07、緊急秘密会議
〇【No.007】〇
そこでヴァグドーさんは暗殺者の女性を小屋の中に残し、俺と一緒に森の中に入った。
その森の一番奥に、木で造った大型の建物があって、それがヴァグドーさんたちの『秘密基地』になってる。
この『秘密基地』とは、ヴァグドーさんと仲間の皆さん、及び俺のようなヴァグドーさんに認められた者にしか、立ち入ることができない神聖な場所であり、いわば聖域ともいえる場所・・・らしい。
またこの『秘密基地』の周辺には弱小雑魚モンスターとはいえ、なかなかの数のモンスターがいるけど、とても怖くて手が出せないでいる。 この森に棲みつくモンスターたちは、基本的にヴァグドーさんや勇者アドーレさんや悪魔神オリンデルスさんたちの圧倒的な力と恐怖で心酔しており、本能的に「戦っては絶対に駄目だ!」ということで認識している。 つまりヴァグドーさんたちが造ったこの『秘密基地』を森に棲みつくモンスターたちが守ってる形になってる。
俺とヴァグドーさんが、その『秘密基地』の目の前まで到着して中に入る。
この『秘密基地』の中には、ヴァグドーさんの仲間であるヴァグドーたち一行の皆さんがいる。
まずヴァグドーさんに心酔しており、特に好意を持ってる四人娘。
01.カグツチさん
02.ロンギルスさん
03.エクリバさん
04.ニーグルンさん
次にヴァグドーさんのことが気に入り、これまでも同行してきた者たち。
05.上位魔族のテミラルスさん
06.勇者アドーレさん
07.大魔女シャニルさん
08.悪魔神オリンデルスさん
09.勇者見習いのモモネさん
続けてニーグルンさんは、お姫様なので従者がいる。
それがアーサンティラル王国の護衛将軍として、
10.ルドルスさん
また大魔女シャニルさんにも従者がいる。
それがシャニルさんのお弟子さんの、
11.アルベルスくん
12.アルラトスちゃん
以上の十二人がそうである。
あのヴァグドーさんを中心として色んな人達がヴァグドーさんの仲間になる。
現在は昼食時間だ。 ヴァグドーさんの仲間たちは俺の作ったカレーライスを食べてた。
市販のカレーライスだったら誰でも作れる。
カレーのルーは『アイテム』にあったので、それを使う。 あとはニンジン・ジャガイモ・豚肉のチャーシューをある程度の大きさに切って、加熱させたお鍋の中にお水とカレーのルーを入れて、少し煮込んだら、切っておいたニンジン・ジャガイモ・豚肉のチャーシューも入れて、よくかき混ぜる。
コトコトいい感じに煮込んできたら、あとは用意しておいたご飯を白いお皿の上にのせて、煮込んだカレーものせれば完成だ。
その味は普通に美味しい程度の味だ。
全員が俺の作ったカレーライスを食べ終わると、すぐにヴァグドーさんが口を開いた。
「さて、みんなに相談したいことがあるんじゃが……」
もう既に相談内容を知ってる俺も含めて、みんなが静かに真剣にヴァグドーさんの話を聞いた。
なんとナギアノ王国の国王より、あの大魔王イザベリュータ討伐を依頼されたヴァグドーさんたち。
聞けばヴァグドーさんたちは既に世界中の王族・貴族から、その名が知られており、結構有名なんだそうだ。 世界中の王様からの信頼も厚いみたいだ。
その上、ヴァグドーさんには伝説の勇者アドーレさんに大魔女シャニルさんに悪魔神オリンデルスさんといった幅広い仲間がいて、みんなが頼りにしてるそうだ。 なるほど、これだけ凄ければ誰でも頼りたくなるよね?
でもヴァグドーさんたちは基本的にそういう仕事の依頼は受けない。 そもそもそのような仕事をしていない。 ヴァグドーさんたちは完全に自由主義者であり、興味を持った事しかしないそうだ。
だけど、今度の敵は大魔王イザベリュータだ。 多少なりとも興味を持ち始めたか?
そのヴァグドーさんが今回の仕事の依頼内容を話し始めた。
「実は王様から、大魔王イザベリュータとやらを討伐せよ、との要請が来たんじゃ。 その大魔王イザベリュータとやらは、何か悪いことでもしたのか?」
「これはあくまで噂程度の話なんですけど、なんでもここ最近、可愛い童顔の男の子ばかりを狙って、部下の魔族たちに誘拐させてるそうで、そんな話を聞いた覚えがありますね。」
「あっ、私も聞いたことがあります。」
「ほーう、それは一体何の為に…?」
「さぁ…それはよく解りませんけど…?」
「私もよく解りませんね。」
「はい、その噂なら、私も聞きました。 近隣の町や村では、ご両親が自分の息子を魔族にさらわれた、と嘆いているそうです。 王国側も看過できない状態だそうです。」
「ほーう、そうなのか?」
「それは悪質ですね」
「子供を誘拐ですか?」
「言っておくけど、アタシのところの大魔王様は、そんなコスい真似はしないぞ。 第一、人間の男の子なんてさらって、一体何の得があるんだ?」
「確かに、その通りじゃ」
「はい、全く目的が解りませんね」
「あらぁ~、目的ならわかるわよぉ~♪ その大魔王ちゃんは美少女なのよねぇ~♪ だから…もしかしたら、可愛い童顔の男の子をさらって、奴隷のように侍らせてるんじゃぁないかなぁ~♪」
「恥ずかしながら、私も今そう思ってしまった……ハーレムだ……」
「もし、それが本当なら、こっちの大魔王様は、やっぱりヤベェぞ!」
「とにかく、その大魔王イザベリュータをなんとかしないといけないよな?」
「………」
「そうでしょうね。
なんとかしないと、もしかしたら、この国の可愛い童顔の男の子が全員、その大魔王イザベリュータに持っていかれる可能性がありますからね。」
「それもヤベェ話だ」
「ふむ、なるほどのう。
やっぱり大魔王イザベリュータを討伐せねばなるまいな。その誘拐されたという男の子たちを救出せねばなるまいし、大魔王イザベリュータとやらが、どの程度の実力なのか確認したいからのう。」
「ヴァグドーさんが行くのであれば、ボクも問題なく行きますよ。 地上の正義と平和の為に」
「あらぁ~、相変わらずお堅い勇者様よねぇ~♪ じゃあ、私もボクちゃんや坊やちゃんたちの為に行きますか♪」
「子供などはどうでもいいが、大魔王イザベリュータには一度会っておかないとな。」
「では、今回の仕事の依頼は受けますか?
ヴァグドー殿」
「ふむ、皆の者……反対する者は……いないな……?」
「「「「………」」」」
他のみんなが沈黙してると言うことは、今回の大魔王イザベリュータ討伐案件に、反対する者はいないと言うことだ。
「おお、そうじゃそうじゃ。
お前さんはどうする? イトリンよ」
「………」
そう言うとヴァグドーさんが俺の方を向いて、今度は俺の意見を求めてきた。
「はい、俺も一緒に行きます!
ヴァグドーさん」
当然だけど、俺も一緒についていく。
こんな所に一人だけ残されても、一体どうやって生きていけ、と言うんだ。
モンスターや盗賊などに襲われて、あっという間に、終わってしまうぞ!
それに大魔王イザベリュータってのが、一体どういうヤツなのか、少しだけ興味がある。
何よりも、俺とヴァグドーさんたちが離ればなれになれば、もうヴァグドーさんたちがラーメンを食べられなくなるぞ。
まぁ…どうせ大魔王を倒すのは、ヴァグドーさんたちだし、俺は少し離れた安全な場所で、ラーメンでも作っていればいいのさ。
そんな感じで俺も一緒についていく旨をヴァグドーさんに伝えると、
「おお、そうかそうか、わかったのじゃ。
ならば、ワシらと一緒に行くのじゃ。」
「はい」
とヴァグドーさんも納得した様子で返事をした。
これで話はまとまった。
ヴァグドーさんと、その仲間の皆さんで、大魔王イザベリュータを討伐(顔見せ)しに行くことになった。
ヴァグドーさんの方から大魔王を討伐しに行く事は、おそらく絶望老人が異世界転生をしてから、シリーズを通して初めての事になるだろう。
もはや、ラスボスが悪魔神という設定上、中ボスくらいの大魔王を退治する行為は、いつの間にか、なくなってしまった。
しかし、今回は人間に悪さをする大魔王イザベリュータ! ここはヴァグドーさんの正義の鉄槌が炸裂するのか?
まぁ…それはさておき、
俺とヴァグドーたち一行が旅支度をして、施錠済みの『秘密基地』を出ていき、別の小屋に待機していた暗殺者の女性と合流した。
その暗殺者が俺たちを見るなり、こう言ってきた。
「お待ちしておりました。
その様子だと、国王からの仕事の依頼を受けてくれる、ということですか?」
「おう、ワシら全員で、その大魔王イザベリュータとやらの討伐に向かうつもりじゃ。」
「はい、判りました。
では早速、国王に謁見をお願いします。」
「ふむ、そうかそうか、わかったのじゃ。
では王宮まで案内してもらおうかのう。」
「はい、判りました。
では早速、馬車にお乗りください。」
「おう、わかったのじゃ」
「………」
なんと小屋のある小道には、いつの間にか、大型・白銀製に白馬が三頭と御者台には案内役が座っている、王族専用の馬車が二台も停まっていた。
この馬車の中も、結構広くなってる。 一台につき、10人は乗れそうな感じだ。
俺やヴァグドーさんや勇者アドーレさんやカグツチさんたちが、続々と二台の馬車に乗っていき、最後の暗殺者の女性が馬車に乗ったところで、その二台の馬車は、ナギアノ王国の中央部にある王都・王宮へ向かって出発した。
こうして俺やヴァグドーさんたちは、まずナギアノ王国の国王に会うことになった。
ここでもまだイトリン回です。
タイトル『糸井久信 ~絶望老人が異世界転生をしたら、外伝~』の別ヴァージョンを追体験。 今回も内容の一部変化を見比べてお楽しみ下さい。
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