288、『弦獄関』[到着]
●【No.288】●
あの『倍獄関』を通り抜けたヴァグドーたち一行。 そのヴァグドーたち一行を乗せた黄金の大型馬車が現在、次の目的地『弦獄関』に向かっている最中。 悪魔神オリンデルスも謎の男との戦闘を終えて、ヴァグドーたち一行が乗る黄金の大型馬車に合流する。 これまでの戦闘で『矢獄関』や『倍獄関』では、敵である謎の男が関所の巨大な建物の屋上の上空にいることがわかった。 おそらく今回も謎の男が出てくるだろうと予想される。
そこで、今回も謎の男と戦う相手を決めていた。
「それでは、次はボクが行きましょう。」
「おお、そうか。
お前さんも最近は戦いだしたのう。」
「それでは、ボクたちがこれまで戦った謎の男について情報共有しようか。」
「頑張ってねぇ~、アドーレちゃん」
「はい、そうですね。
ありがとうございます。」
「よし、ワシからはまた伝説の皇剣【消滅罪の剣】を貸してやろう。 お前さんも二刀流じゃろうからな。」
「ああ、そうだね。 キミは二刀流だよね?」
「二刀流だよねぇ~、アドーレちゃん」
「はい、そうですね。
ありがとうございます。」
「じゃあ、頑張れよアドーレ」
「ふむ、いつも通りになアドーレよ」
「はい、ありがとうございます。
それでは、いってきます」
「いってらっしゃいぃ~、アドーレちゃん」
どうやら次の『弦獄関』での謎の男に対する相手は勇者アドーレに決まったようだ。 今回もまたヴァグドーが所有する伝説の皇剣【消滅罪の剣】を借用して使用することになる。 またこれまでの『矢獄関』と『倍獄関』での戦闘情報を勇者アドーレに教える。 これで『弦獄関』攻略は万全か。
ヴァグドーたち一行を乗せた黄金の大型馬車が、次の目的地『弦獄関』へ向かって、そのまま走り続ける。
ここは『弦獄関』の関所の巨大な建物の屋上の上空にて。
ここにも、やっぱり謎の男が宙を浮いていた。 ここで遂に『弦獄関』の関所の建物を擬人化した謎の男が登場する。
「ふん、やっぱりここまで来たか…」
その謎の男が腕組みしながら目を閉じて、静かに独り言を語りだす。
「まさか…『矢獄関』も『倍獄関』も敗れるとは…思いもよらなかったぞ! あの人間がここまで出来る種族だったとは…な。 だが…この『弦獄関』までが敗れる訳にはいかないぞ! まさしくここが最後の砦なのだからな。 必ず退けてみせるぞ! さぁ…来るがいい人間共よ!」
長々とした意気込みを胸に、こちらも戦闘準備は万全のようだ。 今まで無敗だったはずの関所。 果たして今度こそ、関は勝利できるだろうか? もう三戦全敗は避けたいところだけど…?
どんどんと『弦獄関』に近づく黄金の大型馬車だけど、ここで馬を引いてるヴァグドーがある異変に気づく。
「ん?」
「?」
「ルドルス将軍、馬車を停めよ」
「はい」
ヴァグドーの指示のもと、御者台に座るルドルス将軍が馬を停める。
「どうしましたか? ヴァグドー殿」
「……糸じゃ」
「えっ、糸…っ!?」
「ここから先、最後の関所までの道程が無数の糸で塞いでいて通れぬ。 まるで蜘蛛の巣みたいにびっしりと塞いでおるわ。」
「そのまま通れませぬか?」
「駄目じゃ。 この糸……意外に切れ味抜群で、無理に通ろうとすると、切り裂かれる恐れがある。」
「なんと、鋼糸ですか?」
「ふむ、それはまだ解らん。 じゃが、しばらく様子を見よう。 アドーレが謎の男と戦っているうちに、隙を見て、このまま通り抜けてしまおう。」
「はい、判りました。」
「ふむ、上手くやれよ。 アドーレ」
正体不明の謎の糸。
今まで様々な経験から、この無数の糸の中を強引に進むと、馬車や身体が軽く切り裂かれる恐れがあるほどの鋼鉄な糸だと推測したヴァグドー。 さすがである。 まだ『弦獄関』までは距離はあるけれど、その場で馬車を停止させて、少し様子を見ることにした。 もし、ここにヴァグドーがいなかったら、今頃は本当にスパッと切れてバラバラにされたかもしれない…? さすがの彼でも、この糸は非常に危険だと判断したようだ。
そして、もう既に馬車の中には、勇者アドーレの姿はなかった。 どうやら彼は一気に『弦獄関』の関所の建物の屋上の上空へ向かっていったらしい。
ここは『弦獄関』の関所の巨大な建物の屋上の上空にて。
身を乗り出した謎の男が宙を浮かびながら不敵な笑みを浮かべていた。
「ふふふ、やっぱり近づけないか…。
しかし、よく糸があることに気がついたな? 透明な糸なのに、さすがだ」
身を乗り出した謎の男が近づいてくる黄金の大型馬車の方を見ていた。 自分の作り出した透明で鋼鉄な糸を、見事に気づいたヴァグドーのことを称賛する。 一方で、もし…普通のただの人間だったら、そこに糸があるのに気づかず、普通に通り過ぎようとして、スパッと切り裂かれて身体がバラバラにされて、そこら辺の地面に肉片が転がるだけだったかもしれない…。
「だが…これでもう…この『弦獄関』には近づけない。 彼らの進撃も…ここで停止だ!」
「果たして、そうでしょうか?」
「何っ!?」
今まで馬車の方を向いていた謎の男が、突如として目の前で男の声がして、再び目の前を見ると、そこに勇者アドーレが宙に浮いていた。
「お…お前は…?」
「はじめまして、ボクは勇者アドーレです」
「何っ!? お前……あの無数の糸を潜り抜けて、ここまで飛んできたというのか…?」
「はい、大変でしたけど…」
「なんと…透明で鋼鉄の無数の糸の中を…」
「ふふふ、驚いているようですね」
「何を! この程度!」
「なるほど…あなたを倒すと、一体どうなるんですかね?」
「むっ、勇者アドーレか……相手にとって不足なしだ!」
「それでは、お相手お願いします」
「行くぞ!」
ここで遂にこの『弦獄関』を守護する謎の男と、最強無双の勇者アドーレが対面・対峙する。 もはや彼の実力は説明不要である。 果たして、この謎の男の実力はいかほどに…?




