227、シル・バニーオン・ズド:5
ヤバイ!
非常にヤバイぞ!!
●【No.227】●
大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の中から飛び出したシル・バニーオン・ズドが、遂にあの大陸の『東の岬』に到着した。
その先行したシル・バニーオン・ズドが、次々と『東の岬』で待機・防衛していた魔族や魔物に攻撃。 右手甲から飛び出た銀色の鋼鉄刃で、どんどん斬りつけていく。
あまりに非道……否、無慈悲である。
応戦する魔族や魔物たち、防御に徹する魔族や魔物たち、逃げ惑う魔族や魔物たち、一切の区別なく無差別に斬りつけていく。 しかも容赦なく……これは酷い。
堪らずクノシルス側も応戦する。
「怯むな! 相手は一人だ! 全員で攻撃しろ!」
クノシルスの号令の下、魔物全員がシル・バニーオン・ズドに襲いかかる。 特にこの《アイス.ロック.ジュエル》と《フレア.ロード.デュエル》の二強魔物が奮戦する。 勿論、他の魔物も参戦して、なんとかシル・バニーオン・ズドを叩き潰そうとする。
この《アイス.ロック.ジュエル》とは、氷系岩石型モンスターである。 某RPGに出てくる様な丸っこい氷と岩が合体したモンスターであり、口から「低温の息」や「猛烈な吹雪」などを吐いたり、体当たりして攻撃してくる。
この《フレア.ロード.デュエル》とは、炎系戦士型モンスターである。 人型の兜やマントや鉄球などに炎がついていて、口から「高熱の息」や「激烈な炎」などを吐いたり、炎の鉄球を投げつけて攻撃してくる。
だけど、このシル・バニーオン・ズドも相当強い。
右手甲から飛び出た銀色の鋼鉄刃で、襲いかかる魔族や魔物を斬り裂いていき、ノーモーションからの突然、真紅の瞳から "真紅の殺人レーザー光線" が高速で飛び出して、《アイス.ロック.ジュエル》や《フレア.ロード.デュエル》をはじめ、多くの魔物や魔族の方へ向けて発射された。
ビビィッ!
「な、何ぃっ!?」
「や、ヤバイッ!?」
『くらえぇぇ!!』
なんとかクノシルスとデイラルスの二人は、慌てて高くジャンプして、難を逃れたけど、逃げ遅れた他の魔物や魔族の大半は、今のあのシル・バニーオン・ズドの "真紅の殺人レーザー光線" の攻撃を喰らって、ほとんどが全滅。 またオブリルスの残りの遺体も、今の攻撃で消滅、遂に敗死した。
ビビィッ、スドォーーン!
「くそっ、生き残ったヤツだけでも、奴らに攻撃して仲間の仇を討てっ!」
それでも、なんとか生き残った《アイス.ロック.ジュエル》や《フレア.ロード.デュエル》たちが、クノシルスの指示の下、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊に攻撃を敢行。 奴らに向けて「猛烈な吹雪」や「激烈な炎」などを浴びせたり、またクノシルス自身も左手の掌から、"赤紫色の大型球体エネルギー魔力弾"《バスター・マジックボール》を、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の方へ向けて発射させた。
ズドドドォーーーン!!
「ヤったかっ!?」
「いや、まだよっ!!」
だけど、まだ大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊は完全に全滅していない。
大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊のリーダー格の上位魔族と、あともう一人だけを残して、あとは全滅。 そのもう一人の謎の奴が、なんと巨大な光の壁・魔法障壁を発動して、自身とそのリーダー格の上位魔族の前方にだけ展開して守り、複数の敵からの同時攻撃を防いだ。
ブゥゥゥン、ズドォーーン!
「な、なんだとっ!? 防いだ……だとぉ!?」
「くっ、まさか……まだいたのかぁ……っ!?」
「………」
なんと大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊のリーダー格の上位魔族を守るようにして、さらにもう一体のシル・バニーオン・ズドが立ちはだかる。
「やっぱり、我々は単なる囮……本来の目的はコイツらの試運転だったのか? 所詮、我らも捨て駒……だが何故、コイツは自分だけを助ける?」
「なんと、あの銀色の人形兵器は……まだ二体もいたのか?」
「ちっ、厄介な相手だよ。 こっちはもう魔族も魔物も全滅寸前で、オブリルスのヤツもあっさり殺られちゃったってのに、まだあんなのを二体も相手しなきゃいけないなんてね。」
―――ピピッ!
『大魔王デスゴラグション様……あともう少しで到着する』
そこで大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊のリーダー格の上位魔族と、あともう一体のシル・バニーオン・ズドも、遂に『東の岬』に到着した。
現状、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊のリーダー格の上位魔族と、その左右にはシル・バニーオン・ズドが一体ずつ計二体の総数三名のみ。 50人前後はいたハズの大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊も『東の岬』に到着した者は、この三名のみである。
一方の『東の岬』の防衛部隊も、そのほとんどの魔族や魔物がシル・バニーオン・ズドの攻撃で死滅、大魔公オブリルスも敗死して、残るはクノシルスとデイラルスの二人の大魔公と、あとわずかに残る魔族や魔物だけである。
そのリーダー格の上位魔族の背後から、ようやく大魔王エリュドルスが凄い速度で到着して、素早く伝説の皇剣【終焉殺の剣】を取り出して、そのリーダー格の上位魔族に斬りかかる。
ギィィィン!
「くっ、このシル・バニーオン・ズドめ!」
『………』
「な……なっ!!?」
だがしかし、リーダー格の上位魔族を庇うようにして、シル・バニーオン・ズドが右手甲から飛び出た銀色の鋼鉄刃を、リーダー格の上位魔族の背後の前に出して、伝説の皇剣【終焉殺の剣】の刃を受け止めた。
「ば、バカな……だ、大魔王エリュドルスだと……っ!?」
「おのれ、シル・バニーオン・ズドめ! まだ二体もいたのか!」
『………』
ようやく大魔王エリュドルスも『東の岬』に到着して、最強の援軍に歓声を上げるクノシルスやデイラルスたち。
「おおっ、エリュドルス様! 遂に大魔王様が援軍に来たぞ!」
「やったぁーーっ! これで形勢逆転だわぁーーっ!」
だがクノシルスもデイラルスもまだ知らない。 大魔王エリュドルスとシル・バニーオン・ズドの実力が、ほぼ互角であることに。
「な、なんだとっ!? コイツら……また自分のことを守っただと……っ!? 本当に一体どういうことなんだ……っ!?」
一方の大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊のリーダー格の上位魔族は、得たいの知れないシル・バニーオン・ズドが自分を守ったことに、言い知れない不安と不審を感じていた。
さよならオブリルス★
一方、大魔王エリュドルスが合流したとはいえ、相手はシル・バニーオン・ズドが二体。
果たして勝機があるのか?