255、第二の大陸
●【No.255】●
ここは最初の大陸の北側に位置する『魔族の国』である。 以前も説明したと思うが、主に魔族や魔物たちが住まう場所だ。 大魔王がいる大陸には、必ず魔族の国があって、大魔王が居住する城もある。
その大魔王がいる城の一番奥にある『玉座の間』の、さらに一番奥にある玉座に座る大魔王エリュドルス。 その大魔王エリュドルスが座る玉座の右側に、大魔公ギロリルスが立っている。 玉座の左側には大魔公ウエルルスが立っており、玉座の目の前に大魔公デイラルスが跪く。 先の大魔王デスゴラグションとの戦いでは、多くの部下を失い、エリュドルス自身も傷やダメージを負った激しい戦闘だった。 今現在でも傷や体力を回復させてる最中だ。
そのデイラルスが大魔王に報告する。
「申し上げます。 大魔王様」
「聞こう。 デイラルスよ」
「はっ、大魔王様。 あの堕神坊ベルシェールトンがこの世界から逃亡しました。」
「おう、そうか。 それで?」
「はい、悪魔神モドキが堕神坊ベルシェールトンを迎撃。 途中から神光聖者エリュニウスと右刎王アレクェートが攻撃参加して、見事に堕神坊ベルシェールトンと二体のドラゴンを撃退致しました。」
「そうか、さすがだな。
これで当面は、この大陸も一安心だ。 全く余所者ごときがこの大陸を攻め込むなど、到底許されることではないからな。」
「はっ」
「しかし、大魔王様。
依然として大魔王デスゴラグションも堕神坊ベルシェールトンも未だにこの大陸を諦めておりません。 今のうちに、こちら側も対策を考えた方がいいと存じます。」
「おう、そうだな。
余もそれを考えてた。 いずれ対策しよう。 今は大魔王デスゴラグションと堕神坊ベルシェールトンの撃退・撤退を素直に喜ぼう。」
「「「はっ」」」
そこでデイラルスの報告が終わる。
とりあえずはこの大陸に敵対する者もいなくなり、ホッと一安心する大魔王エリュドルス。 またヴァグドーや勇者アドーレや悪魔神オリンデルスたち一行も別の大陸へ行ってしまい、少し静かで寂しくなる。 今、この大陸を守る強者は、大魔王エリュドルスや神光聖者エリュニウスやレイドルノなどの一部の者に限られる。
いまだかつて、この大陸に大魔王がいるにもかかわらず、この大陸にいた勇者や主人公たちが、その大魔王を討伐もせずに、別の大陸へ移動したことは、まさに前代未聞の出来事である。 それもヴァグドーと大魔王エリュドルスの友情のなせる業であろう。 では…もし、主人公ヴァグドーがこの世界に存在しなかったら? この大陸は大魔王に支配されていたのか? それとも勇者が大魔王を打倒したのか? それは誰にも解らない。 そう、今となっては誰にも解らないのだ。
そのヴァグドーが "地獄の森" を出てから、全てが良い方向へ進み始めた。
ーーー・●・ーーー
ある日の深夜のこと。
大型船で次の大陸へ向かうヴァグドーたち一行。 もう間もなく次の大陸「アレンカトロス大陸」が見えてくる。 最初にヴァグドーたちがいた大陸には、大陸名が無かったけど、こちらの大陸には、しっかりと「アレンカトロス大陸」という名前がある。 おそらくこちら側の大陸は、事前に誰かが名付けたのだろう。 名前があるぶん、こちら側の方が便利である。
「おっ、見えてきたな」
外に出ていたワシらが、次の目的地である大陸を肉眼で見ておる。 そこで「ナギアノ王国」の西南地区の森に、一番近い船着き場を探す。
「おお、あそこに丁度いい船着き場があるな」
「はい、そうですね」
丁度いい感じに、アレンカトロス大陸のナギアノ王国の西南地区の森の所に、古い船着き場があって、停泊所・宿屋・教会の三つの施設があるだけじゃ。
「あそこに停めよう」
「はい、判りました。」
そこで森の船着き場に、大型船を停泊させる。 この大型船の正式な所有者は勇者アドーレなので、少なくともアドーレが乗船してないと出航しないように出来てるそうじゃ。 ワシらが船から降りて、そのまま宿屋へ向かう。
「「「「?」」」」
宿屋に到着するが、誰もおらん。 客はおろか、従業員・店の者もおらん。 おるのは、なんとゾンビ系魔物だけじゃ。
「ヒヒヒ、人間が泊まれる部屋などありません。」
「ヒヒヒ、あなた方人間はここで死にます。」
「さぁー、我々の仲間になりましょう。」
「断る」
「「「むっ!」」」
なんとゾンビ系魔物がワシらに話しかける。 何かふざけたことぬかすが、当然断る。
「「「それ、死ねぇー!」」」
すると紫色のゾンビ共がたくさん宿屋から出現した。 これはなかなか面白い趣向じゃのう。 問答無用でワシらに襲ってくる紫色のゾンビ共。
「ほーう、ワシとやるのか?」
「手伝いますよ。 ヴァグドーさん」
そこでワシとアドーレの二人だけで、その紫色のゾンビ共を全て討伐する。 まぁ…10体ぐらいはいたが、こんなザコ…片付けるのに、5分もかからんわ。
(ザコなので、戦闘を割愛)
紫色のゾンビ共を全て倒すと、そのまま宿屋の中に入る。 長い間、人間が掃除してないせいか、宿屋の中は蜘蛛の巣やら埃やらゴミなどで散乱しており、部屋にあるベッドなども汚れていて、ズタスダに破れておる。 これでは、とてもじゃないが泊まれんな。 やれやれじゃな。
「ちっ!」
「クソッ!」
「これは人間が宿泊できる宿屋じゃないな」
「おそらく宿屋の亭主や従業員たちも、あのゾンビ共に殺害されたのだろう。 この大陸の魔物共も平気で人間たちを襲うみたいだ。」
「なるほど、このワシのことを知らない大陸か…」
「そういうことだ」
ワシらは宿屋を出た。 このままこれ以上ここにおると、全身埃まみれになりそうじゃ。
この大陸では、ワシらのことをあまり知る者はおらん。 前の大陸でも旅の最後の方など、最早魔物共が、ワシらを恐れて、誰も襲ってこん前代未聞な出来事が起きたのじゃ。
それに比べると、こっちの大陸では、また魔物共に襲われて、とても新鮮な気分じゃな。
「今度は教会に行ってみましょう」
「おう、そうじゃな」
「教会なら、さすがに魔物もいないよね?」
「そうよね?」
「だといいけど…」
そこで今度は教会に入る。
教会の中はちゃんと綺麗にされており、なかなか立派な作りになっておる。 おや、奥の方に誰かおる? そこでワシらが教会の奥の方へ歩くと、そこに立っていたのが、あの女神ハーディスじゃった。
「おっ、お前さんは…ハーディスか…?」
「あっ、ヴァグドーちゃん!
こんな所で油を売ってないで、早く彼を探して下さい!」
「おう、そうか。
判っておる判っておる」
「頼みますよ!
このまま彼が魔物にでも殺されたら、あなたを恨みますからね!」
「わかった! すぐに探す!」
「………」
そう言うとハーディスがスゥッと消えた。
「急ぎましょう! ヴァグドーさん」
「ふむ、そうじゃな」
珍しく強い口調で急かしてきたな。
これは女神に恨まれる前に、早急に彼のことを探しに、森の中の指定されたポイント「TM55071Q」地点へ向かうのじゃ。
全くやれやれじゃな。
急げヴァグドー!
彼が待っている!
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