226、シル・バニーオン・ズド:4
●【No.226】●
とある大陸の東側にある『東の岬』にて
もうすぐそこまで大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊が『東の岬』にまで迫っていた。 それはもう『東の岬』で待機・防衛しているオブリルスとクノシルスやデイラルスたち上位魔族の肉眼でもはっきり見える距離まで迫って来てる。
その大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊が、もの凄い勢い・もの凄い速度で『東の岬』へ迫って来た。
「ちっ、遂に来やがったか!」
「邪悪魔龍司よ、前へ出ろ! 攻撃魔法で応戦せよ!」
「………」
オブリルスの命令で、赤紫色のフード・ローブとマントをまとった魔法使い系モンスター《邪悪魔龍司》が『東の岬』の海辺に横一列にズラリと並んで攻撃体勢に移行する。
スゥーッ、サッ!
まだ若干距離はあるものの《邪悪魔龍司》が、すぐに炎系攻撃魔法を発動させて、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の方へ向けて発射させる。
「よーし、今だぁ!」
「撃てぇ!!」
【火焔魔葬砲】
ジュドォーーッ!!
この【火焔魔葬砲】とは、《邪悪魔龍司》のみが使える炎系攻撃魔法のひとつであり、掌から火焔エネルギーのレーザー光線を敵に向けて発射させて、その敵を焼ききってしまう強力な攻撃魔法である。
ズドォーーン!
「っ!!?」
「な、なんだぁ!?」
「東の岬から攻撃だとぉ!?」
「ちっ、やはり待ち伏せかぁ!?」
多くの《邪悪魔龍司》が放った【火焔魔葬砲】によって、接近してくる大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊に命中、ここでも多くの同胞を失う。
「くそぉーーっ!!」
「行けぇーーっ!!」
「このまま突入だぁーーっ!!」
もうだいぶ数を減らされた大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊だけど、残りの者たちだけでも、そのまま『東の岬』めがけて突っ込んでいく。 もう半ばヤケクソ的な特攻の印象を受ける。
その様子を『東の岬』で待機・防衛しているオブリルスとクノシルスやデイラルスたち上位魔族からにもはっきり見えてる。
「ちっ、もう特攻か!」
「よし、続いてゴーストミラージュ・ズワ、前へ出ろ! 攻撃魔法で応戦せよ!」
「………」
クノシルスの命令で、青紫色のフード・ローブの足のない幽霊系モンスター《ゴーストミラージュ・ズワ》が《邪悪魔龍司》の前に出て、『東の岬』の海辺に横一列にズラリと並んで攻撃体勢に移行する。
スゥーッ、サッ!
もうかなり距離は縮まっており《ゴーストミラージュ・ズワ》が、すかさず氷系攻撃魔法を発動させて、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の方へ向けて発射させる。
「よーし、今だぁ!」
「撃てぇ!!」
【氷結魔葬砲】
スコォーーッ!!
この【氷結魔葬砲】とは、《ゴーストミラージュ・ズワ》のみが使える氷系攻撃魔法のひとつであり、掌から氷結エネルギーのレーザー光線を敵に向けて発射させて、その敵を凍らしてしまう強力な攻撃魔法である。
ピッキィーーン!
「っ!!?」
「な、なんだぁ!?」
「炎の次は氷だとぉ!?」
「ちっ、なんという用意周到なぁ!?」
多くの《ゴーストミラージュ・ズワ》が放った【氷結魔葬砲】によって、接近してくる大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊に命中、ここでも多くの同胞を失い、もう既に全滅寸前である。
もうあと数人しかいない大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の中から、ただ一人だけで突如、素早く先行し始めた者がいる。
そいつは、全身が銀色機械人工生命体。
スッキリしたスマートで美しいフォルムをした細長い金属の身体に、キレイで冷たい真紅の瞳、なんとか辛うじて口はあるけど、鼻や耳や眉毛も髪の毛なども一切なく、一見してあんまり強そうに見えないけど、確実に危険な雰囲気を醸し出してる例の奴だ。
「……あ?」
「またこいつか……?」
「まだいたのか、こいつ……?」
「おいおい、一体何人いるんだ? こいつは……?」
「……ちっ! こいつめ!」
なんと大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の中から、まだまだあいつらが混じっていた。
そう、あいつらである。
銀色機械人形―――その名もシル・バニーオン・ズドである。
対大魔王打倒兵器。
全身が鋼鉄並みの金属で出来ていて、人工的に強力な魔法の使用が可能で、しかも疲れも傷みも恐怖も絶望も存在しないと思われる人型兵器。
与えられた命令のみを遂行する―――まさに造られし大魔王であり、そもそも大魔公程度では歯が立たない。
―――ピピッ!
『殲滅!!』
ノーモーションからの突然、シル・バニーオン・ズドの真紅の瞳から "真紅の殺人レーザー光線" が高速で飛び出して、『東の岬』の最前線にいる《邪悪魔龍司》や《ゴーストミラージュ・ズワ》らの方へ向けて発射された。
ビビィッ!
「な、何ぃっ!!?」
『くらえぇ!!』
その『東の岬』の最前線にいた《邪悪魔龍司》や《ゴーストミラージュ・ズワ》や他の魔物たちが、あのシル・バニーオン・ズドの "真紅の殺人レーザー光線" の攻撃をマトモに喰らって、一瞬で消滅した。
ビビィッ、ズドォーーン!
さらに最前線で指揮していたオブリルスも、今の攻撃で右目・右腕・右足などの右半身が消滅しており、後方にゆっくり倒れるところを、あのシル・バニーオン・ズドが素早くオブリルスに飛びかかり、
ジャッキィーーン!
そこからシル・バニーオン・ズドの右手甲の隠し装置から、銀色の鋼鉄刃が飛び出してきて、それで素早くオブリルスの首をはね飛ばした。 凄く鋭い切れ味の刃である。
ズザァーーン!
それはまさに一瞬の出来事だった。
「そ、そんなぁ……バ、バカなぁ……っ!!?」
「あ~あ、もう殺られちゃったぁ~♪ オブリルスゥ~♪」
「ちっ、情けないぞ。 オブリルスよ!」
ドサァッ、バキッ、ドボォン!
首と右半身のないオブリルスの身体が、このままゆっくり仰向けに倒れて、背中と地面が激突しており、首はクノシルスの足下までコロコロ転がっていき、冷淡で無表情のクノシルスが、そのままオブリルスの首を海の方に蹴り飛ばして捨てた。
「ふん、動けない無力な大魔公など、もう必要ない!」
「そうよねぇ~♪ 大魔公の称号を貰っておきながら、この程度じゃぁ~ねぇ~♪」
この無慈悲なクノシルスのやり方に、デイラルスも賛同しており、そもそも上位魔族に仲間意識など希薄だ。
―――ピピッ!
『次はお前たちの番だ!』
いずれにしても、いよいよあのシル・バニーオン・ズドが、遂に『東の岬』に到着した。
まだまだいるよシル・バニーオン・ズド。
ここで遂にあのオブリルスが敗死か?




