51、悪魔神と大魔王
いきなり場面が変わる!
ヴァグドーたちは登場しない!
●【No.051】●
ある暗闇の中。
「このままでは、この余が敗北する?」
暗闇の中から聞こえる声、そこには黒いフードを被って、黒いマントを身につけた…人間の身長と同じぐらいの男性らしき者が、ふわふわと浮いて漂っていた。
「そ、そんなバカなっ!? この余が敗北など……っ!!」
その黒いフードとマントの男の目の前には、物凄い巨大で異様な姿をした異形な人型?の化物が、全身から物凄い威圧感を出していて、戦慄させていた。
『フハハハ、もう駄目だ! お前に勝ち目などない! 今、トドメをさして、ラクにしてやる!』
「くっ おのれ! だが、この余とて "大魔王" と呼ばれている身、いかに相手が "悪魔神" でも退く訳にはいかぬ!」
『フハハハ、ならば、ならば、今度こそ、今度こそ、滅びるがいい! 大魔王よ!!』
悪魔神トニトリエクルスが、物凄い勢いで大魔王に襲いかかってきた。
ボロボロになった黒いフードとマント、瀕死の状態のあまりにも無惨な姿、今、大魔王が大敗寸前まで追い込まれていた。
悪魔神の圧倒的な力の前では、魔族を統べる最強の大魔王も赤子同然の有り様、最早、打つ手はないのか?
「うぐっ! がはっ! こ…これが…悪魔神の力……ここまでとは……!」
『ホウ、まだ生きていたのか? さすがは大魔王よ。 相変わらず…しぶとい、しぶとい、フハハハ、サァ、これでオワリにしようか!』
「……っ!!?」
悪魔神トニトリエクルスは、右手を手刀の形にしてから天高く上げて、そこから物凄い光とパワーが集まっており、大魔王の頭上に向けて一気に振り下ろした。
ドシュッ!
トドメの一撃だった!!
スカァッ!
だが、悪魔神の手刀がむなしく宙を舞い、そこに大魔王の姿はいなかった。
『………チッ! またしてもイってしまったのか…? 悪運の強いヤツ、さすがは大魔王と恐れられるだけはあるようだな。 ワハハハ、またしてもイクコトが出来るとはな。』
悪魔神トニトリエクルスは、先程までとは違っていて…今度は、静かにおとなしくなっていた。
『マァ、いい……ヤツがまた我のところに来るまで、我はまた休むとするかな……。』
そう言うと今度は、悪魔神トニトリエクルスの姿が消えてしまった。
―-―・●・―-―
現在、ヴァグドーたちが居る世界、アーサンティラル王国のはるか北側に位置する魔族が領地とする国、そこの一番奥にある大魔王城の『玉座の間』の中央部分に、大魔王がうつ伏せで倒れていた。
「―――」
大魔王が気がつき、目を覚ました。
「うっ うっ 余は…余は…」
大魔王が辺りを見渡すと、そこは誰もいない自分がいつも使用している『玉座の間』であった。
「そうか……また戻ることが出来たのか…?」
大魔王は冷や汗をかきながら、立ち上がり慌てて『玉座』に座った。
「な、なんということなのだ……まさか、ここまで力の差がついていたとは…? このままでは……本当にヤツに何もかも支配されてしまうぞ…!」
「失礼します。」
一人の使い魔が『玉座の間』の中に入ってきた。
「……なんだ?」
「はっ ベドゼルス様、バロガルス様、共に人間に殺害されてしまいました。」
「……はぁ? 何のことだ…? 一体何を言っている…?」
「は、はっ ベドゼルス様、バロガルス様…共にアーサンティラル王国を侵攻して―――」
「何、ちょっと待て!? 余はそんな命令を出した覚えはないぞ!?」
「……えっ!?」
「あ、あいつらめ!! また余の命令を無視して逆らいおって!! そこまで余を侮るのかっ!? おのれっ!! この余がじきじきに殺したかったぞっ!!」
「ひ、ひぃぃ……」
使い魔は大魔王の異常な激怒に、恐れ驚いていた。
「それで! この余の命令を無視して逆らった者は、その二人だけかっ!?」
「い、いえ、テミラルス様もアーサンティラル王国に……」
「ああ……彼女か? 彼女はよい…彼女には余の命令通り行動している。 …放っておけ!」
「はっ! 了解しました!」
「それと他の上位魔族には、城内で待機する様に命じておけ! 文句がある者には余がじきじきに死を与えてやる! それと先の二人を殺害した人間については、余に考えがある為、放っておけ! いいな?」
「はっ! 了解しました!」
「それで報告はそれだけか! ないのならさっさとさがれ! 今、余は少し疲れている!」
「はっ 失礼しました」
使い魔は慌てて『玉座の間』を出て、立ち去っていった。
また『玉座の間』には、大魔王一人だけとなった。
「役立たず共め! また余計なことを、こんな大事な時に人間などの相手をしていられるか! 人間の首を取る前に、我らの首が先に取られるわ!」
大魔王は顔を下の方に向けて、考え込んでしまった。
「お、おのれーっ! 悪魔神め! 今度こそ、必ず!!」
大魔王……これから一体どうするつもりなのか?




