220、まずは余自らが相手をしてやろう!
●【No.220】●
ここは大陸の『東の岬』であり、その向こうから先が海である。
この『東の岬』に大陸中から魔族や魔物が集められていて、港の砦内部に魔族が、港の砦周辺に魔物が、それぞれしっかり固めて守っている。
この『東の岬』から先の海からやって来る敵は、この『東の岬』を必ず通過しないと、その先にある大陸内部の国々や『冥道郷』に行く事さえできない為、まずこの『東の岬』さえ守備していれば、取り敢えずは大丈夫なハズだ。 またこんな時のために魔族たちが、この『東の岬』の港に砦を築いて要塞化している為、敵からの守りも万全である。 さらに海からだけでなく、空から来る敵に対しても、灯台みたいな高い塔を作って、あらゆる侵攻に備えているので、完全に抜かりがないハズ。
つまり、それでもここの侵攻を許してしまえば、守る側の落ち度・マヌケさか、攻める側の優秀さ・一枚上手か、というように、あとは魔族の性能・実力の差であろう。 いうなれば、オブリルスやクノシルスたちにとっては、せっかく大魔王エリュドルスから大魔公にまで取り立ててくれたのに、それに泥を塗る形となり、まさに上位魔族の威信・沽券・プライドに関わってくる。 なにがなんでも、たとえ殺されようとも、絶対に死守せねばならないのだ。 だからこそ、ここは気合いを入れて頑張るしかないのだ。
「さぁ、来るなら来やがれ!」
「あぁ、そうだぜ! たとえ死んでも喰らいついてやるぜ!」
「やれやれだわ。 意気込むのもいいけど、あんまり気負うなよ。」
「ケッ、やかましい!」
「フン、余計なお世話だ!」
「はぁー、やれやれだよ」
明らかに気合いを入れて頑張ろうとするオブリルスやクノシルスの熱気に対して、相変わらずデイラルスは冷静沈着に冷めた目で見てる。 とにかく今時の女子高生みたいな対応を見せるデイラルスに対して、熱狂的な熱血漢を見せるオブリルスとクノシルスの二人。 ハタから見ても、なかなかオモシロイ光景である。
ここでデイラルスが海の方を見つめながら、少し黙って考え込む。
━ーおかしいわ。 確かに海の方から敵の邪悪な気配は感じられるのに、こちらに向かってくる様子がないわ。 一体何故? ―――ん? いや、違う。 これは……敵の気配の数がどんどん減っている……? ま、まさか……本当に……あのお方が……っ!?ー━
そこでデイラルスが海の方を睨み付けた。
キィッ!
ー-ー・●・ー-ー
ここは『東の岬』より、はるか東側の海。 その海上では、強力な紫色人型の上位魔族や褐色人型の中級魔族や朱色人型の最下位魔族や漆黒の凶悪な魔物など、大魔王デスゴラグションが選抜・派遣した精鋭部隊が浮遊して、続々と『東の岬』に向かって侵攻中である。
なかなか強そうで恐そうな、ここの連中とは違う別の大陸での魔族や魔物が、悠々と海の上を歩いてくる。
だがしかし、そこに突如として―――
その行く手を遮るようにして、漆黒のフード・ローブ・マント姿の人影が、その侵攻してきた大魔王デスゴラグション精鋭部隊の目の前に現れた。
それに気づいた敵のリーダー格の上位魔族が、その行く手を遮った漆黒のフード・ローブ・マント姿の人影に声をかけた。
「なんだ、キサマはっ!?」
「………」
「おい、お前に聞いている。 答えよ、黒ローブ野郎!」
「………」
「おい、なんとか言ったら、どうだぁ!」
「………」
ズゴゴゴゴゴォォォ―――
するとなんと無口の漆黒のフード・ローブ・マント姿の人影から、突然左腕を前方に突き出してきて、その左掌からは、オレンジ色で放射線状の炎を放出させていき、目の前にいた大魔王デスゴラグション精鋭部隊に攻撃した。
「な、なにっ!!?」
「ま、まさか……アイツはぁ……っ!?」
いきなり攻撃されて驚愕する敵のリーダー格の上位魔族は、思わずジャンプして避けたけど、不意をつかれ避けきれなかった者や後方にいて逃げ遅れた者は、すぐに焼失してしまった。
ズボボボォン!
「あ…あ…あ……なにぃ~~~っ!!?」
「マズイぞ! 今の一撃で……我が戦力がぁ……!」
「キサマァ! いきなり何をするつもりだぁ!!」
「……何をするつもり……だと? ふふふ……マヌケめが、この大魔王エリュドルスが支配・統治するこの大陸に、のこのこやって来ておきながら、今更ながら、まだそんな戯言をほざくと言うのか……? このマヌケどもめ!」
「……えっ、大魔王エリュドルス……だと……??」
「……そ、そんなバカな……まさか……大魔王自ら……??」
「ちょっと待てぇ!!? は、話が違うぞっ!!? 大魔王がこんな所まで来るなんてぇ……っ!!?」
「死ね! 我が領土・大陸を侵す愚か者めがぁ!」
なんということなのか!
やっぱり、この漆黒のフード・ローブ・マント姿の人影とは、大魔王エリュドルスのことだった。
あの大魔王エリュドルスがこんな海上の最前線から、大魔王デスゴラグション精鋭部隊を迎え撃つなんて、当の大魔王デスゴラグション精鋭部隊は全く想定しておらず、予想外の出来事にすっかり動揺・混乱していた。
ある意味、この大陸のラスボスでもある大魔王エリュドルスが、動揺する相手に先行単独で戦闘を開始するつもりだ。
『ヒヒヒ、エリュドルスめ。
やはり直接来やがったか。 ヒヒヒ』
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