282、『矢獄関』[到着]
●【No.282】●
ヴァグドーたち一行は黄金の大型馬車に乗り込み、その馬車に揺られながら、次の目的地『矢獄関』へ向かう。 そんな『矢獄関』とは、ただの大きい関所の建物があるだけで、他に宿屋やお店や民家や教会などの類いの建物はない。 また普段から人の往来もほとんどない。 つまり、このまま関所を素通りして、先を急いで次の街へ向かう必要がある。 それに関所といっても、別に役人とか門番とかがいる訳ではない。 確かに、昔はいたかもしれないけど、今はほとんど無人だ。 そもそもこんな所に人が来るなど、ほとんどあり得ないからだ。
「おお、アレか!」
「ふむ、見えてきたのう」
「アレが……?」
「……『矢獄関』なのか?」
「あの巨大な建物がそうなのか?」
「へぇ~~、アレがぁ~~」
「……」
「デカイな…」
「そうだな。 ここからでも見えるぞ」
「ようやく着いたのう」
「えぇ、そうねぇ~」
「はい、そうですね」
「ああ、そうだな」
「ん? なんだ? アレは?」
「あら、何か飛んできたわね?」
「……」
ようやく巨大な関所の建物が、ヴァグドーたちの肉眼でも見えてきた。 ここからもうすぐ『矢獄関』に到着するだろう。 そんな『矢獄関』の建物に迂闊に近づくと、
「?」
「…矢…?」
ズババババババババァァァァーーーーーッ!!
「…矢ね…」
「ふん!」
ヴァグドーや黄金の大型馬車めがけて、無数の矢があらゆる方向から飛んでくる。 勿論、その矢はヴァグドーや黄金の大型馬車までは届かない。 それでも『矢獄関』に到着するまでの間、あらゆる方向から無数の矢がヴァグドーたちを狙って飛んでいく。 ちなみに何故、矢がヴァグドーたちに届かないかというと、矢がヴァグドーたちに命中する前に、どんどんと消滅するからだ。 これもヴァグドーたちの力の一端なのか?
「……」
「確かに、矢だ…」
ズババババババババァァァァーーーーーッ!!
「なるほど、矢の地獄か…」
「ふん!」
その『矢獄関』に近づくにつれて、矢の数や勢い激しさも増すけど、それらの矢…全てがヴァグドーや黄金の大型馬車に届く前に消滅する。 ただ矢は消滅すると判っていてもヴァグドーたちに向かっていく。 まるで自動的に人の手によるものではなく、ほとんど機械的に動いているような気がする。
「……」
「ヴァグドー殿。
その剣には、何か特殊能力でもあるのですか?」
「おう、こいつは伝説の皇剣【消滅罪の剣】じゃよ。」
「あっ…伝説の皇剣【消滅罪の剣】…ですか?」
「そうじゃ。
こいつは伝説の皇剣【消滅罪の剣】じゃよ」
「……」
ヴァグドーは自身が所有する伝説の皇剣【消滅罪の剣】を右手に持って高々と掲げており、そこから次々と矢が消滅する。 この伝説の皇剣【消滅罪の剣】には、まだまだ特殊な能力が隠されているみたいだ。 けど…今は、この無数に飛んでくる矢を全て消滅させていく。 このまま無数の矢を消滅させながら、どんどんと進んでいく。
「……」
「なんだ…この大量の矢は…?」
ズババババババババァァァァーーーーーッ!!
「ちっ、これは地獄ではないのか…?」
「ふん!」
┏━
┃・・・・・・??
何故、当たらない…?
これほどの全方位同時に大量の矢を奴らに狙って放っているのに何故、ひとつも当たらないのだ…?
一体何なんだ? あの剣は……? あの剣が全ての矢を消しているのか…?
チクショウゥゥゥーーーーッ!!
┃そんなバカなぁぁぁーーーーっ!!
┗━
ヴァグドーや黄金の大型馬車を狙って飛んでくる四方八方からの大量の矢を、ヴァグドーが右手で高々と掲げた伝説の皇剣【消滅罪の剣】がことごとく消滅させていく。 このままヴァグドーたちが『矢獄関』の建物の巨大な鉄の扉の目の前に到着した。 なかなか重そうな頑丈そうな大きな扉である。
┏━
┃クックックッ!
矢が当たらないのは計算外だがっ!
あの扉はそんなに簡単には開かないぞ!
もう長い間、誰も開けていないので鉄の扉もサビついて、より重くなっているだろう!
結局、あの扉の所で立ち往生して、いずれは全員がこの無数の矢の餌食となるのだ!
┃クックックッ、ザマァミロォーーッ!
┗━
「ふん!」
ズゥン、ギギギギギィィィィギギギギギィィィィギギギギギィィィィーーーーーッ!!
するとヴァグドーが左手一本だけで、その重そうな頑丈そうな巨大な鉄の扉をどんどん開ける。 まるで普通に普通の扉を開けるようにして、どんどんと扉を押して開けていく。 そして重量ある頑丈な巨大な鉄の扉を全部開けきると、そのままヴァグドーや黄金の大型馬車が『矢獄関』の建物の中に入り、また重量ある頑丈な巨大な鉄の扉を閉じる。
ギギギギィィィィ―――ズゥン!
「……」
「よし、建物の中に入ったぞ!」
「これで矢の恐怖と地獄から解放されたな!」
「はい、そうですね。
これで一安心ですね」
「ええ、そうね。
あの矢……なんだか嫌な感じよね?」
「それにしても、あの巨大な鉄の扉をよく開けられましたな。」
「ふむ、そうじゃな」
「あぁ…まったくだよ」
ヴァグドーたちは無事に『矢獄関』に侵入成功。
矢の消滅効果は、ヴァグドーと伝説の皇剣【消滅罪の剣】の力で発動しており、伝説の皇剣【消滅罪の剣】単体の能力ではない。 それ故、ヴァグドーが伝説の皇剣【消滅罪の剣】を使用しないと効果はでない。
┏━
┃・・・・・・!?
あっ、しまった!
建物の中に入られたぞ!
これでは矢の効果が得られないぞ!
チクショオォォォーーーーッ!!
そんなバカなぁぁぁーーーーっ!!
ま…マズイぞぉぉーーーっ!!
┃このままでは…屋上まで……っ!?
┗━
その『矢獄関』の建物の屋上に、謎の男が一人だけいて、無数の矢をあらゆる方向から繰り出した張本人であり、この『矢獄関』を管理・支配する者である。
「くっ……ん!?」
その謎の男の背後から気配・殺気がして、そのまま後ろを振り向いて見てみると、なんともの凄い勢い・速度で背後からヴァグドーが近づく。




