつもりだ。 ふふふ、余もまだまだ貴様らごときに負けるつもりもない。 さぁ、大魔王の恐ろしさを存分に見せてやろう!」
すると上位魔族の一人が―――
「お待ち下さい! ベドゼルスとバロガルスの件は、我らには関係ありません。 確かに彼らを制止することが出来なかったのは、我々にも責任がありますが、しかし……。」
「黙れ!! 貴様らは余の手足だ!! 何故、手足である貴様らが余に意見できる!! 不満だと言うのであれば、こうして余を倒す機会を与えてやっているのに、まだ口答えするつもりかっ!?」
「……っ!!?」
上位魔族たちはひざまずいたまま、動かない。
いや、動けない……大魔王のあまりの凄まじさと恐ろしさに、足がすくんで動けない。
上位魔族は勘違いをしていた。 大魔王をあまりにも侮りすぎていて、大魔王の本質を忘れていたのだ。
『余に逆らう者は、絶対に許さない!!』
上位魔族たちは絶望していた。
「最後にもう一度だけ聞く!!! 余と共に悪魔神を打倒する者はいるかっ!!!」
「………」
上位魔族たちは沈黙していた。
「………ふふふ、なるほど、どうやら人選を誤ったようだな。 Aクラスの爵位を与え、上位の地位を与えたのは、保身の為ではないぞ。 皆が命知らずだと思っていたが、非常に残念だな……腰抜け共め…人間以下だな……。」
「なにをーーっ!!? 貴様アアアァ!!!」
大魔王の今の発言に、一人の上位魔族が怒りで立ち上がり、大魔王に向かって襲いかかっていったのだが―――
「ふん、バカめ!!」
ズドォーン!
大魔王は右手を前に出し、掌から "黄色い火花を付けた強烈な赤紫色の極大光線" を、襲いかかってきた上位魔族に向けて放出し、跡形もなく消し去った。
「ぐうあああぁ―――」
その上位魔族の断末魔さえもかき消えてしまった。
「くっくっくっ 本当に余の真の恐ろしさを忘れてしまったようだな。」
「…あ…あ…あ…」
大魔王の圧倒的な力の前に、上位魔族たちは言葉にならない無言のままで、ただただ唖然としていた。
「さぁて、次はどいつだ!?」
側近のクセに主君に逆らい襲うとは……!?




