270、お調べしましょうか?
●【No.270】●
ここはナギアノ王国のナギアノ・キングダム王宮内にある大広間。
ここに王様やマリアスラン姫や暗殺者の女性『テーラン』たちと、来客者であるヴァグドーや勇者アドーレや大魔女シャニルやイトリンたちがいる。
室内の中央に細長いテーブルがあって、イスが左右一列にたくさん並べられてる。 王様が一番奥の真ん中に座り、そのすぐ左右にお姫様と暗殺者の女性が座る。 そこからヴァグドーや勇者アドーレやイトリンたちが順番に座っていく。
この王国でやる事を全て終えたヴァグドーたち一行が王様たちと雑談をする。
「なぁ…ヴァグドーよ。
ここまで来たら、もう無敵じゃな。」
「はい、ヴァグドー様は最強ですね。」
「はい、もはやヴァグドー様に勝てる者などいないでしょうね。」
「否、ワシはまだまだ無敵でも最強でもない。 まだまだ修業中の身じゃよ」
「………」
「なんと、それは謙遜ですかな?」
「えっ、これでまだまだ修業中なのですか?
まだ強くなられるんですか?」
「えっ、まだまだ無敵でも最強でもないのですか? まだ強くなりたいんですか?」
「………」
「ふむ、まだまだ強くなるつもりじゃよ。
強さに終わりなどないからの。 これからも強くなり続けるだけじゃ」
「…マジか?」
「さすがです。 ヴァグドーさん」
「ほーう、いやはや頭が上がらんな」
「へぇ~、飽くなき探求心ですね」
「凄いですね。
私たちも見習わないといけないですね。」
「ほっほっほっ、まだまだ若い者には負けんよ」
「「「………」」」
外見が20代なので勘違いしがちなのだが、実年齢が彼の場合100歳を超えている。 マリアスラン姫やテーランは勿論の事、王様でさえ…彼にとっては、まだまだ "若い者" なのかもしれない。
彼の発言に絶句・唖然とする一同だけど、王様が気を取り直して聞いてくる。
「それはそうと…ヴァグドーは冒険者ランクというモノを知っとるかね?」
「ああ、ちょくちょく聞くのう。 冒険者のランク付けみたいなモノなんじゃろ?」
「ふむ、冒険者の階級と強さを兼ね備えたモノじゃよ。 無論、ランクが高ければ高いほど、その者が凄いということじゃ。」
「ほーう、なるほどのう」
「「………」」
ここで冒険者ランクについて、少しだけ説明する。
冒険者ランクは、S・A・B・C・D・Eの六つに分かれている。
いわゆる冒険者の階級であり、E→D→C→B→A→Sの順番で強く偉くなる。
ここでは "ギルド冒険商" からの仕事の依頼や国王・王族からの仕事の依頼、または魔族討伐依頼などで活躍して、見事に依頼を達成すると、所定の "ギルド冒険商" や依頼した国王・王族からランクを上げてもらえる。 また上位魔族を討伐した時には、自動的にランクが上がってる場合もあり、いつの間にかランクが凄く上がってる場合もある。
このヴァグドーと言ったら、もはや説明不要の活躍・貢献をしており、今現在、彼のランクが一体どのぐらいまで上がっているのか、正直…誰にも想像できないのだ。 普通一般の冒険者ならランク上昇に一喜一憂するけど、やはりヴァグドーたちには、あまりランク付けを気にしていない。
「ふむ、冒険者ランクか…。 あまり興味ないのう。
アドーレやシャニルなんかは、どうなんじゃ?」
「ボクも冒険者ランクに興味ないので、今自分がどの辺りなのか、よく知りませんね。」
「私は昔のヤツが残っていれば "ランクB" ぐらいは上がってたはずよ。」
「ふっ、悪魔神に冒険者ランクなんてモノがあるのかね?」
「アタイも魔族だから知らねえ」
「………」
やはり彼らには興味がなかったようだ。
「そういえば、その冒険者ランクについて、ボクたちはよく知りませんよね?」
「そうね。
昔のヤツは当時の王様やマイカさんたちがよくやってくれたので、私もよくは知らないわね。」
「「「?」」」
「へぇ~、そうなんだぁ~」
「ちなみに、その冒険者ランクとやらは、一体どうやって調べればよいのじゃ?」
「それでしたら、私の方で皆さんの冒険者ランクを調べてきましょうか?」
「おお、そうか。 宜しく頼む」
「はい、判りました。」
興味がないと言いつつも、少しは気になる様子。
そこで暗殺者の女性『テーラン』が、そのヴァグドーたちの冒険者ランクを調べてくれるそうだ。 その為、しばらくはまだナギアノ王国に滞在する予定らしい。
今度は王様がヴァグドーに質問する。
「ところで…ヴァグドーたちは、次に何処へ向かうつもりなのじゃ?」
「おう、そうじゃな。 次は『矢獄関』という所を目指しておる。」
「「…『矢獄関』…?」」
思わず王様とお姫様が同時に聞き直した。
全くピンとこない。 どうやら聞き慣れない場所であり、二人が知らない所らしい。
「ワシも行ったことがないんで、よく解らんけど、大きな関所の建物らしい。 ワシはむしろ、こちらの方に興味があるのじゃ。」
「…関所…?」
「テーラン。 あなたは知りませんか?」
「申し訳ありません。 私も存じません」
「……なるほど、そうですか……」
「へぇ~、そうなんだぁ~」
「ふむ、行き先は判っておる。 実際にどういうモノなのか、今から楽しみじゃわい」
「なるほど、『矢獄関』のう」
━『矢獄関』━
名前の由来は不明。
一体どういうモノなのか、その詳細も不明。
建物としては、古代中国に存在する『関』と呼ばれる大きな建物を想像する。 主に外敵から自国の領土の侵攻を防ぐ為に建てられたモノらしいけど、その『矢獄関』も同じ部類のモノなのか? それとも―――
「変わった名前の建物ですね?」
「国……街……塔……洞窟……?
なんじゃ? よく解らんぞ…」
「ふむ、そうじゃな。 なんじゃろうな?」
「あの…もしよかったら、その『矢獄関』についても、私が調べましょうか?」
「おう、そうか。 ならば宜しく頼む」
「はい、判りました。」
ここでまた暗殺者の女性『テーラン』が、その『矢獄関』についても調べてくれるようだ。
どうやら次の目的地は国でも街でもなく、得体の知れない巨大な関所のようだ。 そこは一体どういう所なのか、今から行くのが楽しみな一行であった。
しかし、何故、『矢獄関』と言うのか…?




