299、三者三様
●【No.299】●
某東の砂漠の某所。
そこのある場所にて、ヴァグドーと悪魔神オリンデルスが凶悪モンスター《岩砂焦》と戦闘していた。
ワシの拳の威力によって、腹部に穴を開けられた《岩砂焦》が後退して距離をとる。 それにしてもあの巨大で太い岩石の腕の拳の攻撃を、よくもまあ…防げたものじゃなワシも…。 オマケに敵の攻撃の合間を縫って、一撃喰らわせるとは、さすがというべきか。 思わず後退りしてしまったな。
正面を見てみると、少し離れた場所にあの二人が立っていた。 そこで…我が《岩砂焦》が両の拳を頭上に合わせて、腹部に開いた穴からエネルギーを充填・収束させていく。
『ヌオオオオォォ』
ガッチィーーン、ブォオオオオオオオォォォーーーーッ!!
もの凄い純白の高濃度エネルギーが腹部の穴の中で、どんどん溜まり固まっていく。 相当な強烈な攻撃が予想されるけど、これこそがこの凶悪モンスターの切り札なのか?
『最期に喰らえ! 【岩摩光砲】!』
ズドォッ!
アヤツの腹部の穴から、純白の強力エネルギー光線が発射されて、まっすぐワシらの方へ素早く向かってくる。 なかなかもの凄い勢い威力・迫力で迫ってくるのう。 普通の一般人だったなら、アレをマトモに喰らって、即お陀仏じゃが―――
「ほーう…」
ワシが右腕を少し上げて、まっすぐ素早く向かってくる純白の強力エネルギー光線に備えて構える。 そこで【岩摩光砲】がワシの目の前まで近づくと、素早く右腕を思いきり水平に振り抜いて、純白の強力エネルギー光線を弾き飛ばす。
「ふん、つああああぁぁぁっ!」
ズドォォォーーーッ、バァァチィィィーーーッ!!
『何ッ!?』
なんと…あの【岩摩光砲】をあの人間の男ごときが右腕一本だけで弾き飛ばすことなど、本当はできるはずないことなので驚愕する。 そのまま【岩摩光砲】は何処かへ飛び去っていった。 だが…アヤツはまだ気づいておらん。 ワシの隣にいたはずのヤツが既にいないことに―――
「おや?」
『?』
「ちっ!」
シュッ、バァキィィィーーーッ!!
次の瞬間、背後から突然オリンデルスが出現して、素早く右手の手刀を水平に振り抜いて、あの《岩砂焦》の首を切断。 そのまま頭部は破壊されて、残された胴体が前のめりに倒れ込む。
ボォン、ズドォォォーーーン!!
まさに一瞬の出来事だった。
ワシが《岩砂焦》の【岩摩光砲】を右腕一本だけで弾き飛ばした瞬間、先程までワシの隣にいたはずのオリンデルスのヤツがいつの間にか、あの《岩砂焦》の背後に素早く回り込んで、そこから右手の鋭い手刀を《岩砂焦》の首に叩き込んで切断した。 手刀の威力が高くて頭部は破壊。 残った胴体も前のめりに倒れて動かない。
「なんだ…もう終わったのか?」
「どうやらここまでのようだね」
「ほーう、おいしいところは…お前さんがもっていくのう。」
「ふふふ、悪いねヴァグドー」
やがて胴体も粉々に砕けて、ただの岩石だけになる。 ここでもやっぱりあの《岩砂焦》を倒した。 意外にあっという間に、あっさりと、ほぼ一撃で撃沈したようだ。 さすがは最強のヴァグドーとオリンデルスの二人である。 砕けた胴体の中から、漆黒小型球体を発見して、オリンデルスが拾う。
「なんじゃ…それは…?」
「さぁ…?」
「…拾うのか…?」
「あぁ…貰っておくさ」
そう言いながらもオリンデルスが漆黒小型球体を懐にしまう。 どうやら特殊なドロップアイテムのようじゃが、アレが一体何のアイテムなのか? 名前や能力などは、まだ不明じゃ。
[○勝利:ヴァグドー&悪魔神オリンデルス.VS.《岩砂焦》:敗北●]
戦闘を終えたワシらは、再び馬車の所に戻る。 馬車の中にいたカグツチやニーグルン姫たちが声をかけてきて労う。
「お疲れ様です師匠」
「お疲れ様ですヴァグドー様」
「お疲れ様ダーリン♪」
「お疲れ様ぁ~ヴァグドーちゃん~♪」
「お疲れ様ですヴァグドー殿」
「お疲れお父さん」
「お疲れヴァグドー、オリンデルス」
「おう」
「ああ」
「もう終わったのですか?」
「ふむ、なんとかな」
「ああ、大変だったけどね」
二人が言うほど、大変ではなかった。
「それはお疲れ様でした」
「「お疲れ様です」」
「ふむ、それでは先に進もうか」
「ああ、そうだね」
またオリンデルスが馬車の中に入り、ワシが馬の手綱を引きながら歩く。 再び目的の場所へ向かって馬車を進める。 ちなみに悪魔神のバリヤーはまだ馬車に張られている。
某東の砂漠を東へ。
目的地までまだだいぶ先にあるけれど、もうそろそろ夜になるため、今夜は何処か適当な場所に馬車を停めて野宿する。 悪魔神のバリヤーで馬車の周囲を張り巡らされていて、馬車の中で休む仲間たち。 ワシやオリンデルスは馬車の外 (バリヤーの内側) で焚き火をする。 バリヤーの内部は常温で守られていて、砂嵐や魔物なども防いでくれる。 だけど見張りは必要じゃ。
パチパチパチパチ―――
「………」
「……」
ワシとオリンデルスは焚き火を見ながら座っておる。 ちなみに晩ご飯は、イトリンがいるお陰で、こんな砂漠の中でもラーメン・チャーハン・ギョウザなどの中華料理が食べられた。 やっぱりイトリンは貴重な戦力である。 なくてはならない存在じゃ。 相変わらずとても美味しかった。 これで食事の心配はないのう。
そこに勇者アドーレもワシらと一緒に焚き火を当たりに座りに来る。 ここでワシとアドーレとオリンデルスの三人が揃う。 珍しいこともあるものじゃ。
「お二人共、ご苦労様です」
「……」
「おっ、眠れんのか?」
「ええ、いくら内部が広いとはいえ、女性たちと一緒に雑魚寝というのは、さすがにちょっとね」
「ああ、なるほどね」
「それにしてもこの砂漠はなかなか広いですね?」
「ふむ、確かに広いけど、これでも普通じゃろ?」
「それに砂漠などは、そう簡単に来ることもないからね。 砂漠というものは、どの程度の広さ・大きさなのか、その基準が解らんからね」
「まぁ…そうですね…」
「それにしてもイトリンの中華料理は旨かったね?」
「ふむ、まさにハーディスに感謝せねばな。 ハーディスのお陰でイトリンの中華料理が食べられるからな。」
「それにしてもイトリンの初対面は危機一髪でしたね?」
「ああ、あんなオンボロ教会でゆっくりしてる場合ではなかったね?」
「ふむ、そうじゃな。 まさか…あんな状態になってると、さすがにおもわなんだ」
「ああ、ボクもだ」
「はい、ボクもです」
「ふふふ」
「ふはははぁぁ」
「ほーほっほっほぉぉ」
こんな砂漠の中で、なかなかの思い出に浸っているけど、まさに思い出話に花が咲く…というヤツか。 それにしてもヴァグドー・悪魔神オリンデルス・勇者アドーレの三者三様が、同じ焚き火を見ながら話し合うのも、なかなかの構図だ。




