29、凶悪モンスターがいない街?
●【No.029】●
王国軍のルドルス将軍はニーグルン姫の護衛として複数人の兵士を伴っていて、第5の都市であるハングリンズの町の方に向かっている最中であり、ニーグルン姫を豪華な馬車に乗せて馬車の周囲には王国軍兵士がしっかりとガードしていた。
ニーグルンはアーサンティラル王国のお姫様であり、今回はハングリンズの町に何か用事があるようなのだが……。
ルドルス将軍がヴァグドーの方を見ると声をかけてきた。
「あなたもハングリンズの町に何か用があるのですか?」
「ふむ、ワシは放浪の旅をしている者でな。 アーサンティラル王国にある都市を見て回っているのじゃよ。」
「…全部ですか? それはまた…物好きなコトを…していますな…。」
「なぁに、観光みたいなものじゃよ。」
「ところで、あなたのお名前を聞かせてもらってもよろしいですか?」
「ふむ、ワシの名前はヴァグドーじゃよ。」
「ほう、……ヴァグドー……殿ですか? はて、何処かで聞いたコトがあるような……?」
「さて、そろそろ行こうかの、それではまたのう。」
「……そうですか……それではまた……」
そう言うとヴァグドーはルドルス将軍と別れて、再び馬車の馬を引いて歩き始めた。
ヴァグドーたち四人がナトリザの町から出て、3日目の夜にようやくハングリンズの町に到着していて、第5の都市であるハングリンズの町の中に入っていき、その日の夜は宿屋の空き部屋を見つけて宿泊していた。
翌朝、この街も他の街に勝るとも劣らない程の活気溢れる街であり、家・店・人の数も結構多いようであるが、特に街の南側が物凄い賑わいになっている。
ヴァグドーたち四人は早速、この街にあるギルド冒険商に行き、中に入るとここも沢山の冒険者がいるようだが、今度のギルドを仕切っている主人はなんと…10代の美少年なのである。
ワシらはここの主人に話しかけたのじゃ。
「はい、いらっしゃいです。」
「おお、ここのギルドを仕切っている主人が…こんな可愛い美少年とは!?」
「ホント…カワイイわね♪」
「あら、これは驚きましたね。 ここのギルドは少年に仕切らせているのですか?」
「ふん、有能ならば外見も年齢も関係ないのじゃ!」
「はい、ありがとうございます。 それで今回はどのようなご用件ですか?」
「ちと尋ねるが、この街の近くには凶悪なモンスターとかいないかのう?」
「いいえ、この街では凶悪なモンスターはいませんね。」
「ふむ、そうか」
ふーむ、そう毎度毎度必ずいる…という訳でもないのか?
「では…質問を変えるが、この街の近くに "地獄の○○" という所はあるかのう?」
「あっ はい、それでしたら…この街にある "地獄の温泉" がとても有名でありますよ。 お客様ももともとそちらが目的なのでしょ?」
――― "地獄の温泉" …!?
「え? 温泉? この街には温泉があるのか? 主人!?」
突然カグツチが会話に割り込んできた。
「はい、名前の由来はよく解りませんが "地獄の温泉" と言うとても気持ちのいい温泉が、この街の南側にあって…現在も賑わっていて、王族の方々もよく利用されているんですよ。」
なるほど、南側のあの賑わいは温泉があるからなのか?
「この街にある "地獄の温泉" は昼夜問わず営業していて、格安の料金で入浴することができますよ。」
「あら~♪ 旅の疲れに丁度良いわね~♪」
「はい、旅の疲れを癒すのに温泉が一番ですよね。」
「師匠! 私たちもぜひ、その温泉に行きましょう!」
「ふーむ、なるほど…そうだのう。 たまにはそういう休息もいいかのう。 …夜にでも行ってみるか?」
「はい!!」
三人の娘が揃って、元気良く返事をしていた。
ヴァグドーたち四人はギルド冒険商を出ていった。
その後は近くの食堂で昼食を食べてから、宿泊宿屋に戻ってきていて、三人の娘は嬉しそうに楽しみながら温泉に行く準備をしていた。
この街、ハングリンズの町ではその昔…誰かが解らないが現在の南側に温泉を掘り出していて、理由は不明だがそこを "地獄の温泉" と名付けたそうで、格安の料金で昼夜問わずに営業している。
現在では、とても気持ちの良い大きな温泉(混浴)が野外(露天風呂)にひとつあり、後から男女別の更衣室を造ったようであり、その周囲には沢山の屋台・露天商が並んでいて…ひとつの観光地になっており、王族もよく利用しているようだ。
今まで戦闘続きであったヴァグドーにとって、初めてのつかの間の休暇?となる街に入ったようだが……。
次回は温泉イベントなのか?




