314、魔物がおらぬ?
●【No.314】●
かつてのレギザス王国の廃墟にて。
その廃墟の中央に襲ってきた賊徒共・約50人の一人一人にロープで全身を縛っていき、一ヶ所に全員まとめてひとつに縛っていく。 約50人の賊徒共は全員気絶している。 中には頸動脈を圧迫されて失神している者もいる。 約50人の賊徒共の周囲に瓦礫が囲んである。 その賊徒共を、そのまま放置して奥へと進んでいく。
すると…また―――
「「「……」」」
「ふむ……」
「「?」」
「どうされましたか?」
「まだおるのう」
「えっ!?」
「何ぃっ!?」
「何がいるんですかぁ!?」
「向こうで賊徒共が待ち伏せしておるわ」
「……」
「あっ!?」
「ホントですか?」
「あら~~~~ぁ」
「ちっ!」
「どこにいる?」
「もっと先の前におる」
「……」
「それなら、そのまま前に進んで出てきたら撃退するか?」
「ふむ、そうじゃな。
じゃが…ワシは一足先に行かせてもらう。」
「ああ、わかった」
「はい、判りました。」
「そうね、それで行きましょう。」
「……」
ふん、殺気がだだ漏れじゃ。 気配は隠すんじゃない。 気配は殺すもんなのじゃ。 この未熟者の愚か者共が…。 まぁ…よい。 せっかくの機会じゃ…教えてやろう。 気配の殺し方を…な…。 ほっほっほっ、それじゃぁ…行くかの。
シュッ!
またワシの姿だけ消えた。
ワシ以外の者は、このまま歩いて進む。
しばらく前へ進むと、また約50人ぐらいの賊徒共が物陰に隠れてじっとしておる。こちらも全員雑魚じゃ。 待ち伏せの伏兵ではあるけれど、もう既にワシらに看破されておる。 それでも賊徒共は、その事に気づかず、ただじっと待ち構えておる。 その背後にワシがおるが、未だに誰も気づかない。
シュッ、ガッ!
「うげっ!」
ドサッ!
伏兵・賊徒共の一人の背後に回り込んで、素早くチョークスリーパーを仕掛けて、頸動脈を圧迫させて、身動きできないまま失神、地面に倒れた。 その物音に気づいた賊徒共が、一斉に後ろを振り向いて見る。
「「「「ッ!?」」」」
そこにワシの姿がおった。 いつの間にか、自分たちの背後に "前を歩いていたはずの敵の姿" がいたのだ。 これには、さすがに驚愕するじゃろう。 その隙をついてワシが伏兵していた賊徒共に襲いかかる。
シュッ、ニョロニョロニョロニョロ―――
まるで蛇のような動きで素早く―――
シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ!
「「「「うげぇっ!?」」」」
「「「「うごぉっ!?」」」」
『《神納覇》【ギガンドエルフ・アーマードビルダー】』
「ほっほっほっ、行くぞ!」
狼狽する賊徒共の背後に一瞬で回り込んで、チョークスリーパーを仕掛けて、頸動脈を圧迫させて失神・気絶させる。 それを何回も繰り返す。
ドサササッ!
シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ!
「「「「うおぅっ!?」」」」
「「「「うげぇっ!?」」」」
「まだまだ行くぞ!」
まだまだじゃ。 ワシが休まず素早く賊徒共の背後に回り込み、一瞬でチョークスリーパーを仕掛けて、頸動脈を圧迫させ失神、どんどん気絶させる。 どんどん賊徒共を倒して数を減らす。 ざっとみて、約35人ぐらいはやったみたいじゃな。
ドサササッ!
「なっ、なんだ?」
「こっ、コイツ…一体何処から?」
「にっ、逃げろ!」
「うわああああぁぁぁーーーーーっ!!」
一方でワシが討ち漏らした賊徒共は、アドーレ&オリンデルス&カグツチ&エクリバたちが困惑して逃げ惑う賊徒共を冷静に対処する。各々がまた【ストリンガー・ドラグーンソード】&《神納覇》の拳&剣&ムチなどを駆使して、賊徒共に攻撃して倒す。 それとシャニル&ニーグルン姫&ルドルス将軍たちも後方支援にまわる。 慌てて焦る賊徒共に反撃する余力はなく、どんどんあっさり倒されていく。 ここでも賊徒共が倒れて数を減らす。 残った約15人ほどの賊徒共も、ここで終わる。
「「「「うわっ!?」」」」
「「「「うがぁ!?」」」」
ドサササッ!
あっという間に、あっさりと約50人程度はいたはずの賊徒共をワシらが全て倒す。 ちなみにここでもこちらは全員無事で被害はなし。 これで合計100人ほどの賊徒共を倒したことになるが、ここでも約50人の賊徒共を一人ずつロープで身体を縛っていき、その上で全員を一ヶ所に集めて、ひとつにまとめて縛って放置する。
「それにしても…もの凄い殺気でしたね?」
「ああ、そうだね。 まったく隠そうともせずに、だだ漏れだったね?」
「あんなんで、よく隠れられるわよね?」
「いくら姿を隠しても殺気や気配を隠さなければ意味がない。」
「ふむ、すぐに居場所が特定されてしまうからのう。」
「隠れて意味あるの?」
「「……」」
「ほっほっほっ、おそらく賊徒共には殺気や気配を隠す概念や方法がないのじゃろ?」
「えっ、そうなの?」
「ふむ、実際に人間が殺気や気配を隠したり無くしたりするなど、そんな簡単に出来るシロモノではないからのう。」
「へぇ~、そ~なんだぁ~」
「「「……」」」
実際問題、人間が己の気配や殺気を他人に悟られないようにするには、相当な鍛練や技術・能力が必要になる。 気配を押し殺したり殺気を出さないようにしても相手・敵がいる以上、そう簡単なモノではない。 ましてや賊徒共は、ただの雑魚。 今までだって気配や殺気を隠す必要もなかったし、する相手もいなかったはずだ。 だが…ここから先の戦いでは、そうもいくまい。 そういう技術・能力も必要となることを覚えておくといい。 敵の中には、気配や殺気を察知する者もいるからな。
「「「「……」」」」
この後もワシらが王宮廃墟へ向かって歩く。 その途中でまた賊徒共が襲ってくるけど、そんなことは気にせず、どんどん賊徒共を倒して先へ進む。 もう既に伏兵などせずにすぐに襲いかかるところを見ると、もはや隠れて待ち構えても無駄だと思ったからだろうか。 だけど賊徒共だけしか襲ってこない。 そこである疑問に気づいた。
(魔物がおらぬ?)
確かに賊徒共は襲ってくるけど、何故に賊徒共だけしかいないのか? 魔物はいないのか? この国は廃墟。 人間はいない。 王族・市民・冒険者・兵士などもいない。 こんなオイシイ所に魔物がいないのは…オカシイ。 やっぱり賊徒共に倒されてしまったのか? ここは賊徒共だけでなく魔物でも支配できる縄張りだったはずだ。 だけど…いない。あとアヤツもいない。
(アヤツもおらぬか?)
そんなことを思いながら襲ってくる賊徒共を倒して、いよいよ一番奥の王宮廃墟跡地に到着した。 ここはかつて王族がいたであろう王国の一番奥にある場所。
(あとはここだけじゃな?)
建物自体はまだ辛うじて残っていたが、もはや人が住める場所ではなかった。 扉がないので、そのまま内部に入る。 当然ながら、内部も賊徒共が待ち構えており襲ってくるが、ことごとく倒す。 やっぱり雑魚ばかりじゃ。 それと魔物の姿もおらぬようじゃな。 そのまままっすぐ奥へと進む。
(ここにおるのか?)
そして、一番奥にある玉座の間らしき部屋へと辿り着く。 ここまで来るのに、二回の伏兵・賊徒共・約100人と、その先から強襲してきた約50人の賊徒共―――合計150人の賊徒共を倒してきたことになる。 ……となると…アヤツは…この中か?
ここも扉がないので、そのまま中に入る。 そして―――いるはずじゃ。 これだけの賊徒共を束ねるボス・リーダーが―――




