303、無法者の最期
●【No.303】●
某東の砂漠東側終着点にて。
危険な "悪股の大蛇" [闘弐頭]《キング・オアシス》相手に、あの最強の漢&勇者アドーレ&大魔女シャニル&悪魔神オリンデルスの四人が戦ってる。 頭はふたつあるけど、身体は湖の水なので攻撃しても、ほとんど通用しない強敵だ。 何気に物理攻撃が一切通用しない強敵に、さすがのワシでも攻めあぐねていた。 あの《キング・オアシス》には、この最強の漢の強烈な鉄拳をも平気。 なので…今回はシャニルの火の魔法で、アヤツの湖の水の身体を焼失させようとしたのじゃ。 ワシにとっては、複雑な気持ちじゃが、とりあえずはそれであの化物を倒すつもりのようじゃ。
「よーし、行くわよ!」
「おお」「はい」
「……」
シャニルが右手の掌を身体の前方に突き出す。
『私は焔の王を放つわ!』
シャニルの右手の掌から紅色の魔法陣が出現する。
『【焔王砲】』
ズゴゴゴオオオォォーーーッ!!
紅色の魔法陣から "真紅の焔の極大光線" が放出されて、その "真紅の焔の極大光線" で素早く強敵を焼き尽くす。 そのまま《キング・オアシス》を焼き尽くさんと、もの凄い勢いでアヤツの身体めがけて飛んでいく。
『オロロォォ~~~~~ン♪』
そんなアヤツの右頭の口から、強烈な流水をシャニルの【焔王砲】めがけて飛ばす。 もの凄い勢いで強烈な流水が自分の方へ飛んでくる【焔王砲】へ向けて発射された。
プシュゥゥゥウウウウウゥゥ~~~~ッ!!
「「えっ!?」」
「ほーーお」
「……」
ここに《キング・オアシス》の激烈流水とシャニルの【焔王砲】がぶつかり合う。 衝突。 激突。 丁度《キング・オアシス》とシャニルの間をくすぶる。
バッシャァァァァーーーーーッ!!
なんとほぼ互角。 双方共にもの凄い勢い・威力・速度でお互いに押し合う。 あの《キング・オアシス》の水流も、なかなかやるではないか? 大魔女シャニルの炎の攻撃魔法と、ほぼ互角である。
プシュウウウウゥゥゥゥ―――
なんということか!
ここに来て、《キング・オアシス》の強烈な水流と、シャニルの【焔王砲】が相殺された。 火と水の対極関係にあるけれど、威力がほぼ互角な為、相殺されて消滅した。
「嘘!?」
「なんと、こんなことが……!」
「ほーーお、やるなぁ~~♪」
「…むっ…」
なんということなのか!
あのシャニルの攻撃魔法をただの強烈な水流で押し留めて消滅させる程の実力者。 さすがは "悪股の大蛇" [闘弐頭]と呼ばれることはあるな。 炎系はシャニルにとって最大の攻撃魔法であるから、それが効かないとなると、かなり厄介なのだ。
「………」
しかし、ワシだけがこの時点で、すぐに《キング・オアシス》の弱点に気がついたようじゃ。
なるほど、火は水に弱く、水は火に弱い。 お互い相性の悪い同士でぶつかれば消滅する。 理にかなっておるな。 確かにアヤツの身体は "水" でできておる。 攻撃方法も水流か爆発のみ。 ならば…アヤツを倒す方法が、これでできたワケじゃ。 些か、不本意で奇策であるが、まぁ…仕方あるまい。 実際の戦闘でも勝つか負けるか…じゃ。 これもまた "勝敗は兵家の常" じゃ。
ワシの作戦は既に決定した。
まさかの【焔王砲】までが通用せずで、一同が落胆する…。
「嘘……まさか…私の攻撃魔法まで防がれるなんて……?」
「ちっ、まさか…魔法まで効かないのか…?」
「これは……打つ手なしですね……」
「否!」
「えっ!?」
「……?」
「今ので…アヤツの弱点が理解できた」
「「弱点……?」」
「そうじゃ。 もはや勝機は我にあり」
「「?」」
「……何か作戦でもあるのか?」
「……」
「ほっほっほっ、確かに火と水では相性が悪い。 じゃが、何も火にこだわる必要はない。 要は動けなくすればいいことじゃ。」
「えっ!?」
「それは一体―――」
「!」
「なぁに、凍らせてしまえばいいのじゃ。」
「「「!」」」
「相手が水であるが故に、凍らせてしまえばもう動けない。 凍りついた相手ならば、ワシの拳でも一発で破壊できる。 あとはまた【焔王砲】で砕け散った氷の破片を跡形もなく燃やしてしまえば、あとは砂漠の砂が余分な水分を吸い取ってくれるじゃろうて。 それでおしまいじゃよ」
「「「……」」」
「よいか、ワシら三人でアヤツの注意を引く。 お前さんは迷わず【凍王砲】をアヤツに撃て。 無論、アヤツも流水で迎撃するじゃろうが、構わず撃ち続けよ。 その内にアヤツの身体自体が凍りつく。 あの【凍王砲】ならば、火でも水でも関係ない。 アヤツの身体が凍りついたら、ワシらで氷の塊を破壊するから、お前さんはまた【焔王砲】で氷の破片を燃やし尽くせ。 残りは砂漠の砂が吸い取ってくれるはずじゃ。 それで終わりじゃ」
「ええ、わかったわ」
「はい、よく判りました。」
「あの一瞬で、今の作戦を思いついたのか?」
「ほっほっほっ、そうじゃよ」
「………」
まさか…あの【焔王砲】と水流の激突の最中で、今の作戦を思いついたのか? ボクたちが動揺してる間に、あんな作戦を思いつくとは…。 ただ単に強いだけではないな。 相当に頭がキレてる。 もしかしたら、真の強さとは……そこにあるのか……? だとしたら、相当に食えない男だよ。 君という男は―――
オリンデルスがワシの方を見ておる。 何か思うところもあるじゃろうて。
「よし、行くぞ!」
「おお!」
「はい、判りました。」
ワシら三人が《キング・オアシス》に攻撃を開始する。 ワシやオリンデルスが拳や蹴りで攻撃したり、アドーレが【ストリンガー・ドラグーンソード】で攻撃する。 当然、あの《キング・オアシス》には通用しないけど、アヤツの注意を引くには充分じゃった。 アヤツも爆発攻撃でワシらに攻撃するけど、それをワシらが巧みに避け続ける。 アヤツがワシらと戦ってる隙をついて、
シャニルが左手の掌を身体の前方に突き出す。
『私は氷の王を放つわ!』
シャニルの左手の掌から水色の魔法陣が出現する。
『【凍王砲】』
ブオオオオウウウゥゥーーーッ!!
水色の魔法陣から "純白の猛烈な吹雪" が放出されて、その "純白の猛烈な吹雪" で強敵を凍らせる。
『オロロッ!?』
純白の猛吹雪が《キング・オアシス》を包み込む。 慌ててアヤツも水流を吐いて応戦するが、その水流もすぐに凍りつき、アヤツの身体もどんどん凍りつく。
ピキピキピキピキ―――
『オロロォォ~~~~~ン♪』
ピキピキ―――カッチィィィンン!
そして遂にアヤツの巨大な身体が完全に凍りついた。 アヤツは完全に動きを封じられた。 こうなれば、あとはこっちのもんじゃ。 ワシとオリンデルスで、あの凍って硬くなった巨大な身体を容赦なく破壊。
ドッコォッ、バッキィッ、ズドォッ!
さらにシャニルの【焔王砲】とアドーレの【ストリンガー・ドラグーンソード】で砕けたアヤツの氷の身体の破片を焼き尽くす。 残った水分は、ここの砂漠の砂がよく吸い取ってくれるじゃろうて。
『―――~~~~ンンン!』
これでトドメじゃ。
聞こえん断末魔じゃった。
「ふーう、やれやれ……じゃな」
「おお、勝ったぞ……勝ちやがった……!」
「やったーー! やったーー!」
「さすがはヴァグドーさんですね!」
遂に―――ようやく―――あの "悪股の大蛇" [闘弐頭]《キング・オアシス》を撃破することができた。
※[天衣無縫4.VS. "悪股の大蛇" [闘弐頭]《キング・オアシス》→→天衣無縫側の勝利]
それにしても…今回の強敵は、ワシ一人だけで倒すことができなかったとは…。 やっぱり、このワシもまだまだだってことか…。 少しホロ苦い経験をしたようじゃな。
━・[【辛勝】]・━




