250、楔(クサビ)を打ち込め!
●【No.250】●
ここに『堕神坊ベルシェールトン』が一人になる。
ここで遂に《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》が『堕神坊ベルシェールトン』を裏切ったのだ。
だがしかし、ここで少し考えてほしい。
そもそも本当に『堕神坊ベルシェールトン』と《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》や《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》が仲間・味方だったのか?
否、違う!
そう、仮にもドラゴンを支配できる磨羯龍カラミティノエロンやドラゴン使いのアロトリスを差し置いて、たかが『堕神坊ベルシェールトン』ごときが、ドラゴン族上位種の《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》を仲間・味方に引き込むことができたのか?
否、違う!
まだ『堕神坊ベルシェールトン』は《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》を仲間・味方にしきれていない。 そもそもドラゴン族を仲間・味方にするのは、なかなか難しい。 ドラゴン族の支配者であるドラゴン最強の磨羯龍カラミティノエロンや特典能力で使役できるアロトリスのような何かしらの力がなければ、そう簡単に仲間・味方にできないのが、強力な種族ドラゴン族なのだ。
それを『堕神坊ベルシェールトン』が知らなかった。
否、たとえ知っていても、そんな能力…彼にはない。
つまりだ。 ドラゴン族の支配者たる最強のドラゴンとか、ドラゴンを使役できる程の特典能力者とか、ヴァグドーや悪魔神のようなドラゴンをも恐れる圧倒的なパワーの持ち主でもない限り、ドラゴン族を仲間・味方に引き込むことなど、到底できないのだ。
その事を『悪魔神モドキ』が『堕神坊ベルシェールトン』に親切丁寧に教える。
「…ッ!?」
「ハハハ、やっぱりお前はドラゴンを扱えきれていない。
自分もドラゴン族を仲間・味方にするのは、非常に苦労するだろう。
お前は簡単にドラゴン族を仲間・味方にできたのか?」
「…ッ!?」
「ハハハ、どうやらちゃんとドラゴン族を仲間・味方にしきれていないようだな。
それで、あのドラゴン共を裏切ったとは、甚だ遺憾だよなぁ?
お前たちも、ハハハ」
『『……』』
「そ、そんなバカなぁ……」
「なぁ、ドラゴン共よ。
本当にあいつの仲間なのかぁ?」
『違う。 ただのビジネスパートナーだ。』
『そうだ。 仲間ではない。
自分たちに利益を与える為のただのビジネスパートナーなだけだ。』
「…ふっ」
「あっ……」
このドラゴン共の返しに『堕神坊ベルシェールトン』がハッとなった。
確かにそうだ。
本来なら、この『堕神坊ベルシェールトン』と《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》や《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》は仲間・味方ではない。 ただのビジネスパートナーなのだ。 お互いの利益・打算・保身などで結ばれたただのパートナー関係である。 なので彼らとは仲間でも味方でもない。 それを『堕神坊ベルシェールトン』は完全に失念していた。
そして、勘違いしてもらっては困ることだが、ここでは―――
『お互いの利益・打算・保身などの為に共闘する』のであって、『お互いの為の利益・打算・保身などの為に共闘する』訳ではない。
「………………」
ここでなんと戦闘の最中にも関わらず、『堕神坊ベルシェールトン』が無言のままうつ向いて戦意喪失する。
「…ッ!」
その隙をついて、このチャンスを逃さず、すかさず『悪魔神モドキ』がすぐさま【隠密隠蔽光弾】を『堕神坊ベルシェールトン』の方へ向けて発射させた。
ズガァァーーン!
ブウウウゥゥゥ―――
ズゴドォーーン!
でも、うつ向いて沈黙する『堕神坊ベルシェールトン』の身体から再度白銀のバリヤーが自動的に出現して、『悪魔神モドキ』から放たれた【隠密隠蔽光弾】の直撃を防ぐ。
「ちっ、なるほど……。
―――ん?」
今度は《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》が口から【光輝く吹雪】を吐いて、そのまま『悪魔神モドキ』の方へ向けて攻撃する。
『今度こそ喰らって凍りつけ!』
ズゴゴゴォォォーーーッ!
「ちっ!」
続けて《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》も口から【灼熱の火焔】を吐いて、そのまま『悪魔神モドキ』の方へ向けて攻撃する。
『今度こそ喰らえって焼き尽くせ!』
ズドドドォォォーーーッ!
「ちっ!」
ここまで来て、まだ《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》が左右からの同時攻撃。 一斉に『悪魔神モドキ』の方へ向けて攻撃してきた。
「………」
またしてもこの不意打ちの攻撃に、さすがの『悪魔神モドキ』も少々呆れ顔をする。
ドッカァァーーーン!!
なんとまた何の抵抗もなく、《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》の【光輝く吹雪】と、《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》の【灼熱の火焔】の左右からの同時攻撃。 今度は『悪魔神モドキ』に直撃して大爆発したか?
「……」
『どうだ? ヤったか?』
『ああ、ヤったとも。
今度こそヤったさ』
「……」
『なぁ、ヤったよなぁ?』
『さすがに今の不意打ちは成功したはずだ!』
「……バカめ!
よく見ろ、ドラゴン共!」
『な、何ッ!?』
『な、なんだとッ!?』
「アレをよく見ろ。
同じことの繰り返しだ」
そこで激しい爆煙も消えて『悪魔神モドキ』のくたばった姿を見ようとするドラゴン共に、ようやく『堕神坊ベルシェールトン』が一喝する。
「ちっ!」
『く、クソッ!!』
『またかぁ!!』
相変わらず『堕神坊ベルシェールトン』と《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》の方が悔しそうな顔をする。
そう、またもや『悪魔神モドキ』の姿が何処にもいない。 ―――消えた。
だがしかし、今度こそ…遂に…遂に…『堕神坊ベルシェールトン』と《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》や《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》のビジネスパートナーとしての楔を打ち込み、「仲間割れを誘発させる」ことには成功した。
さすがは『悪魔神モドキ』だ!
見事だったぞ!
なかなかやるな『悪魔神モドキ』よ。




