46、誘拐犯を追え!!
メルルスクリムを救い出せ! -その1-
●【No.046】●
第1の都市、王都・ラームの城下町。
ギルド冒険商の中。
ニーグルン姫とルドルス将軍の二人が、アカネの方に慌てて詰め寄る。
「アカネよ!! メルルスクリム様に、一体何があったのだぁっ!?」
「はい、実は少し前に突然…大きな翼を持った巨大な化物が城内に浸入して、メルルスクリム様を連れ去り、あの例の "地獄の塔" の頂上まで、飛び去っていきました。」
おっ! この街の凶悪なモンスターだな!?
よし、ここで決めてやるっ!
「…そ…そんなぁ…」
ニーグルン姫がガックリと落胆していた。
「それで今は、沢山の王国軍兵士やヤノワディオスの町とここラームの町にいる冒険者たちが、まるで競うようにしてメルルスクリム様の救出の為に、"地獄の塔" の方に向かわれていったのです。」
「くぅっ …そうなのか…」
ルドルス将軍が無念そうな表情をしていた。
どうやら、この街に来て早々に事件が発生しているようだな。
『メルルスクリム』
このアーサンティラル王国の現在での王位継承第一位の王女であり、ニーグルン姫の姉にあたる存在。
その美貌はまさに絶世の美女であり、顔もスタイルも性格も申し分なしである様なのだが、実際に今まで彼女を見た者はあまりいない箱入り娘。
ワシは落胆しているニーグルン姫や無念そうにしているルドルス将軍を尻目にアカネに話しかけていた。
「ふむむぅ~、こちらの話しをさせてもらおうかの。 それで、その "地獄の塔" に行くにはどうすればよいのじゃ?」
「はい、一旦街を出まして、外から城沿いに北側に向かうと "地獄の塔" が見えてきます。 入口は東西南北の四方向にありますから、何処から入っても大丈夫です。 ただし、高さが異常にありまして…頂上に辿り着くまで一体どのぐらい時間がかかるか、正直…解りません。」
「ふむむぅ~、そこまで判れば充分じゃ。では早速、"地獄の塔" に行こうかのう。」
「ヴァグドー殿!」
するとニーグルン姫がワシに話しかけてきおった。
「ん? なんじゃ?」
「はい、私たちはこれからお城に戻り、お父様に会ってきますから、少しの間だけ…お別れをします。」
「ですが…また、戻ってきますぞ。 ヴァグドー殿」
「おお…そうか、わかったのじゃ。 ワシらはこれから "地獄の塔" に行き、凶悪なモンスターを倒してくるからのう。」
「はい、判りました。 では、ご武運をお祈りします。 ヴァグドー殿」
「では、失礼します。 ヴァグドー殿」
ニーグルン姫とルドルス将軍の二人は、ヴァグドーたち一行と別れてギルド冒険商を先に出ていき、お城の方へ向かっていった。
「では、ワシらもそろそろ行くぞ!」
「はい、判りました!」
ヴァグドーたち一行も、続いてギルド冒険商を出ていった。
ヴァグドーたち一行は、そのまま街を出ていき、外から城沿いに北側の方に向かって歩いていくと、なかなか大きな "地獄の塔" が見えてきていて、さらに近づくと一番下の階には、東西南北の四方向に扉のない大きな入口が開いていた。
その "地獄の塔" とは、外観が巨大な黒色の塔であり、とにかく異常に高くて…90階ぐらいはありそうであり、所々に窓みたいな穴が開いていて、頂上部分にはまだ屋根がなく、まだまだ建設中の塔である。
また内部はそれほど広くはなく、階段を登って頂上を目指すのだが、その途中では弱小モンスターが彷徨いていて、王国軍兵士や冒険者たちが攻略中である。
「さてと、登るかのう。 それで、お前さんたちはこれから…どうするつもりなのじゃ?」
ヴァグドーはカグツチたちに話しかけてきた。
「…え? 内部に入っていき、階段を登って頂上までいきますけど…?」
一見すると…当然の様な回答であるのだが―――
「ふむむぅ~、そうか…ではテミラルスよ、お前さんが一緒についていってやれ。」
「………え?」
「うん、わかったよ」
「よし、行くぞ!!」
するとヴァグドーと勇者アドーレの二人は、膝を曲げてしゃがんだ姿勢から、物凄い勢いでジャンプして、塔の外壁を足場にして、さらにジャンプして上昇、そのままどんどんと上に上がっていった。
(ヴァグドーと勇者アドーレの二人は、最早…階段も使用しない)
「ひぃえぇ~~ もう…見えなくなりましたぁ~~」
「嘘~? マジ~? 外壁をジャンプで登ってる~?」
「…す…凄い…本当に…な…なんていう人たちなのだ…」
「ほら! 感心してないでさ、アタシたちも行くよ! 早くしないと、ヴァグドーたちの活躍を見る前に、終わっちまうかもしれないからねぇ!」
「うん、わかった♪」
「では、私たちも急ごう!」
カグツチたち四人は、"地獄の塔" の入口から内部に入り、階段を登って頂上を目指していった。
画期的!!
もうダンジョン内を攻略せず!?




