230、大魔王の対峙・対立
遂にあの大魔王デスゴラグションが『東の岬』に到着した。
●【No.230】●
ここはとある大陸にある『冥道郷』という場所である。
ここに上位魔族のAクラスにして大魔公のギロリルスが自身の精鋭部隊を引き連れて、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の侵攻に備えて防衛・待機している。
「な、なんだと? この気配は……? まさか、本当にやって来たのかぁ? あの大魔王デスゴラグションがぁ……?」
このギロリルスは大魔王デスゴラグションの気配を察知して、とても驚愕している。 まさか、本当に大魔王エリュドルス同様に、自ら最前線までやって来たからだ。
「このままではエリュドルス様も危ない。 仕方がない。 ならば《スライム・ソルジャーマン》を救援に出すか」
そこにギロリルスは自身の精鋭部隊の中の一部隊である《スライム・ソルジャーマン》を大魔王エリュドルス救援の為に『東の岬』へ派遣する。
ギロリルスの命令で、《スライム・ソルジャーマン》が隊列を組んで、そのまま『東の岬』の方へ向かって歩き出す。
この《スライム・ソルジャーマン》とは、人型スライムが鋼鉄の鎧を着て、剣と盾を装備したモンスターである。 別に某RPGのようにスライムの上に跨がってる訳ではない。 完全なる重装備の接近パワーファイターだ。
一方の『東の岬』と『冥道郷』との間にある森林小道の森林の中に、上位魔族のAクラスで大魔公ウエルルスが一人で隠れている。 そのウエルルスは部下や仲間などを引き連れておらず、あえて自分一人だけで、この森林小道を守っている。
「この気配は間違いない。 遂に大魔王デスゴラグションが攻めてきたのだ。 まさか、本当に大魔王エリュドルス様と大魔王デスゴラグションが戦うのか?」
ば、バカな……?
エリュドルス様はあの技を使用したお陰で、一時的だが、もう力を使い果たしている。 そのような状態で、あの大魔王デスゴラグションとマトモに戦える訳がない。 確実に敗北する。
ここは私がエリュドルス様の救援に向かって、エリュドルス様の為に時間を稼ぐしかない。
「……ん?」
そこに『冥道郷』の方から、さっきの《スライム・ソルジャーマン》が隊列を組んで歩いてやって来て、このまま『東の岬』の方へ向かっている。 その事にウエルルスが気がついた。
「そうか、ギロリルスはスライム・ソルジャーマンをエリュドルス様の盾代わりに使うつもりか。 確かにスライム・ソルジャーマンなら盾には丁度いいモンスターだけど、相手があの大魔王デスゴラグションでは果たして、どこまで通用するのか?」
やはり、この私も救援に向かわねば……なるまい。
そう言って心配性のウエルルスの姿がフッと消えてしまった。
再び、ここはとある大陸にある『東の岬』である。
ここで大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊による侵攻の結果、遂に大魔王デスゴラグションが登場した。
金色機械人形―――その名も大魔王デスゴラグション。
正真正銘の本物の大魔王だ。
全身が超鋼鉄の金属で出来ていて、人工的に強烈な魔法の使用が可能で、しかも疲れも傷みも恐怖も絶望も存在しない。
また黄金の全身には、八本の黄金の剣があちこちに装備されており、伝説の皇剣【無恩時の剣】を帯刀している。
そして、その背後には、例の〈地球神アクナディオス〉も浮いている。
その大魔王デスゴラグションの左側に、シル・バニーオン・ズドがずっと立っている。
一方で大魔王デスゴラグションからこの大陸を守護・防衛する為に、漆黒のフード・ローブ・マント姿に伝説の皇剣【終焉殺の剣】を帯刀している大魔王エリュドルスに、大魔公のクノシルスとデイラルスの三人だけが残ってる。 今のところは。
しかも、今は大魔王エリュドルスとデイラルスの二人がどんどん後退を始めていて、少しずつ『冥道郷』の方へ向かってる。 クノシルスだけが海側―――つまり、大魔王デスゴラグションの方へ向かって近づいてる。 本人さえも気づかない程に、ちょっとずつゆっくりと近づいている感じがする。
まずは大魔王デスゴラグションが大魔王エリュドルスに静かにゆっくりと話し始めた。
「久しぶりだな。 エリュドルスよ」
「ああ、デスゴラグションよ。 よもや貴様直々にここまでやって来るとはな。」
「ふふふ、アレを手に入れる為だ」
「………」
「……アレ……?」
「既にシル・バニーオン・ズドから報告を受けている。 たしかアレにひとつ空きがあるはずだ。 それを頂きに来た」
「そんなことを余が許すと思うのか?」
「ふふふ、無理をするなエリュドルスよ。
今のお前では私を倒すどころか、このシル・バニーオン・ズドでさえ倒すことは出来ない。」
「………」
「ちょっと待って! たしか報告では大魔王デスゴラグションは〈地球神アクナディオス〉に操られてるって……なのになんで、そんなに話せるの?」
「ふふふ、ウエルルスからの報告か? あの時玉座に座っていたのは、ただ単に黒いフード・ローブ・マントだけに過ぎない。 真の我は別の場所にいたのだよ。」
「な、なんだぁ……?」
「真の我……? 別の場所……?」
「そうだ。 我は丁度、大魔王イザベリュータが支配する大陸と、大魔王ゼンが支配する大陸を、それぞれ侵攻していたからだ。」
「「……?」」
「ふふふ、大魔王エリュドルスならば、この私の心情理解出来るはずだ」
「ああ、大魔王デスゴラグションに限って言えば、一人だけではないからな」
「ふふふ、その通りだ」
「えぇ……っ!?」
「なんですとっ!?」
『………』
「さて、もうそろそろお喋りも終わりにしようか。 エリュドルスよ、遂にこの私にも『究極の力』が手に入るのだ。 邪魔をするなよ」
「言ったはずだデスゴラグションよ。 そう簡単に、貴様の思い通りにはさせんぞ!」
「ふふふ、ならばお前を倒すまでだ。 大魔王エリュドルスよ」
「ふん、返り討ちにしてやる!」
―――ピピッ!
『まずは自分にお任せ下さい。 デスゴラグション様』
「おう、行け」
そう言って、シル・バニーオン・ズドが地面を蹴って、素早く大魔王エリュドルスたちの方へ向かった。
そのシル・バニーオン・ズドが右手甲の隠し装置から、銀色の鋼鉄の刃を突き出して、クノシルスの方へ向かって斬りつける。
一方のクノシルスも左手を手刀にして、その手刀から "赤紫色の剣形エネルギー魔力刀"《バスター・マジックソード》を発生させて、それでシル・バニーオン・ズドの刃を受け止める。
「くっ!」
『………』
悪魔神オリンデルスやヴァグドーや勇者アドーレたちのような『最強の力』をもってすれば、あのシル・バニーオン・ズドでも互角以上の勝負が出来るだろう。
だがしかし、残念なことにクノシルス程度の実力では、このシル・バニーオン・ズドに勝つことなど出来ない。
ここに遂に大魔王デスゴラグションと大魔王エリュドルスが対峙・対立することになった。 まさか大魔王同士で戦闘するのか?




