09、イトリンのステータスを確認
〇【No.009】〇
戦闘担当のヴァグドーさんたちが王宮の「玉座の間」にいると思われる敵の討伐へ向かう為、この小さい部屋を出ていった。
この小さい部屋に、お姫様が二人いる。
一人目はニーグルン姫様。 彼女もスゴく美人だけど、残念ながらあんまりときめかないようだ。 そのニーグルン姫様もヴァグドーさんのことが好きらしい。
もう一人はマリアスラン姫様。 俺がラーメン以外でときめいてしまった絶世の美女であり、俺が一目惚れしてしまった姫だ。
━・ー●ー・━
この部屋では食事とか、一体どうしてるんだろうか?
こんな部屋じゃぁロクに料理も出来ないだろう?
部屋の片隅にある椅子に座り、考える俺。
この部屋では食料を調達するのも大変そうだけど、ここの兵士たちが食事を持って来るのかな? これが王族が食べる料理なのか? でも、それは仕方ないことだ。 こんな所では―――
この王宮の調理場も、モンスターどもに盗られてしまい、今まで調理していた料理人も逃げてしまい、マトモな料理が作れないでいる。
それを見かねた兵士や暗殺者の女性たちが、王様やお姫様の不憫を苦慮している。
だけど王様もお姫様も文句は言わない。 現在の状況をよく理解してるからだ。 あの強力モンスターどもがいなくなれば、また元の生活に戻れるだろう。 だから、それまでしばらく我慢するしかないのだ。
気の毒だけど、こればかりはヴァグドーさんたちに任せるしかない。 俺には戦闘など出来ないのだから。
━・ー●ー・━
椅子に座る俺の目の前に、ニーグルン姫様がやって来て俺に話しかける。
「あのぉ~、イトリンさん」
「はい、何でしょうか? 姫様」
「また、あのチャーハンが食べたいのですけど…」
「はい、いいですよ」
「では宜しくお願いします。 イトリンさん」
「!!?」
そんな話を聞いた暗殺者の女性が、マリアスラン姫様に小声で耳打ちして、今度は俺の目の前・ニーグルン姫様の隣へやって来た。
「あのぁ~、料理って、ここでも作れるんですか? イトリンさん」
「えっ、ええ…調理器具や食材や食器は、俺が持ってますんで、料理するスペースさえあれば、一応何処でも…」
「す、凄い!!」
「……はぁ?」
「それでは、ぜひとも王様やお姫様にも作って頂けますか? イトリンさん」
「はい、別に構いませんよ」
「どうもありがとうございます!」
そう言って俺が立ち上がる。 部屋の片隅のスペースを利用して、調理器具・食材・食器など、チャーハン作りに必要なモノを『アイテム収納ボックス』から取り出して、すぐに調理する。
もう既に何度も作っているので、さすがに手際よく、何人分だろうと約5分くらいで、すぐにチャーハンが完成した。
小さい部屋のテーブルの上に、ここにいる人数分のチャーハンを置いて、テーブルには王様やお姫様や暗殺者の女性たちの他に、ニーグルン姫様やルドルス将軍やモモネちゃんたちも椅子に座る。
「どうぞ、召し上がれ」
「「「いただきます」」」
お腹をすかせてチャーハンを食べるニーグルン姫様やルドルス将軍たちからは、相変わらず「美味しい」と絶賛される。
そんな中、お姫様が俺に問いかけた。
「あのぁ~、これは……?」
「はい、チャーハンです」
「……チャーハン……?」
「はい、姫様。 このレンゲというモノで、チャーハンを掬い上げて―――」
隣に座る暗殺者の女性が、お姫様に食べ方を教える。
お姫様が暗殺者の女性の言われた通りに、チャーハンを食べてみる。
するとここで―――
「どうですか? 姫様」
「お、美味しい……です!」
「こ、これは……うまい!」
俺が作ったチャーハンを食べた王様やお姫様からも、この未知の食べ物に「美味しい」と驚愕・絶賛してくれた。 まずチャーハンをマズイと言うヤツも、あまりいないだろうけどね。
━・ー●ー・━
あのナギアノ王国のお姫様『マリアスラン』が俺の作ったチャーハンを食べてる。
「はい、美味しいですね? 姫様」
「凄く良い味ですよ、この料理!」
「ああ、味のバランスがいいというか、なかなかうまいぞ! この料理」
俺の作ったチャーハンを美味しそうに食べてる王様とお姫様は、この世界には存在しないハズの不思議な食べ物を存分に堪能する。
するとここで王様が俺に話しかけた。
「君は料理人なのか?」
「いいえ、違います。 王様」
「―――ん? 違う?」
「えっ、違うのですか? イトリン殿」
「はい、俺はただの冒険者であって、正式に料理人ではありません。」
「そ、そうなのですか?」
「いや、そんなハズは―――」
王様とお姫様がお互いに顔を見合わせる。
「正直いって、異世界に来てからまだ日も浅く、ここでの決まり事とかシステムとかいまいちよく解りません。 なので…まだまだただの冒険者だと思われます。」
「「………」」
「もし料理人になる為に、何か試験とか資格とか必要ならば、それを受けて合格しないといけないですよね?」
そこで王様が俺の問いに答えた。
「いや、料理人になるのに試験とか資格とかはない。 ちなみに "ギルド冒険商" に行き、職業を希望するところに "料理人" を希望すれば、いつでも君は料理人となれるハズだ。」
「えっ、そうなのですか? そんな単純な作業で……?」
そこに暗殺者の女性が王様の問いの答えに付け加える形で答えた。
「はい、その通りです。 ですが…イトリン様のここでの身分の手続きは、もう既に終了しております。」
「えっ、そうなの?」
「はい、ヴァグドー様がイトリン様のお名前登録の際に、もう既にイトリン様の身分とステータスが決定されております。 ちなみに名前以外でしたら、いつでも変更可能です。」
「へぇ~、そうなのかぁ~。 ちなみに俺のステータスって、どうやって見れます?」
「はい、普通は "ギルド冒険商" のステータスを見る専用機があるので、そこで―――」
そこに俺があるモノに気がつき、暗殺者の女性の説明を遮った。
「ちょっと待って! これは―――」
「……はい?」
「これは―――もしかして……」
俺の視界の左下端に「★」マークがある。
これはまだ押してないぞ。 これはもしかして俺のステータスが表示されるんじゃないのか? 試しに、その「★」マークを目で押してみた。
俺の目の前に、"イトリン" のステータスが表示された。
●・●・●
イトリン :調理師
レベル : 1
耐久力 : 18
魔法力 : 0
―――――――――
攻撃力 : 5
守備力 : 7
機動力 : 6
叡知力 : 9
幸運力 : 36
―――――――――
絶望力 :100
能力 :『アイテム収納ボックス』【ラッキーボーヤ】
●・●・●
やっぱりこれか。
「なんだ、これは?」
これが現在の俺のステータスなのか? 基本的に戦闘してないので、まだ経験値も得られず、未だにレベル1だということは…よくわかった。 だけど…幸運力だけが少し高くないか?
あと能力欄にある【ラッキーボーヤ】って、一体何なんだ?
とはいえ、これでようやく自分のステータスを確認することができた。
これなら、いちいち "ギルド冒険商" まで行かずに済むし、俺のステータスは常時自動更新されてるみたいで、結構便利だぞ。
あとはヴァグドーさんたちの帰りを待つだけだ。
今回もイトリン回です。
タイトル『糸井久信 ~絶望老人が異世界転生をしたら、外伝~』の別ヴァージョンを追体験。 今回も内容が一変されてる。 見比べてお楽しみ下さい。
それとブクマ・感想・評価・いいね等ありましたら、是非宜しくお願いします。