235、第二陣・援軍到着
●【No.235】●
とある大陸の海に面した陸地『東の岬』にて、この大陸の主とする大魔王エリュドルスや大魔公ウエルルスが、余所者大魔王デスゴラグション侵略者から自分たちの領地を守る為に対峙する。
とある大陸の今は誰も使用していない広大な空地『冥道郷』にて、その上空では大魔王エリュドルスにこの地の守護を任された大魔公ギロリルスと、ある目的の為にやって来た〈地球神アクナディオス〉が対峙する。
とある大陸の『東の岬』に近づく大型船が海の沖からやって来た。 当然この地域で大型船を走らせているのは、やっぱりヴァグドーや勇者アドーレや大魔女シャニルたち最強の一行であり、この周辺唯一の港である『東の岬』に停泊させようとしている。
全くもって不思議な現象・行為なのだが、本来ならば大魔王エリュドルスはヴァグドーや勇者アドーレたちから見れば倒すべき相手・ラスボスであり、当然だけど助ける必要がない。 だがしかし、ヴァグドーや勇者アドーレたちと大魔王エリュドルスとの間には、全くもって奇妙な話なのだが、何故か強固な友情で結ばれており、今回の時のように救援に来ている。
『東の岬』では大魔王エリュドルスが大魔王デスゴラグションを足止めしており、
『冥道郷』ではギロリルスが〈地球神アクナディオス〉を足止めしている。
この現状において、遂にヴァグドーや勇者アドーレや大魔女シャニルたちを乗せた大型船が、『東の岬』の停泊出来そうな船着き場に到着した。
タッタッタッ!
ここですぐにヴァグドーや勇者アドーレや悪魔神オリンデルスや大魔女シャニルや大魔公テミラルスたちが続々と大型船から降りてきた。
それを見た大魔王エリュドルスたちが―――
「おお、遂に来たか。
余の計画通りに事が運んでおるわ。」
「やっぱり来たのね。
……テミラルスよ」
「……あれがヴァグドー……」
「………」
一方の大魔王デスゴラグションは後ろを一切振り向かずに、ただ黙って腕組みしたまま仁王立ちしている。
この構図は『冥道郷』方面に向かう道を大魔王エリュドルスやウエルルスやデイラルスと《スライム・ソルジャーマン》たちがしっかり守りを固めており、海へ向かう船着き場からはヴァグドーや勇者アドーレや悪魔神オリンデルスや大魔女シャニルやテミラルスたちが来ている。
つまり、単騎の大魔王デスゴラグションは完全に挟撃された形となり、最早これは形勢逆転不能の絶体絶命状態に陥っている。
そこでワシが大魔王デスゴラグションの後ろ姿を見る。
「あやつが大魔王デスゴラグションか?」
「ああ、そのようだね」
「あの黄金の身体を持つ大魔王がデスゴラグションですか」
「ふ~~ん、なるほどねぇ~」
「………」
ワシの質問にオリンデルスやアドーレたちが様々な反応をしておる。
「ふっ、ここはアドーレよ。
お前さんたちに任せてよいか?
ワシはまずあやつを倒す」
「はい、判りました。 ヴァグドーさん」
「ああ、わかった」
「は~い、ヴァグドーちゃ~ん♪」
「………」
「では、ヨロシク」
シュッ!
そう言うとワシはある一点を見つめてから、すぐに高速飛行で飛び去った。
その様子を見たデイラルスが声をあげた。
「あっ、ヴァグドーの姿が消えた?」
「………」
「ヴァグドーは高速飛行で飛び去ったのだ。
あやつを倒しにな」
「あやつを………まさかっ!?」
「そうだ。
ヴァグドーの目的はただひとつ。
それは〈地球神アクナディオス〉の討伐だ」
「えぇっ!? それは可能なのですか?」
「………」
「さぁ?」
デイラルスが驚愕するけど、大魔王エリュドルスは動揺する気配すらない。 それはまるでこの事も判っていた様な感じじゃな。 さすがじゃ。 それとウエルルスとやらも無言で、ワシが飛び去った方向を見つめていた。
ここでまた頭の回転が早い余が今後の事について考える。
もし仮にヴァグドーの力をもってしても〈地球神アクナディオス〉を止めることが出来なかったら、その時こそ、余が編み出した秘技・秘術をもってして〈地球神アクナディオス〉を止めるしかあるまい。 まぁヴァグドーが止められなかった奴を余が果たして止められるかどうかは別にして、あやつと余とでは基本的に止める方法が違う。 あやつと余とで波状攻撃を仕掛ければ、もしかして通用するかもしれんな。 まぁまずはヴァグドーに先手を打たせてやるか。
「ウエルルスよ、デイラルスよ。
今はヴァグドーの事などよい。
それよりも目の前にいる大魔王デスゴラグションをどうにかすることだけを考えよ。」
「「はっ、判りました。」」
そこでまた余とウエルルスが大魔王デスゴラグションの方へ向けて構えた。
ワシは『冥道郷』の上空を飛んでおり、沢山の黒い人影が上空に浮いているのを目視で確認する。
「アレじゃな」
ワシはあの一際目立つ黒い人影に包囲された大きな黒い人影 (の背後?) の方へ向かって高速接近していき、右拳を力強く握り締めて、その大きな黒い人影 (の後頭部?) の方へ向かって思いきり殴りつけた。
ギュン、バキッ!
『……ッ!!?』
「なっ!!?」
ワシに殴りつけられた大きな黒い人影〈地球神アクナディオス〉が殴られた衝撃で地面に落下する。 実体のない〈地球神アクナディオス〉を殴りつけるなど、絶対にできないはずなのに、あの人間はいとも容易く殴りつけたのだ。
「ば、バカな? あの〈地球神アクナディオス〉を殴りつけただとぉ!?」
「お前さんがギロリルスじゃな?
お前さんも下に降りろ」
「………」
ヒュゥッ、ドサッ!
『ウグッ!!?』
なんと背後から無防備に殴られた〈地球神アクナディオス〉が凄い勢いで俯せのまま地面に激突した。 まさか実体のない自分が背後から殴りつけられるなど、夢にも思わないので完全に油断していた。
そこにワシやギロリルス (が乗った大きな怪鳥) も降下していき地面に着地した。
ワシやギロリルスと〈地球神アクナディオス〉は『冥道郷』の上空から地上へ移った。
遂にヴァグドーたち一行が到着。




