271、色々判ってきた
●【No.271】●
ここはナギアノ王国のナギアノ・キングダム王宮内にある大広間。
ここに王様やマリアスラン姫や暗殺者の女性『テーラン』たちと、来客者であるヴァグドーや勇者アドーレや大魔女シャニルやイトリンたちがいる。
室内の中央に細長いテーブルがあって、イスが左右一列にたくさん並べられてる。 王様が一番奥の真ん中に座り、そのすぐ左右にお姫様と暗殺者の女性が座る。 そこからヴァグドーや勇者アドーレやイトリンたちが順番に座っている。
前回のヴァグドーたち一行が疑問に思ったことを暗殺者の女性『テーラン』が調べてきた。
まず最初にヴァグドーたち一行の冒険者ランクについてだ。
「はい、皆さんの冒険者ランクを調べてきました。」
「「「おお!」」」
「それで?」
「はい、え~~と、まずカグツチさんが―――」
ここで『テーラン』がヴァグドーたち一行の冒険者ランクについて説明する。
◎冒険者ランク(E→D→C→B→A→S)
01.カグツチ (女.剣士)→→C
02.ロンギルス (女.賢者)→→C
03.エクリバ (女.操師)→→C
04.ニーグルン (女.王女)→→C
05.ルドルス (男.将軍)→→B
06.アルベルス (男.賢者)→→C
07.アルラトス (女.魔女)→→C
08.シャニル (女.魔女)→→S
09.アドーレ (男.勇者)→→S
10.テミラルス (女.魔族)→→A
11.モモネ (女.勇者)→→B
12.オリンデルス(男.悪魔神)→A
13.イトリン (男.調理師)→E
14.ヴァグドー (男.冒険者)→?
だいたいの者がランクCまで上がってる。
その上でルドルス将軍と勇者見習いのモモネがランクBであり、魔族や悪魔神がランクAになってる。 さすがの勇者アドーレと大魔女シャニルはランクSまで上がってる。 さすがにイトリンだけはまだランクEのまま。 またヴァグドーだけがランクが?になってる。
「ふむ…」
「あれ、ランク?って…?」
「ランク?…ですか?」
「ちょっと待て!
なんでヴァグドーだけ…ランクが "?" なんだ?」
「はい、それが "ギルド冒険商" の本部であるギルド冒険商工会から問い合わせたところ、ヴァグドーさんに関して言えば、もう既にランクSを超越しており、一体どういう風にランクをつけた方がいいのか、ギルド冒険商工会の皆さんも判らないそうです。」
「…商工会…?」
「…商店街…?」
「ほーう、ギルド冒険商工会のう。」
「それならランクSでいいのでは?」
「はい、それは私も聞いたのですが、ヴァグドーさんの実績・活躍は、もう既にランクSを超越しているので、彼の場合…ランクSではないそうですよ。」
「なるほど、それでランク?ですか?
それだとランク無しってことですか?」
「はい、それも聞きましたけど、"ランク無し" ってことはないです。 なんと…ヴァグドーさんご自身がランクを決めてください…って言ってましたよ。」
「何っ、ワシが自分でランクを決めていいのか?」
「はい、そう言ってました。」
「「「おお!」」」
「ほーう、なるほどのう。」
「おいおい、マジかよ?」
なんと "ギルド冒険商" の本部がギルド冒険商工会と言うそうだ。 ただ "工会" だけを省いた形になる。 そのギルド冒険商工会がヴァグドーの果てしない実績・活躍に、遂についていけず、ランクのつけようがないほどだ。 ランクSを超越してるのでランクSではなく、ランク?となる。 それなのでヴァグドー自身がランクを決めてもらおうと思ってる。 本来ならランクSを超えた者など冒険者ランクが始まって以来いないので超えた者がランクを新たに決めることになる。
まさにランクSを超越した者の特権だ。
「なんと…ランクを自分で決めてよいのか?」
「はい、要するにギルド冒険商工会の皆さんではお手上げなので、完全にヴァグドーさんに丸投げした形になりますね。」
「「「………」」」
「ふむ、いいじゃろう。
ワシが決めてやろう。」
「はい、宜しくお願いします。」
「へぇ~、ランクを自分で決める…ねぇ~」
「さすがはヴァグドーさんですね」
「………」
「ふむ、決めたぞ。
ワシのランクをランクXにしてもらおうか。」
「ランクX…ですか?」
「………」
「ランクX…?」
「そうじゃ。 ランクXじゃ。」
「何故、ランクXなんです?」
「Xはバツにもなる。
本来はSが最高なのに、これを越えてしまったため、商工会のみんなもお手上げ。 つまり、もうランクが決められないので、ダメ(Χ)って意味じゃよ。」
「それは商工会の皆さんに対する当て付けですか?」
「ほっほっほっ、向こうが "何故" と聞かれたら、そう答えたらええぞ。」
「はい、判りました。
では早速、ギルド冒険商工会の皆さんに報告します。」
「ふむ…」
ここでヴァグドーのランクが決定した。
ヴァグドーの最新のランクがXとなる。
このランクXがヴァグドーのみのランクとなるけど、ヴァグドー並みの実績・活躍を見せれば、このランクXが与えられるそうだ。
最もヴァグドー並みに実績・活躍を見せる冒険者などいないと思うけど…。
次に『矢獄関』についてだ。
このナギアノ王国の東側にロートアンリルス砂漠があり、北側に『矢獄関』の建物がある。 東のロートアンリルス砂漠は果てしなく広く、一体何処から始まり何処で終わりなのか、よく判っていない。 北の『矢獄関』は大きな城壁みたいな関所の建物があるそうだ。 この『矢獄関』に近づく敵には、あらゆる場所・あらゆる方向から無数の矢が飛んでくるらしく、ほとんどの者はここには近づかないそうだ。 今では無人らしい。
これは確かに蜂の巣だな。
「―――と言う訳です」
「それで『矢獄関』…ねぇ~」
「なるほど、そういう場所なのか?」
「へぇ~、なかなか面白い所ですね?」
「えっ、そうですか?」
「やっぱり、そういう所なのか?」
「ふむ、今から行くのが楽しみじゃわい」
「そ、そうですか…?」
「………」
名前の由来が少しだけ判りかけてきた。
まさに矢の地獄である。
次に行く『矢獄関』は完全に無人なのに、一体どうやって無数の矢を飛ばしているのか、全く理解できていないのだ。 その謎も実際に行けば判るのか、今から楽しみなのだ。




