278、最強無双の覚醒
●【No.278】●
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……………
………………
???
お…俺は……死んだのか……?
こ…ここは……何処だ……?
真っ暗で……よく解らない……?
こ…ここは……地獄……なのか……?
朦朧とする勇者。
するとこの暗闇の空間の何処からか、俺以外で不思議な声が聞こえた。
否、違う…。
ここは地獄ではない…。
ここはお前さんの意識……深層心理の奥の奥じゃ。
お前さんは心臓を貫かれて……意識不明の重体じゃよ。
えっ!?
心臓を貫かれて……?
心臓を貫かれたら……普通…死ぬんじゃ……?
否、忘れたか?
お前さんもまた……不死身の肉体であることを……。
お前さんの耐久力は……まだゼロではないのじゃ…。
しかし、さすがに心臓を貫通されて……無事では済まない…。
ならば…このまま死ぬのか……?
否、忘れたか…?
お前さんの真の力を……。
それを使うのじゃ…。
真の力……だと?
…そうじゃ。
……?
俺と老人口調の謎の男と暗闇の空間の中で会話してるうちに、俺はまた意識を失う。 まるで眠るようにして、その老人口調の謎の男の「真の力を使うのじゃ」という言葉だけが脳裏にこびりついて離れない。 あの男の言った「真の力」とは…一体何の事なのか…? 否、俺は本当にまだ生きているのか!?
ここは魔雲塔・五階フロアの上に上がる階段の手前にて。
五階フロアのボス・漆黒の宝箱《パラダイムシフト・クライシス》相手に、ブルームスライムとゲル=パンサード・オレンジと魔悪死ホワイト使いとエロ=ルーラー・レジェンドが勇者ポグルスを庇いながら戦い続ける。 普通なら主である勇者ポグルスが殺られたら見捨てて逃げ出すか、どうしていいか解らず動けないか、まず行動を起こすことなどできないはず。 なのに彼らは勇者がまだ生きていると信じ最後まで諦めずに戦い抜く。 かくも不思議なものだ。 同族の人間からは見捨てられ見放されたポグルスだけど、敵対するモンスターからは最後まで共に戦い抜く姿勢を見せる。 この行為・想いに応えるべきだ! 今一度、立ち上がれ勇者よ!
「えぇっ!?」
「ガルル…!?」
「おお……ぉ!?」
「なんとっ!?」
勇者ポグルスが静かに立ち上がる。
ただ立ち上がるのではない。
ポグルスの背後の右側には赤い大きな不死鳥が、左側には青い大きな不死鳥が、それぞれオーラ・エフェクトとなって浮かび上がる。 さらにポグルスの右側の瞳が赤く光り、左側の瞳が青く光る。 この能力こそ、勇者ポグルスの最大最強の能力。
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┃【全人類撃滅計画書】
↓
【エロ・アース】
↓
「アカシックレコード・ロイヤルカード」
↓
〇《合体》〇
↓
┃完璧究極最終奥義能力《ヴァッファロン》誕生!
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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォ―――
「な…なんだ……?」
「ガ…ガルル……?」
「こ…これは……?」
「す…スゴい……?」
もの凄い勢いの存在感とエネルギーを醸し出す。 その凄まじい威力を持つポグルスを見た仲間モンスターたちも驚愕・動揺する。 ただ漆黒の宝箱《パラダイムシフト・クライシス》だけは無表情・無感情のままだった。
だがしかし……だ―――
無言のポグルスの背後から右側の赤い大きな不死鳥が、左側の青い大きな不死鳥が、凄まじいオーラ・エフェクトとなって大きく羽ばたく。 さらにポグルスの右側の瞳が赤く輝き、左側の瞳が青く輝く。 それとポグルスの周囲からゴゴゴゴと轟音が聞こえてきそうな感じだ。 これこそ、勇者ポグルスの更なるパワーアップの予感。
そこで現在の勇者ポグルスのステータスがこれだ。
勇者ポグルスのステータスが表示されてる。
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ポグルス : 勇者→ 不死者
レベル : 50→ 77
耐久力 : 322→ 366
魔法力 : 142→ 161
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攻撃力 : 177→ 199
守備力 : 166→ 188
機動力 : 135→ 158
叡知力 : 120→ 145
幸運力 :1550→1577
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絶望力 : 100
能力1 :【全人類撃滅計画書】*
:【肉体固定】
能力2 :【エロ・アース】*
能力3 :【ヴァッファロン】
装備品 : [不死の鎧]
称号 :〈不死の勇者〉
アイテム :「アカシックレコード・ロイヤルカード」*
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*[合体時は一時的な使用不能]
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォ―――
ポグルスの赤い瞳と青い瞳が鋭く妖しく光り輝き、睨み付けた漆黒の宝箱を眼力で破壊する。
ピカッ、ドカッ、ドドン!
破壊された宝箱から漆黒の大きな坊主頭の人型の男 《宝影魔人》が出現した。 その坊主頭の胸部には紫色の鍵穴がある。 コイツこそがこのフロアの真のボス。 思わず中ボスのBGMが聞こえてきそうな感じだ。 勢いよく《宝影魔人》がポグルスたちに襲いかかる。
《宝影魔人》
大きな漆黒の坊主頭の人型の男。
胸部に紫色の大きな鍵穴がある。
レベル:38
攻撃方法:紫色の鍵穴から貫通力のある紫色エネルギー光線を放出する。 拳から漆黒のオーラ・エフェクトが発動して、拳の速度・威力・命中率が上昇する。
ビビッ!
早速、あの《宝影魔人》が胸部の紫色の鍵穴から紫色エネルギー光線を放出させて、勇者ポグルスめがけて発射させる。 さっきの漆黒の宝箱の鍵穴から放ったヤツよりもより強力なヤツだ。 普通の奴ならば、とてもじゃないけど、ひとたまりもない。
ビビッ、ズヂャーン!
だがしかし……だ―――
その紫色エネルギー光線がポグルスの胸部に当たる手前で消滅―――否、吸収されていく。 なんと今度のポグルスはエネルギーを吸収させることができるのか? 明らかにさっきまでのポグルスとは違う…? 胸部を貫通するはずの紫色エネルギー光線が全てポグルスによって吸収された。
『!?』
これにはさすがの 《宝影魔人》でも驚く。 そこで今度はポグルスの目の前まで急接近して、両の拳でポグルスの顔面を殴りつけようとする。 もの凄い勢いと威力の拳の連打だ。 当たれば、さすがのポグルスでも、ひとたまりもないはず。
タッ、ヒュッ、ズガガガガガァァァ―――
だがしかし……だ―――
この《宝影魔人》の強力な拳の連打を喰らってもポグルスは微動だにしない。 否、そもそも拳が当たっていない。 なんと《宝影魔人》の強力な拳の連打がポグルスの顔面を捉えておらず、その手前を虚しく殴り続けるだけ。 まるでバリヤーにでも護られてるポグルスを殴り続けるみたいだ。 その間も《宝影魔人》の拳の威力が、どんどんとポグルスに吸収されていく。
『!?』
タッ!
思わず《宝影魔人》が攻撃を中止して後方にジャンプして後退する。 それでもポグルスは微動だにせず、追い討ちもかけない。 ずっと静かに立っているだけ。
『…………』
この時になって、強力な中ボスであり、無表情・無感情であるはずの《宝影魔人》がポグルスに対して、激しく動揺・困惑・驚愕し始めた。 一方の仲間モンスターたちは《宝影魔人》とポグルスの戦闘が凄すぎて、手も足も出せず、ただ静かに見守っていた。




