39、魔族テミラルス:2
上位魔族テミラルスの真の目的は…?
●【No.039】●
男たちと上位魔族テミラルスとの会話は続いていた。
「なんだと!? … "地獄の水晶" の恐ろしい真の能力だと…!?」
「ええ、そうだよ。 その "地獄の水晶" の中身は、何も無いのに一体どうやって魔法力を作るのか…アンタたちは知っているのかい?」
「……っ!!?」
「アンタたちの様な、ただの一般人に "地獄の水晶" の使用は、まさに自殺行為だよ。 なにせ、そのエネルギー源は使用者の生命力だからね。」
「な、なんだとっ!!?」
「うぐっ! ぐあっ!」
すると動揺していた、他の男たちも次々と倒れていった。
「ほーら、言っただろう? アンタたちがあんな巨大なモノを操作しようだなんて…生命力がいくらあったって足りないんだからね。」
「…生命力…?」
「ええ、そうだよ。 魔法力を持たない一般人が…その "地獄の水晶" を使用する時には、使用者の生命力を魔法力に変換するから、使用者の願いを叶える為には、莫大な生命力が必要なのさ。 それがその "地獄の水晶" の真の能力なんだよ。」
(ったく! シャニルの奴! ふざけたモノを造りやがって!)
「そ…そんな…バカな…?」
「まぁ、そう言った意味では、確かに魔法力を無尽蔵に作れるよね。 ……生命力がある限りは…ね。」
「……うぅ……」
男たちが全員気絶した。
―-―・●・―-―
そこでヴァグドーたち一行が、北側にある川の辺りまで到着していて、そこにテミラルスがいて…さらにその奥には複数の人間の男たちが倒れていて、その近くには "地獄の水晶" が地面に置いてあった。
テミラルスが後ろを振り向いていて、「あら、ようやく来たわね。」…と、なにやら意味深な台詞を言っていた。
早速、カグツチが声をかけてきた。
「おい、これは貴様がヤったのかっ!?」
「違うわよ、それにあの男たちはまだ生きているわよ。」
「それで…お前さんは一体何者なのじゃ?」
「アタシの名前はテミラルスだよ。 一応は上位魔族をやっているわよ。」
「ま、魔族だとっ!!?」
カグツチがすぐに剣を取り出して構えていた。
「おい、待て! カグツチ!」
ヴァグドーがすぐにカグツチを制止した。
「し、師匠…?」
「今のお前さんでは、あの者には勝てぬわ! それに少し様子がおかしいのじゃ!」
「…うぅ…」
「はい、あの "地獄の水晶" を持ち去った犯人は、あの倒れている男たちで間違いありませんね。」
「……え?」
「むしろ…あのテミラルスという奴が、あの強奪犯の男たちを助けている…と見ておる。」
「……えっ!?」
「えっ!? では、あのテミラルスとかいう魔族の、ここにいる目的は…!?」
「まさか、上位魔族の仲間が師匠たちに殺られたから…その仇討ちに来たのですか?」
するとテミラルスが―――
「え? 冗談でしょ? なんであんな愚か者たちの仇なんて討たなきゃいけないの? むしろ…あのバカたちを倒してくれて感謝感激だよね。」
なんと、テミラルスは同族であるゼドベルスやバロガルスのことを、あまり良くは思っていない様である。
「それにアタシの目的は、あくまでも大魔女シャニルだけよ。 あの魔女には痛い思いをさせられているからね。」
そう言うとテミラルスは、悔しそうな表情で右手の拳を思いっきり握り締めていて、わなわなと震えていた。
上位魔族テミラルスと大魔女シャニル…この二人には、一体何かあったのか?
その後、テミラルスはシャニルを追って、この街に来ていたのだが、既にこの街にもいなかったのである。
「ちっ シャニルの奴はもういなかったか? まぁ、仕方ないわね。 その代わり…もしかしたら手掛かりになるかもしれないからね。」
そう言うとテミラルスは、ヴァグドーと勇者アドーレの二人の方に近づいてきた。
「ふふふ、やっぱりね! ねぇねぇ、アタシも一緒についていっていいかな?」
「ちょっと待て! あんたはその大魔女シャニルに、用があるのだろう!?」
「だからだよ。 この二人からはシャニルと同じ『魂の香』がするんだよ。 一緒にいれば、きっと会えるはずだよ。」
「…だが、しかし……」
「別にアンタには、聞いていないわよ! それでどうだい?」
「ふむ、別に構わんよ。 一緒について来るがよい。 テミラルスよ」
「ホント? ありがとう! さすがよね!」
「よ、よろしいのですか? …師匠」
「どうせ、断っても一緒について来るだろう。 ならば、手元に置いておきたいからのう。」
「ボクもヴァグドーさんに同意します。 残念ながらテミラルスからは邪悪な気配を感じません。 手元に置いて監視するべきです。」
ヴァグドーと勇者アドーレの二人の鶴の一声で、テミラルスの同行を認めており、これで遂に魔族も仲間にしてしまった。
「決まったわね! じゃあ、この "地獄の水晶" は元に戻しておくわよ。」
テミラルスは "封印された地獄の祠" を元通りに修復して、そこに "地獄の水晶" を置いて、さらに二度と破壊されない様に魔法結界を張っていた。
ヴァグドーパーティーにテミラルスが加入!




