221、断末魔
●【No.221】●
この異世界に大魔王は四人いる。
また大陸は確認されてるだけでも、六つくらいあるけど、各大陸に大魔王が一人ずついるらしい。
なんで、こんな異世界に大魔王が四人もいるのか、なんで、各大陸に大魔王が一人ずついるのか、なんで、このような異世界に悪魔神が三人もいるのか、いまいちよく解っていない不明な点も多いけど、とにかくいることには変わりない。
まず北西部にある大陸には、大魔王エリュドルスがいる。 ちなみに現在ヴァグドーや勇者アドーレたちがいる所も、この大陸である。
この大魔王エリュドルスの容姿とは、全身を漆黒のフード・ローブ・マントで纏っており、その素顔・姿・正体を見ることが出来ない。 また伝説の皇剣【終焉殺の剣】を所持している。
次に南西部にある大陸には、大魔王イザベリュータがいる。 ちなみに今度ヴァグドーや勇者アドーレたちが行くとされる大陸であり、後に "イトリン" という男と出会う予定の場所でもある。
この大魔王イザベリュータの容姿とは、腰まで伸びた真紅の綺麗な髪に、真紅の瞳とピンク色の口紅に、肌は白く美しく、黒いミニスカートワンピースを着て、黒いニーハイブーツを履いた、とても可愛らしい十代の美少女なんだけど、その可愛らしい見た目からは、想像できない程の鋭い迫力がある。
そして四人の大魔王の中では、唯一容姿を現した大魔王でもある。
また東南部にある大陸には、大魔王ゼンがいる。 ちなみにこの大陸には、かつてあの伝説の勇者マイカがいたとされる場所であり、今現在も行方不明とされている。
この大魔王ゼンの容姿とは、名前だけは登場してるけど、実際にその姿はまだ誰も見たことがない。
最後に東北部にある大陸には、大魔王デスゴラグションがいる。 ちなみにここは謎の多い大陸である。
この大魔王デスゴラグションの容姿とは、全身を漆黒のフード・ローブ・マントで纏っており、その素顔・姿・正体を見ることが出来ない。 またなにやら、あの〈地球神アクナディオス〉が取り憑いているらしい。
この大魔王デスゴラグションが暴走・反乱してしまい、この四人の大魔王の連携が崩れることで、世界の均衡も崩れてしまい、世界崩壊の危機をも引き起こしかねないのだ。
また凶悪な悪魔神が復活しつつあるこの異世界では、大魔王同士の戦闘は絶対に避けたいところである。
この大魔王の暴走・反乱は、世界崩壊と大魔王同士の戦闘で悪魔神が利する行為であり、一見して悪魔神が裏で何かやってるのか、と思いきや、実はあの〈地球神アクナディオス〉が暗躍した結果である。
その〈地球神アクナディオス〉は一体何を考えているのか、あるいは目的が一体何なのか? かなり気になるところである。
ー-ー・●・ー-ー
ここは大陸『東の岬』から、さらに先にある海上での出来事。 その海上には、大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊が侵攻を開始していて、少数精鋭ながらも、強力な魔族や凶悪な魔物が攻めて来てるけど、そこに連中の侵攻を止める意外な人物が現れた。
その人物こそが、漆黒のフード・ローブ・マント姿の男であり、そこに伝説の皇剣【終焉殺の剣】も所持していた。
まさに大魔王エリュドルスである。
その大魔王エリュドルスが大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の目の前に現れた。
「………な、なっ!!?」
「ま、まさか……あの大魔王エリュドルスが……自ら攻め込んできたぞ……」
「そ、そんな……バカなぁ……? 我々が大魔王と戦うのかぁ……?」
「チ、チクショウウウーーーッ!!!
我々はとんでもないところに来てしまったぞぉーーーっ!!!」
「ど、どうする……??」
どうにも大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊が驚愕・動揺・混乱している。
だがしかし、それは仕方ない事である。
大陸は違えど、相手は大魔王―――一介の魔族や脆弱な人間を相手にするのと、ワケが違うのだ。
大魔王は魔王よりも強者であり、魔族の王にして、魔界の神などと呼ばれており、魔族・魔物たちからは畏れ・敬い、絶対主・救世主などとされてきた。 誰も大魔王には勝てないのだ。
普通ならば、物語の終盤に登場する大魔王がラスボスであり、本来なら自分からは動こうとはしないハズ。 実際に他の大陸の魔族たちも、まさかこんなイキナリ自ら最前線で、自分たちの目の前に登場するなんて、夢にも思っていないハズ。
それが自分たちの目の前にいるのだ。
だから驚愕・動揺・混乱するのは、当然の事であろう。
だがしかし、大魔王エリュドルスにとっては、そんなことは関係ない。 そもそもこの異世界のラスボスは悪魔神であって、大魔王ではない。 大魔王は中ボスよりちょっぴり強い程度―――事実、他の大魔王だって悪魔神は撃退したいハズ。 だから大魔王は悪魔神と違って自由に行動できる。 それを大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊が見誤ったにすぎない。 要は考えが甘かったのだ。
だけど同情はしないぞ。
むしろ、もうそんな余裕すらないハズだからな。
その大魔王エリュドルスがどんどん攻撃してくるぞ。
「……っ!!?」
「だ、大魔王―――」
「ひぃいいいいぃぃーーーっ!!?」
「た、助けて―――」
「こ、殺され―――」
驚愕・動揺・混乱していて戦闘にすらならない大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊に、大魔王エリュドルスが追い討ちの攻撃を仕掛ける。
「くらえ、ザコども!」
そこで大魔王エリュドルスが両手を前方に突き出して、右掌からは "蒼色で極寒の凍結・大型光線"【凍氷魔掌】と、左掌からは "紅色で灼熱の火焔・大型光線"【獄焔魔掌】を、それぞれ放出させて、それらを大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の方へ向けて砲撃する。
うわぁぁあああああぁぁぁーーーーっ!!!
そこで大魔王デスゴラグションの先行精鋭部隊の断末魔がこだまする。
相変わらず大魔王エリュドルスは最前線で行動するよな?
実はあんまり良くない事なんだけどね。




