267、イフレアの黄金の女神(ゴールド・ノルニル):1
●【No.267】●
ヴァグドーたち一行やナギアノ国王とマリアスラン姫たちは『幻の強者の塔』の入口の目の前に立つ。 もっとも塔が見えているのは、ヴァグドーと勇者アドーレと大魔女シャニルと悪魔神オリンデルスと上位魔族テミラルスの五人だけであり、他の者たちには何も見えてない。
「ふむ、なるほど…」
「これはこれは…」
「へぇ~♪」
「ふっ…」
ヴァグドーたち塔が見える者は塔を見上げてる。
「「「「……」」」」
他の者たちには目の前に塔など見えないので、ヴァグドーたち見える者の反応を見るしかない。
「よし、テミラルスよ。
お前さんはここに残っておれ。 よいか?」
「ああ、わかったよ。 ヴァグドー」
そこでヴァグドーと勇者アドーレと大魔女シャニルと悪魔神オリンデルスの四人が塔の内部に侵入する。
「よし、行くぞ!」
「はい、判りました」
「は~い、ヴァグドーちゃん♪」
「ああ、わかった」
ヴァグドーたち四人が前へ進むと、途端に彼らの姿が消えた。
「「「「えっ!!?
消えた…??」」」」
それを見て、カグツチやロンギルスに王様やマリアスラン姫たちが驚く。
「中に侵入したようだね」
留守番のテミラルスが静かに語る。
ヴァグドーたち『天衣無縫』の四人が『幻の強者の塔』の侵入に成功した。
内部に侵入して驚いた。
内部構造は実に単純。
八角形の何もない広い空間だけ。
難関な迷宮とか階層・階段とか宝箱や魔物とか侵入者を拒む罠とか、そういうものは一切なく、ただの八角形の広い空間・屋上まで何もない突き抜け。 その広い空間の中央には、黄金の鎧兜がひとつだけ立ってる。 これだけ。
てっきりもっと複雑怪奇な迷宮になってて、十二階・十三階とか何階にも何層にもなってて、強力な魔物とか豪華な宝箱とか巧妙な罠とか想像してたけど、ホントに何もない広い空間のみ。 まさしく単純イズ最高ってヤツか? だが中央に立ってる黄金の鎧兜がまた無気味。 あの鎧兜……何かあるのか…?
「「「「……」」」」
ワシらが何もない広い空間の中央付近へ歩くと、どこからともなく謎の声が聞こえる。
『よく来ました。 強き者よ』
「ん?」
「一体どこから?」
「あらぁ~♪」
「ちっ!」
『私の名前はイフレアの黄金の女神。
私と闘いたい者は前へ』
「!」
「ほーう、もしかして…あの鎧と闘うのか…?」
「……」
「ヴァグドーさん、次はこのボクがお相手します」
「ほーう、アドーレが行くか?」
「はい、あの黄金の鎧が相手なら、ボクの方が相応しいでしょう。」
「ふむ、そうか。
ならば…存分に相手をするがいい」
「はい、ありがとうございます。
ヴァグドーさん」
そこでボクが前に出て、黄金の鎧兜の目の前へ行く。
「アドーレよ、これを貸そう」
「?」
そう言ってヴァグドーさんが伝説の皇剣【消滅罪の剣】をボクに投げて、後ろを振り向いたボクが受け取る。
「そいつを使いこなしてみせよ」
「はい、ありがとうございます。
ヴァグドーさん」
ボクはヴァグドーさんに向かって一礼すると、また前へ向く。
『それでは始めます。
覚悟はよろしいですね?』
「はい、いつでもどうぞ」
この時、ボクは戦闘準備をまだ行わず、ヴァグドーさんみたいに立ってるだけ。
━・ 勇者アドーレ.VS.黄金の鎧兜 "イフレアの黄金の女神" ・━
黄金の鎧兜が右手を前に出して、ボクの方に向けて高速衝撃波を繰り出す。
ズドォン!
だがボクは微動だにしない。
あまり通用しない。
『……』
今度は左手も前に出して、ボクの方に向けて高速衝撃波を繰り出す。
ズドォン!
だけどボクは微動だにしない。
やっぱり通用しない。
『……』
この時、両手の掌から波紋のような模様が無数に浮かび上がる。
ズババババァァァーーーーッ!!
その無数の波紋模様の高速衝撃波が、ボクに向かって放たれた。
ズバババァァーーーッ、カンカンカンカンカンァァァ―――
八本の黄金の剣を全部防御にまわして、ボクの前面に "剣の壁" を作り出し、自分に向かってくる無数の波紋模様の高速衝撃波を全て防ぐ。
『……』
「今の攻撃は防がせてもらいましたよ。」
『なるほど、その剣で壁を作り、私の攻撃を防ぐために、最初の段階では動かなかったのですね?』
「未知の敵には先手を打たすのも戦略のひとつです。」
『しかし、私の波紋はまだ防げていません』
「?」
バキバキバキバキバキバキィィィ―――
なんと無数の波紋模様の高速衝撃波が、八人の黄金の剣を次々とへし折り粉々にする。
「!」
『私の "エフェクト・ハーキュリーズ・シュラウド" からは逃れられませんよ。』
「くっ!」
八人の黄金の剣に黄金の鎧が無数の波紋模様の高速衝撃波 "エフェクト・ハーキュリーズ・シュラウド" によって粉々に砕かれる。 あの黄金の剣と黄金の鎧は模造品とはいえ、これまで一度も破壊されたり傷つけたりされたことがなかった。 これまでもあの剣で敵を倒したり、あの鎧で自分の身を守ったりしてきた。 あのヴァグドーさんとの決勝戦でさえ、破壊されなかった黄金の剣と鎧が完全に破壊された。
[これは…勇者アドーレ初のピンチか…?]
『あのような剣と鎧で、今までよく闘ってきましたね?
しかし、もう寿命のようでした』
「… "エフェクト・ハーキュリーズ・シュラウド" …」
「「「……」」」
あのアドーレの身体が傷だらけとなる。
でも、そんな程度では倒れない。
その様子を後ろからヴァグドーさんたちがただ無言で見つめる。
そこでワシがマリアスラン姫から聞いた昔話を思い出す。
なるほど、こういうことか…。
確かに、相手が女神では…生きて帰れんかもしれん。
今のアドーレはもはや、あのイフレアの黄金の女神と…同等・対等…か?
もう強力な魔物や上位の魔族とかでは…相手にならん…か?
故にアドーレが今もっとも強いとしている者は悪魔神か女神のどちらか…?
まさにイフレアの黄金の女神の一人が相手となったか…?
これはワシも闘いたかったのう。
少し…残念じゃわい。
ワシが考えてる最中でも、アドーレとイフレアの黄金の女神の闘いは続く。
『しかし、驚きました。
私の "エフェクト・ハーキュリーズ・シュラウド" をマトモに受けて生きて立ち続けるとは…。
流石というより驚愕ですよ…』
「それはありがとうございます。
ところであなたの名前は、イフレアの黄金の女神というのですか?」
『いいえ、私の名前はヘラクレス。
あなたと同じ勇者・英雄の女神ヘラクレスです。』
「ヘラクレス……なるほど、ハーキュリーズとは、そういう意味でしたか…」
なんと今回のボクの相手が、あのイフレアの黄金の女神の一人―――勇者・英雄の女神ヘラクレスと闘うことなった。
おそらく今年はこれで終わりです。
今年もどうもありがとうございます。
それでは皆さん、来年も良いお年を。
あくまで予定だけど、この話で今年は終了だと思います。
来年も宜しくお願いします。
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