269、イフレアの黄金の女神(ゴールド・ノルニル):3
●【No.269】●
遂にイフレアの黄金の女神。
勇者・英雄の女神ヘラクレルを倒すことに成功した。
あの勇者アドーレが人知を超えた女神を倒したのである。
ただし、中身のない空洞の黄金の鎧兜だけだけど。
理由や場所は解らないけど、この鎧だけ何処かで遠隔操作していたと思われる。
これで本当に勝利したのか、どうかは疑問符が付くけれど、とにかく勝利したらしい。
※[ちなみに伝説の皇剣【消滅罪の剣】は既にヴァグドーに返却済]
その黄金の鎧兜も勝者・勇者アドーレの身体に装着されてる。
「へぇ~、なかなか凄い鎧ですねぇ~」
「その鎧…前よりカッコよくないか?」
「……そうですか?」
「確かに、今まで装備していた鎧とは、明らかに違うな」
「ええ、輝きが違うわ。 もっと優雅に…もっと気品に満ち溢れてるわ。」
「……そうですか?」
確かに、今まで着用していた黄金の鎧兜とは一線を画しておる。 以前のモノよりも頑丈そうだし、防御力も高そうじゃ。 しかし、無くなった物もある。 彼の代名詞でもある八本の黄金の剣じゃ。 彼の能力を最大限まで引き出せる遠隔操作全方位同時攻撃が、これで出来なくなったワケじゃ。 これはまた少し残念じゃな。
すると、またどこからともなく謎の声が聞こえてくる。
『なかなか似合ってますよ。 しかし、やはりあなたには…アレも必要ですね?』
「アレ?」
「……?」
「アレって…何?」
「……まさか―――」
『いいでしょう。 私を倒したご褒美として、特殊アイテムをアレにしましょう。』
「「「?」」」
「……」
するとワシらの目の前に、大きな赤い宝箱が突然出現した。 おそらく何処か遠くにおる女神が出現させたのじゃろう。 いやはや…さすがは女神。 もはや何でもアリじゃな。
「「「おおっ」」」
「ほ~う」
大きな赤い宝箱のフタが自動的に開いて、中を覗いてみると剣が八本入ってた。
やはり、アレとは…コレか?
だが…ただの剣ではない。
確かに柄・鍔の部分は黄金だけど、刀身は無色透明になってる。
この剣は特殊な能力と強靭な硬度で出来たなかなかの業物である。 当然ながら勇者アドーレしか装備できない品物である。
ジャッキィーーン!
勇者アドーレが装着している黄金の鎧兜の所々に、新たに入手した八本の剣が自動的に装備された。 刃の部分がクリスタルみたいになっていて、それが黄金の鎧兜の中に入り、実際には黄金の鍔・柄の部分だけが外部に出ている感じだ。
「おおっ!」
「へぇ~♪」
「なんと!」
「ほーう!」
『見事にパワーアップしましたね。
おそらく『イフレアの黄金の女神』と『レグリエスの剣』を装備してるのは、世界広しといえども勇者アドーレ…あなただけでしょうか?』
「ボクだけ…?」
「…『レグリエスの剣』…?」
『はい、女神の剣『レグリエスの剣』です』
「…女神の剣…」
『はい、とても似合ってますよ。』
「そうですか? ありがとうございます。」
確かに…もの凄くパワーアップしておる。
もし…この状態で、あの決勝戦を闘っておったら、いかなる戦況となっておったじゃろうか? 勝敗は別として、もっと楽しい戦闘ができたかもしれんな? まぁよいわ。
♪[勇者アドーレは黄金の鎧兜『イフレアの黄金の女神』とクリスタル女神剣『レグリエスの剣』を手に入れた]♪
『それでは皆さん、さようならぁ~』
「ちょっと待て! これで終わりなのか?
ワシはまだ闘っておらんぞ!」
『残念ながら、今回はこれにて終了です。
もしまた闘いたいならば、まず『幻の強者の塔』を見つけてください。』
「何っ!? まだあるのかっ!?」
『はい、世界の至る所にあると思いますので、また是非探してみてください。』
「そこにも女神がおるのか?」
『……居るかもしれませんね…』
「おっ!?」
「あっ!?」
「むっ!?」
「あらぁ~?」
『ではでは、さようならぁ~~』
「!」
そう言うと、さっきの謎の声もあの妙な気配もこの不思議な塔も全部消えて、ワシらは元の場所に戻された。 目の前には、待機中のカグツチやロンギルスやナギアノ国王やマリアスラン姫たちがいた。 ワシらの突然の帰還に、少し驚いた様子じゃった。
「「「「!」」」」
「ちっ、戻されたか…」
「なんだか…まるでヴァグドーさんとの戦闘を避けるように、そそくさと帰ってしまいましたね? あの女神…」
「あぁ~、私もそんな印象を受けたわぁ~」
「ふっ、あまりヴァグドーとは闘いたくないんだろ?」
「むぅ~、また見つけてやるぞ!
『幻の強者の塔』を!」
まさかの女神からの戦闘拒否?
仮にまた『幻の強者の塔』を見つけても、果たしてヴァグドーと闘いたい女神がいるのか?
その後でワシらが (主に勇者アドーレや悪魔神オリンデルスが) 塔の内部で一体何が起きたのか、みんなに説明しておる。 特にナギアノ国王やマリアスラン姫が驚いてた。 塔の内部では "遠隔操作の黄金の鎧兜" とはいえ、女神の力に勝った勇者アドーレに羨望の眼差しが向けられておる。 一方のワシは残念そうな顔をする。 ワシも女神と戦いたかった…のじゃ。
「おおっ、そんなことがありましたか!」
「やっぱり、さすがは勇者アドーレ様ですね!」
「へぇ~、あの女神をねぇ~」
「しかし、その新しい鎧は前の鎧よりもカッコいいですよね?」
「……」
「そうですか? ありがとうございます。」
やっぱり、カッコいいと思うか?
彼女も良い眼をしておる。
まだまだ話は尽きないけど、一応はこれにて『幻の強者の塔』については終わりです。 ちなみに『幻の強者の塔』はまだまだ世界の何処かにたくさんあって、その中には女神が待ち構えているかもしれません。
こうしてヴァグドーたち一行は《悪股の大蛇》と『幻の強者の塔』の捜索も旅の目的のひとつに組み込むことになった。
〇黄金の鎧兜。
『イフレアの黄金の女神』
●守備力:170
以前のモノよりも、さらに全身を覆った形状の鎧になる。
物理的攻撃と魔法攻撃に対する防御力が凄く高く、弱小攻撃魔法だったら余裕でハネ返せる。
〇八本の女神の剣。
『レグリエスの剣』
●攻撃力:150
刀身がクリスタル、鍔・柄の部分が黄金でできた剣が八本もある。
刀身の強度が上がり、また刃にはある程度の魔力が蓄えてあって、鋭い斬撃を喰らわせる。




