264、最凶なる者
●【No.264】●
ここナギアノ王国の中央部にある王都『マリアスラン』のナギアノ・キングダム王宮内にある『玉座の間』にて。
この玉座の間の奥にある玉座に座る国王とマリアスラン姫。 その手前にはヴァグドーたち一行が立ってる。 そんな王様・姫様とヴァグドーたち一行は話し続けた。
そこに衛兵が慌ててヴァグドーたちの横を通過して焦りながら王の御前に跪いて報告する。
「も、申し上げます。
ただいま物見の知らせによりますと、北東より巨大な蛇の化物がまっすぐこちらに向かって来てるそうです。」
「「「「!」」」」
「何っ!!?」
「えっ!!?」
「はい、とても巨大な蛇の化物が何を思ったのか、こちらの方に向かって突進しております。 ただいま兵士たちを集めて迎撃するよう準備を進めております。」
「…ちっ!」
「巨大な蛇の化物ですか…」
「むむむっ!」
「ほーう…」
「……」
何っ……巨大な蛇の化物……だと―――もしやアレか?
まさか……もう現れたのか―――アイツが―――
などと悪魔神オリンデルスが考え込むと、すぐにヴァグドーが言った。
「ならば早速、このワシが行って、その巨大な蛇の化物とやらを退治してやろうか?」
「おお、行ってくれるか?
ヴァグドーよ、そなたが行ってくれれば百人力だ。 頼むぞ」
「おお、任せておけ。 行くぞ、みんな」
「はい、判りました。 ヴァグドーさん」
「了解ぃ~、ヴァグドーちゃん~」
「ああ、わかった。 ヴァグドーよ」
「よし、行くぜ! ヴァグドー!」
「ふむ」
そう言ってヴァグドーたち一行が踵を返して振り向いて、このまま玉座の間の扉まで行って、その扉を開けて出ていく。
ワシらが玉座の間を出て、王宮を出て、王都を出て、王国を出て、北東の方にある草原を見ると、巨大な灰色の蛇がまっすぐ猛スピードで、こちらに向かってくるのが肉眼でもわかる。
足はない。 頭はひとつ。 蛇特有の動きで前進しており、口から細く赤い舌をチロチロ動かし、大きく鋭い白い牙を二本剥き出しにしてる。 もしかして、アレが例のヤツか?
「何っ…アレッ!?」
「お、大きいっ!?」
「アレ…ヤバくないっ!?」
やっぱりカグツチたちも驚く。
ワシがオリンデルスに聞く。
(ちっ、頭がひとつだけか…)
「アレがお前さんの言う "悪股の大蛇" なのか?」
「ああ、そうだ。 間違いない。
アレが "悪股の大蛇" だ。 頭はひとつだけだがな?」
「?」
「そうか、アレがか…」
「なるほど、確かにかなり強そうですね?」
「なんかヤバくない? アレ」
「ちっ、所詮は巨大な蛇…。
ヴァグドーの相手じゃないよ」
「……」
「さて、まずはワシが相手になろう。
もし、ワシが殺られたら、あとは頼むぞ。 みんな」
「はい、判りました。 ヴァグドーさん」
「ええ、わかったわ。 ヴァグドーちゃん」
「相変わらずだな。
まぁ…お前が殺られるなど、ありはしないだろうけどな。」
「ではキミは兵を引かせて、国の守りに専念させろ。」
「はっ、判りました。」
オリンデルスが近くにいた兵士の一人に指示を出し、前に出ていた討伐隊をすぐに後ろに下がらせ、今度は護衛隊となって、自らの王国を守護する。
今度はワシが一人で突進する "悪股の大蛇" に向かって走り出す。
タッタッタッタッタッタッ!
また "悪股の大蛇" も走ってくるワシに向かって突進する。
ここで向かい合う形で、ワシと "悪股の大蛇" が急接近する。
すると突進しながら "悪股の大蛇" が口から炎を吐いて、ワシのことを焼き尽くそうとする。 その炎をワシも走りながら左腕一本で横に振り抜いて弾き飛ばす。
ゴゴゴゴゴォォォーーーーッ!
「ちぃっ、甘いわ!」
バキャッ!
!!?
それを見た "悪股の大蛇" が思わず驚愕して、意外にも突進を止めた。 普通はあり得ないこと、自分の吐いた炎を弾き飛ばすなど。 だが…これでアヤツの動きを止めてやったぞ。 ワシの方も "悪股の大蛇" の目の前へ来たら止まる。
《悪股の大蛇》[闘壱頭]
〇レベル:400
●容姿:巨大な灰色の鱗をした大蛇。
◎攻撃方法:口から炎を吐く。 猛毒の牙で穿つ。 尾を振り回す。
再度《悪股の大蛇》が口から炎を吐く。
ゴゴゴゴゴォォォーーーーッ!
今度は回避せず、マトモに喰らうワシ。
「ふん、同じことじゃ」
!!?
自分の炎をマトモに喰らって、灰にもならずに生き残るなど、まず絶対にあり得ない。 だけど…自分の目の前にいる人間はまるで何事もなかったようにピンピンしてる。 これにはさすがの《悪股の大蛇》も驚愕する以外にない。
何しろ、自分の炎があんな人間ごときに弾き飛ばされたり、回避もせずに耐え抜かれたり、されたことなど、一度もなかったからだ。 今までの人間とは…明らかに違う。
シャアアアアアァァァーーーーッ!?
恐怖を感じ始めた《悪股の大蛇》が遂に大きな口を開けて、その大きく鋭い二本の白い牙でワシの両肩に噛みついた。
ガブゥッ、グチャッ、プシュゥゥゥッ!
「ほーう、なるほどのう…」
確かに噛まれたはず…じゃが平気でいるワシ。
ガァッ!
「「「「あっ!?」」」」
それを見たロンギルスたちが驚く。
いかにワシの強靭で無敵な肉体をもってしても、さすがは《悪股の大蛇》の猛毒の牙。 ワシの両肩を簡単に穿ち、両肩の傷口から赤い鮮血が吹き出す。 だけど、そんなワシが血で濡れた両手で、あの大きく鋭い二本の白い牙をしっかり掴み、もはや離さない。
「ふん!」
バキィッ!
シャアアアアアァァァーーーーッ!?
あの大きく鋭い白い牙を二本ともワシの両手で切断した。 両肩に傷を負って血を流し、なおかつ猛毒が全身に回っているはずなのに、未だにワシの力は衰えておらず、最強無双の肉体を維持しておる。 アヤツもまさか自分の自慢の牙を折られるなど、想定しておらんじゃろうて。
まさしく "肉を切らせて骨を断つ" というヤツか?
「「「「えっ!?」」」」
それを見たエクリバたちがまた驚く。
「ふふふ、久しぶりに傷を負ったが、まだまだこれからじゃよ。」
本当に久しいのう。
ここまでの傷など、いつくらいか…? 思わずワシにも赤い血が流れとることを忘れてしまいそうじゃわい。 じゃが―――
!!?
すぐにワシの両肩の傷がどんどん塞がり、大量に流れたはずの赤い鮮血もどんどん両肩の傷口の中に入って戻る。 しかも、全身に猛毒が回っているはずなのに、まるで何事もないように立っておる。 あっという間に元の戦う前の状態に戻るワシ。
シャアアアアアァァァーーーーッ!?
それを見てアヤツが驚愕する。
「「「「おおっ!?」」」」
また大魔女シャニルたちも驚く。
ブゥーン、バシィッ、ザザッ!
焦った《悪股の大蛇》が慌てて尾を振り回し、ワシの方へ向けて攻撃する。 ワシは向かってくる尾を両手で受け止め踏み留まる。 じゃが…あの《悪股の大蛇》がトチ狂うのも仕方がない。 何しろ、自分の牙が簡単に折られてしまう。 それに相手の人間の両肩の傷がすぐに回復してしまう。 おまけに自分の毒も全く通じないからじゃ。
「ほっほっほっ、行くぞ!
そりゃぁあああああぁーーーーっ!!」
!!?
ワシが尾を掴んで五回転ぐらい、あの巨大な《悪股の大蛇》を振り回すと、このままアヤツを元来た道へ投げ飛ばす。
クルクルクルクル―――ブゥーン、タッ!
「「「「嘘っ!?」」」」
それを見てニーグルン姫たちがまた驚く。
続けてワシもアヤツを追うように飛ぶ。




