313、滅亡した王国での伏兵
●【No.313】●
森から出たヴァグドーたち一行と大型馬車の目の前に、あの大きな王国の地が見えてきた。 そこはかつてレギザス王国とされる所だった。
「……」
「へぇ~~」
「なんだこれはっ!?」
「なにこれっ!?」
「こんなことがあるのかっ!?」
「「「「ッ!!?」」」」
「おいおい、なんだよぉこれはっ!?」
「「ウソッ!?」」
「「こっ、こんなぁ……あり得ない……」」
一同が驚愕する。
一同が見たのは―――目の前に広がるのは―――ただの廃墟の跡地が残るのみだった。 かつてレギザス王国があったであろうけど、今は王国の廃墟・建物の瓦礫・木や雑草などが生い茂る―――誰もいない場所だった。 …なんで滅んだのか? …誰に滅ぼされたのか? それは誰にも解らない。
「なるほど、そういうことか……」
「彼女の言ってた意味がようやくわかったわい。」
「……」
「彼女の曖昧な言葉の意味がこういうことでしたか?」
「確かに……"ギルド冒険商" なんて…ないわね?」
ヴァグドーたち一行が馬車から降りて、馬車を某所の所定の場所に停めて、そのまま滅亡した王国の中に入る。 建物の原形を残したモノがあれば、建物自体が崩れて瓦礫の山となってるモノもあれば、大通りには木や岩や雑草などもあった。 それはまるで何か巨大なモノが暴れて蹂躙された跡地である。 それらを避けながら、どんどん奥へ進む。
「「「「……」」」」
ワシらが、この廃墟の中をどんどん歩いていき、奥にある王宮の跡地へと向かっていく。 かつてレギザス王国だった所が、一体どういう王国だったのか、それを知るすべはもうない。 しかしながら、それ以上に知りたいのは、何が原因で滅亡したのか? そこら辺が些か興味がある。
「「「「……」」」」
なるほどのう。
確かに…… "ギルド冒険商" などないわい。 それどころか、武器屋・道具屋・教会・宿屋・酒場・民家すらない。 何もかも破壊されて瓦礫だらけの廃墟じゃな。 これでは情報もクソもないわい。 それにしても一体誰がどうやって、一国の王国をここまで破壊したんじゃ? ―――理解できんわ。
いかにワシでも王国を破壊・滅亡させるには、さすがに躊躇するじゃろ? 故に人間がやったとは考えにくい。 否、心のない人間が複数人いて、それで王国をここまで完璧に破壊・滅亡させたのであれば、それはそれで大したものじゃよ。 じゃが、違うな。 これは人間がやったモノではない。
だいたい―――かつて王国だった廃墟の中央辺りまで歩くと、妙な気配・あるいは殺気みたいなモノを感じた。 どうやら誰もいないワケではないようじゃ。 しかも、とても歓迎しておるワケでもなさそうじゃ。 いつの間にか、すっかり囲まれておるわ。 ほっほっほっ。
「ん?」
「あら?」
「へぇ~~」
ワシだけでなく、勇者アドーレ・大魔女シャニル・悪魔神オリンデルスたちも包囲されたことに気づく。 いかに姿を隠そうとも、あの妙な気配・殺気までは隠しきれない。 そこで先頭を歩くワシが立ち止まり、後から来るアドーレ&シャニル&オリンデルスたちも、ワシのすぐ後ろで立ち止まる。
「よいか、ワシは問答無用の先手必勝で仕掛ける。 お前さんたちはどうする?」
「ボクも参加させてもらいます。」
「右に同じ」
「左に同じ」
「よし、では各々の判断で行動しよう」
「はい、判りました。」
「りょ~~かい~~♪」
「ああ、わかった」
ワシがすぐ後ろにおるアドーレたちに小声で耳打ちして、アドーレたちもすぐに同意した。 これでワシの問答無用・先手必勝は決定された。 あとは実行するだけじゃ。 すると―――
ザザザザザザッ!!
「「「「……」」」」
ザザザザザザッ!!
ワシらの周囲を賊徒共が突然出現して包囲する。 数にして、約50人程度か……。 コヤツらは剣や槍や弓矢などを装備しておる。 どうやら幹部連中ではなく、雑兵共か……。 まぁ…よい。 まずはコヤツらから相手してやろう。 ほっほっほっ、行くぞ。
「おいおい、てめえら! 一体何モンだぁ!?」
「ここを何処だと思ってる!?」
「おい、てめえら! ここは俺たちの縄張りだ!」
「ノコノコと勝手に入ってきやがってっ!」
「ブッ殺してやる!」
「覚悟しろ!」
【ストリンガー・デスロック】
「……?」
「アレ……?」
「ヤ……ヤツは……?」
「行けえええぇぇぇーーーっ!!」
「やっちまえええぇぇーーーっ!!」
賊徒共が一斉に襲いかかる。
なお、一部の者が不測の事態に動揺・困惑して動きが止まってる。 ある一人の姿が消えていたから。
「……」
お決まりのセリフじゃ。
賊徒共がワシらに向かって、いつものように挑発してくる。 どうやらここはアヤツらの縄張りのようじゃな? じゃが、どうした? ほほぉー、賊徒共の中にも一部の賢い奴はいるようじゃな。 ワシの存在が一瞬で消えたことに気づいたようじゃな? じゃが、もう遅いわ。
シュッ、ニョロニョロニョロニョロ―――
(※能力発動中では音はしないが、あえて音を表記する)
それはまるで蛇のような動きで―――
シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ!
「「「「うげぇっ!?」」」」
「「「「うがぁっ!?」」」」
『《神納覇》【ギガンドエルフ・アーマードビルダー】』
「ほっほっほっ、行くぞ!」
ワシは素早く後方におるロンギルス&アルベルス&アルラトス&イトリンたちの所まで移動して、そこにおる賊徒共の背後に一瞬で回り込んで、チョークスリーパーを仕掛けて、首を締めて頸動脈を圧迫させて、どんどんと失神・気絶させていく。
ドサササッ!
(※既に能力は解除されている)
一方の前方では、アドーレ&オリンデルス&カグツチ&エクリバたちが襲いかかる賊徒共に対処する。各々が【ストリンガー・ドラグーンソード】&《神納覇》の拳&剣&ムチなどで、賊徒共を攻撃して倒していく。 またシャニル&ニーグルン姫たちも後方支援にまわる。 勿論、賊徒共も剣&槍&弓矢などで反撃するけど、もともと実力の差がありすぎるので、賊徒共では歯が立たない。 どんどんと賊徒共の数が減っていき、次々と賊徒共が倒れていく。
ドサササッ!
シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ、シュッ、ガッ!
「「「「うげぇっ!?」」」」
「「「「うがぁっ!?」」」」
「まだまだ行くぞ!」
その間もワシが、後方におるロンギルス&アルベルス&アルラトス&イトリンたちの所まで素早く移動して、そこに襲いかかる賊徒共の背後を一瞬で回り込み、チョークスリーパーを仕掛けて、首を締め頸動脈を圧迫させ、どんどん失神・気絶させる。 こちらもどんどん賊徒共の数が減っていき、賊徒共が倒れて失神・気絶する。
ドサササッ!
あっという間に、約50人程度はいたはずの賊徒共が、あっさりとワシらによって倒され気絶した。 ちなみにこちらは全員無事で被害はなし。 結局のところ、伏兵のはずの賊徒共が全員すぐに倒されたあたり、やっぱり力の差がありすぎたようじゃ。
《神納覇》【ギガンドエルフ・アーマードビルダー】
蛇のような動きで、遠くから一瞬にして敵の背後に素早く回り込んで、チョークスリーパーを仕掛けて、首を締めて頸動脈を圧迫させ、敵を失神・気絶させる。 なるべく首の骨を折らないように手加減していて、その場に複数人いた場合、一瞬で全員に技をかける。 ヴァグドー専用のオリジナル技であり、技名もヴァグドーがつけたものだ。




