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絶望老人が異世界転生をしたら、99年間で最強無双になってしまった!  作者: 賭博士郎C賢厳
J.『矢獄関』&『倍獄関』&『弦獄関』編
320/329

305、何かおるな?

  ●【No.305】●



 とうとう某東(ぼうとう)の砂漠を越えて、元の平坦で何もない普通の道へ戻ることができたヴァグドーたち一行。 彼らを乗せた馬車が、このまままっすぐ進んでいき、次の目的地へ向かう。 ここから次の目的地までの道のりも、また長そうだ。 しばらくは直線の道が続くけど、やがて前方に森が見えてきた。 森の中にも道が続いてる感じだ。 何もない平坦な道から森の中に入ると、木々が生い茂っていて太陽の光が(さえぎ)られる。 森の中は薄暗い。


「森の中に道があるとは?」

「これは……整備されてるということですか?」

「ふむ、みたいじゃな」

「こんな森の中に何故(なぜ)?」

「ふむ、確かに……な」

「まぁ…とにかく先を進みましょう」

「ふむ、そうじゃな」


 森の中を進むワシら一行。

 ワシとルドルス将軍とで話し合う。 お互い馬車の外に出ている者同士・御者台に座る者・歩いて馬を引く者・馬車の中にいる者たちと違い、外で話ができる者たちじゃ。 ちなみに御者台にも一応は屋根がついており、雨露は(ふせ)げるようになっておる。 唯一雨露が(ふせ)げないのは、このワシだけじゃ。


 それにしても―――


 森の奥に入れば入るほどに、さらに薄暗くなる。 森の中の整備された道をワシらの馬車が突き進む。 こんな所、動物か魔物ぐらいしかいないだろう。 何故(なぜ)、こんな所に道が? だがしかし、ワシは()()()()の気配を感じ取った。 それと()()()()()()()、不思議な気配がある。


「誰かおるな?」

「え?」

「数にして約30くらいか?」

「魔物ですか?」

「否、人間じゃ」

「え?」


 ワシの発言にルドルス将軍が驚く。 まぁ…無理もあるまい。 こんな森の奥深くに人間がいる方がおかしいじゃろ? ワシじゃあるまいし、だとすると、()()()()はまさか……?


 ガサガサガサガサ―――

 ズザザザザザザザ―――


「「「「……」」」」


 すると向こうの方からたくさん出てきおった。 間違いない……賊徒共じゃな。 ワシらはここで馬車を停めた。


「ヴァグドーさん、あの連中は?」

「賊徒じゃな」

「賊徒?」

「そうじゃ。 しかし、何故(なぜ)賊徒がこんな森の奥深くにおるんじゃ?」

「さぁ?」

「……」


 ワシらが話しておると、向こうの方からも話しかけてきた。


「おい、テメエら!

 ここはオレたちの縄張りだぜ!」

「勝手に入ってくるんじゃねえ!」

「死にたいのか!」

「ここから消えろ!」


 ほーう、こんな森の奥深くを縄張りにしておるとは、()せぬな。 ワシらみたいな森好きでもない限り、一般市民や旅人はおろか、そもそも冒険者すらやって来んじゃろう。 なにしろ森の奥深くには狂暴な動物や魔物もおるしな。 こんな所を縄張りにしておる意味が解らん。 隠れ家やアジトでもこんな森の奥深くには造らん。 ワシみたいなモノズキでもない限り……な。 縄張りの意味、わかっとるのか?


「聞いてんのか!」

「えぇ、おい!」

「聞こえんのう」

「何っ!?」

「なんだとっ!?」

「テメエェ!?」

「ブッ殺すぞ!」

「ほっほっほっ、このワシをブッ殺すか…?」

「このヤロー、オレらをなめてんのか!」

「……」


 ほっほっほっ、威勢のいい賊徒共じゃ。 たまには人間を相手にするのも悪くない。 ワシは馬車から離れて、一人前へ出る。 その周囲を賊徒共が包囲する。 ほっほっほっ、すっかり逃げ道を失ったのう。


「……」

「テメエ、覚悟はできているのか!」

「後悔させてやるよ!」

「血祭りにあげてやる!」

「ほーう、血祭りか? ではワシがお前さんたちを『木祭り』にあげてやろう」

「何っ!?」

「ふざけんな!」

「やっちまえええぇぇ!」

「「「おう!」」」


 賊徒共が一斉にワシに襲いかかる。 それにしてもこの賊徒共は鉄グローブと鉄ブーツを装備しておるな。 アレで殴ったりに蹴ったりするのか? 今時、近距離肉弾戦とは、賊徒共にしては珍しいのう。


 ガン、ドン、ガン、ドン、ガン、ドン、ガン、ドンッ!


 賊徒共が鉄グローブや鉄ブーツで、ワシの顔面・胸部・腹部・背中・後頭部などを殴ったり蹴ったりする。 ハタから見ると、ただのリンチじゃ。 ()()()()がワシのことを取り囲んで、あらゆる方向から一斉にワシの身体に攻撃する。 しかし、ワシは微動だにしない。 痛くも痒くもない。 まぁ…賊徒共の実力では、この程度か…?


 ルドルス将軍は思う。

 命知らずのモノズキな連中だな。 まさしく井の中の蛙、大海を知らず…というヤツか…。 無知というモノが、これほど罪深いとは……ただ彼らの武運を祈るのみだ。


 いくら殴っても蹴っても(ひる)むどころか、ビクともしない。 直立不動の仁王立ち。 まるで大木・岩石―――否、鋼鉄の柱を相手にしているようだ。 息切れして疲労困憊なのが、ヴァグドーではなく、むしろ攻撃している賊徒共の方である。 思わず攻撃を中止して距離をとった。


「……」

「はぁはぁはぁはぁはぁ…」

「な…なんだコイツ…?」

「一体どうなってるんだ?」

「いくら殴っても蹴ってもピクリとも動かない?」

「チクショオウッ!

 アレだけやって、(ひる)むどころか傷ひとつついてねぇなんて!」

「コイツ……バケモノか……?」

「はぁはぁはぁはぁはぁ…」


 自分たちの攻撃が全く通用しないで驚愕していると―――


 ピキピキピキピキピキ―――パリーーン!

 ピキピキピキピキピキ―――ドパーーン!


「「「「ッ!!?」」」」


 なんと賊徒共の鉄グローブや鉄ブーツが一斉に破壊されてしまった。 あのヴァグドーの鋼鉄の肉体を攻撃しすぎて、思わずボロボロに砕け散ったようだ。 逆を言えば、鉄グローブや鉄ブーツがなければ、今頃は賊徒共の腕や脚が粉砕されていたかもしれない? ちょっとしたラッキーだったかもな。


「な……何ぃーーーッ!?」

「そんな……バカな……?」

「鉄グローブが……?」

「鉄ブーツが……?」

「どうした? もうかかってこんのか?」

「「「うっ!?」」」

「「「いっ!?」」」

「「「ひっ!?」」」

「ならば、こちらから行くぞ!」

「「「「ッ!!?」」」」


 すっかり(おじ)()つく賊徒共相手に、ワシが全身から妖しく禍々しい邪悪な漆黒の闘気を放出させて、一気に両腕両足を左右に広げた。


 バッ!


「【神納覇(しんのうは)気闘波爆(きとうはばく)】!」


 ドッバァーーーン!


「「ぐあっ!?」」

「「うげっ!?」」

「「あがっ!?」」


 ドン、ドン、ドン、ドン、ドンッ、ガクッ!


 次の瞬間、妖しく禍々しい邪悪な漆黒の闘気を利用した見えない力で、周囲にいた()()()を全員後方に吹き飛ばす。 ワシの気合いの力だけで、あっという間に賊徒共が木々にぶつかって再起不能となる。 その中には、木にぶつかった拍子で張りつけにされた者もおる。 これぞ、まさしく『木祭り』というヤツじゃ。


「ほっほっほっ、言ったであろう。 『木祭り』にされるのは、むしろお前さんたちの方じゃと」

「……」


 相変わらず、とんでもない強さを誇るヴァグドーを見て、ルドルス将軍が思った。


 あ…あの技は……【神納覇(しんのうは)気闘波爆(きとうはばく)】という技だったのか…?

 それにしても―――

 なんという強さなのか…?

 本人もまだ本気ではないんだろうけど、やっぱり、この強さは少し異常だな。 30人はいたはずの賊徒共を一瞬で一撃で全員気絶させてしまうとは、本当に凄いことだな。 この人に勝てる者など、本当にいるんだろうか?


 などと考えていると、


「さぁ、行くぞ!」

「はい!」


 ワシが馬を引いて馬車を動かす。


 再起不能で気絶しておる賊徒共は無視して、ワシらは馬車を再び進めて、さらに森の奥深くへと入っていった。 たしか森の奥深くに幻の泉があったはずじゃ。



ヴァグドー氏の

『縄張りの意味、わかっとるのか?』について解説。


 そもそも縄張りとは、他者・他勢力から自分の地域・拠点・重要地点などを防衛すること。 または他者・他勢力を排除・排斥して、自分が占有・占拠する場所のことを指す。 しかし、こんな森の奥深くまでは誰も寄りつかない。 せいぜい動物や魔物がいる程度。 そこにたまたまヴァグドーたちが来たので、縄張りという表現を使ったのかもしれないけど、そもそもがただの通り道なので、別に縄張りがどうこういう訳ではない。 要するに、ただ通さない為のいちゃもんにすぎないのだ。

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