223、シル・バニーオン・ズド:1
●【No.223】●
ある大陸の『東の岬』の先にある海上での出来事。
その海上での戦闘状況。
海から侵攻してきたのは、大魔王デスゴラグション (実際には〈地球神アクナディオス〉である) が選抜・派遣した選りすぐりの精鋭部隊を先行させている。 少数だけど、かなり強力な魔族や凶悪な魔物などで構成されている。 また〈地球神アクナディオス〉が誇る秘密兵器も待機・温存させている。
一方の海上で迎え撃つのが、大魔王エリュドルスただ一人。
またこの海とあの大陸を繋ぐ『東の岬』には、大陸中から集めた魔族や魔物などを集結・防衛させている。 その大軍を指揮する者が、大魔公であるオブリルスとクノシルスとデイラルスの三人である。
それと『東の岬』の先にある『冥道郷』には、大魔公ギロリルスと精鋭部隊を待機・防衛させており、また『東の岬』と『冥道郷』の中間地点にある森林小道には、大魔公ウエルルスが単独で待機・伏兵している。
いずれにしても、まず最初に大魔王エリュドルスを倒さない限り、あの大陸の入口でもある『東の岬』には入れない。
今現在、その海上で激しい戦闘が繰り広げられている。
相変わらず驚愕・動揺・混乱しながらも、なんとか応戦してくる大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊相手に、大魔王エリュドルスが更なる追い討ちの攻撃を仕掛ける。
「くらえ、ザコども!」
その大魔王エリュドルスが両手を前方に突き出してきて、右掌からは "蒼色で極寒の凍結・大型光線"【凍氷魔掌】を、左掌からは "紅色で灼熱の火焔・大型光線"【獄焔魔掌】を、それぞれ放出させていき、それらを大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の方へ向けて砲撃する。
うわぁぁぁあああああぁぁぁーーーーーっ!!!
ここで大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の断末魔がこだまする。
さしもの大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊も、このままここで全滅か?
「……ん?」
と思いきや―――
ここで大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の中から、巨大な光の壁・魔法障壁を発動して、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の前方に展開してくる奴がいて、大魔王エリュドルスの攻撃を防いでいく。
ブゥゥゥン、ズドォーーン!
「ん? なんだぁぁっ!?」
「ほーう、余の攻撃を防ぐか」
大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の中から、そいつが前面に出てきた。
「………」
そいつは、全身が銀色機械人工生命体。
スッキリとしたスマートで美しいフォルムをした細長い金属の身体に、キレイで冷たい真紅の瞳、なんとか辛うじて口はあるけど、鼻や耳や眉毛も髪の毛もなく、一見してあんま強そうに見えないけど、何か危険な雰囲気を醸し出している。
「な、なんだ……こいつは……?」
「こ、こんな奴……俺たちは知らんぞ……?」
「一体何なんだ? こいつは……?」
「……ちっ! バケモノめ!」
「………」
なんと大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の中から、同胞たちが全く知らない奴が混じっていた。
だがしかし、敵であるバスの大魔王エリュドルスには、奴の事をよく知ってるみたいだぞ。
おのれ、大魔王デスゴラグションめ!
否、〈地球神アクナディオス〉め!
遂にアレを出してきたか。
これは……本気ということか……。
銀色機械人形―――その名もシル・バニーオン・ズド……だったか。
対大魔王打倒兵器。
全身が鋼鉄並みの金属で出来ていて、人工的に強力な魔法の使用が可能で、しかも疲れも傷みも恐怖も絶望も存在しない。
与えられた命令のみを遂行する―――まさに造られし大魔王といったところか。
ウエルルスの報告通りだ。
危ない、危ない。
こんな危険な奴、おそらく今の大魔公どもでは、相手にならんだろう。 さすがの強力なギロリルスやウエルルであったとしても、相手が悪いだろう。
ならば、この余自らが身体を張って、ここで戦って死守するほかあるまい。
この余も実は、アレと戦うのを楽しみにしていた。 思う存分にアレの情報を奪い取ってやるぞ。
―――ピピッ!
『標的……確認……殲滅セヨ』
ジャッキィーーン!
ここからシル・バニーオン・ズドの右手甲の隠し装置から、銀色の鋼鉄刃が飛び出してきた。
「ふむ、来るか」
そこから大魔王エリュドルスも伝説の皇剣【終焉殺の剣】を取り出して前方に構えた。
ダッ!
このシル・バニーオン・ズドが海面を蹴って、素早く大魔王エリュドルスの方へ向けて襲いかかってくる。
ガッキィーーン!
ここでシル・バニーオン・ズドの右手甲の銀色鋼鉄刃と大魔王エリュドルスの伝説の皇剣【終焉殺の剣】の刃が激突・交差して、そのふたつの刃から火花を散らす。
さらに数回、お互いの刃を激しく交えていき、白熱して剣術戦を繰り広げている。
「むっ、やはりこやつ、ヤりおるな」
『………』
お互いになかなか隙を見せない。
やっぱり、このシル・バニーオン・ズドは強かった。 あの大魔王エリュドルスが瞬殺できない程の粘り強さで、果敢に鋭く大魔王エリュドルスに襲いかかってくる。 まったく一歩も引かない戦い方をしてくる。
皮肉にも大魔王エリュドルスの予測通りの結果となった。
その様子を遠目から見ていた大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊が―――
「おい、見ろよ。 アイツ、大魔王エリュドルスと互角だぜ。」
「スゲエェ!」
「おい、これはチャンスだぞ。
アイツが一体何者なのか、よく知らないけど、アイツが大魔王エリュドルスを釘付けにしてくれれば、我々は楽にあの大陸へ向かえるぞ。」
「おお、そうだ。 これはまさにチャンスだ。 このまま通過して、まっすぐあの大陸まで向かってしまおう。」
「おう、心得た。 異存なし」
「………わかった………」
(あの大魔王エリュドルスがすんなりここを通すのか? 否、きっと罠があるに違いない)
そこで大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊は、大魔王エリュドルスとシル・バニーオン・ズドの二人が戦ってる場所から離れて、少し遠回りになるけど、戦闘区域から少し左側を通過して、そのままあの大陸の方へ向かっていった。
だがしかし、ここでも大魔王エリュドルスはシル・バニーオン・ズドと戦っている為、そこから動くことができない。
これも大魔王デスゴラグションの―――否、〈地球神アクナディオス〉の策略のひとつなのか……?
大魔王エリュドルス.VS.シル・バニーオン・ズド。
なんということなのか!
あの最強の大魔王エリュドルスが―――
こんな得体の知れない変な奴に足止めされてる………?