219、『東の岬』と『冥道郷』
●【No.219】●
この大陸の東側にある『東の岬』にて、深夜未明―――
その日は満月が、とてもキレイに輝く明るい夜である。
この『東の岬』いう所に、上位魔族のAクラスで大魔公のオブリルスとクノシルスの二人が、『魔族の国』から沢山の優秀で精鋭の魔族たちを引き連れて、『東の岬』の港の砦までやって来た。 さらには同じく大魔公デイラルスも、この大陸に散らばる沢山の魔族や強力な魔物たちを引き連れて、『東の岬』の港の砦までやって来た。
その『東の岬』の港の砦には、三人の大魔公と、沢山の優秀で精鋭の魔族や沢山の強力な魔物などが、一堂に会して集合している。 つまり、この大陸にいる魔族や魔物のほとんどが、ここに集まってる訳だ。
早速だが、三人の大魔公の指示の下、集められた強力な魔物たちが、『東の岬』の港の砦周辺をガッチリ固めており、さらには集められた優秀で精鋭な魔族たちも、『東の岬』の港の砦内部をガッチリ固めており、完璧に『東の岬』を包囲して守備している。
この『東の岬』とは、もともとは大陸の東側・北部にある港町のことである。 その後で、この地を支配してきたギドレファナス王国が内陸部へ移動した為に、この港町は放棄されており、今では誰もおらず、街があった形跡・残骸だけが残っている。 現在では、ここを魔族たちが要塞化させており、外部から海を渡って攻めてくる敵に対して備えた岬になっており、また港の砦とは、港全域に高い板壁を作って攻防の要としており、灯台のような高い塔も作られている。
一方で、上位魔族のAクラスにして大魔公のギロリルスが、自身の優秀で精鋭な部下たちを引き連れて、この広大な敷地にある『冥道郷』を部下たちと共にガッチリ固めて守備している。
この『冥道郷』とは、もともとはギドレファナス王国の複数ある街のひとつだったけど、そのギドレファナス王国が内陸部へ移動した為に、この地も放棄されており、今では建物などは破壊されて更地にされている。 この広い空間を利用して、よくイベントや大会などが開催されていたけど、それも年々、人間が利用を制限・減少していき、今では魔族や魔物たちのたまり場となっており、いつしか魔族や魔物たちの間で、ここを『冥道郷』と呼ばれるようになった。 ちなみに名前の由来は不明である。
また『東の岬』と『冥道郷』との間にある森林小道の森林の中に、上位魔族のAクラスで大魔公ウエルルスが一人で隠れている。 そのウエルルスは部下や仲間などを引き連れておらず、あえて一人だけで、この森林小道を守るつもりでいる。
ここで大魔公の今回の作戦・計画が、次のこんな感じになっている。
基本的には、まず大魔公軍のほとんどを『東の岬』に集中させて、総力戦で侵攻してきた大魔王デスゴラグションの精鋭部隊を全滅させる。 そこで仮に討ち漏らしても、さらに侵攻してきた大魔王デスゴラグションの精鋭部隊を『冥道郷』まで誘き寄せて、その『冥道郷』にいる全戦力と、背後から最強のウエルルスが挟撃して撃滅させる。 これで大魔王デスゴラグションの精鋭部隊も一巻の終わりである。 朝になる前に事が終われば、ベストだけど、目標は勿論、短期決戦である。 何故なら長期戦になれば、こちら側にも不利・不具合が生じるかもしれないからだ。
ここで全ての準備を終えて、一息ついてる大魔公たちが、それぞれ感想を述べていた。
「ふ~う、これであらかた準備は終了したな。 だがしかし、奴らの気配が依然として感じられるぞ。 もうすぐそこまで来ているようだな。」
「ほ~う、ひとつ疑問があるんだが、奴らは一体どうやって、ここまでやって来るつもりなのだ?」
「………」
「ふん、それなら船で海を渡って、ここまで来るか、それとも空を飛んで、ここまで来るか、なんかあるだろう?」
「ほ~う、なるほどね。 それなら奴らの中に『ワープ能力』とか出来る奴がいたら、どうするつもりなのだ?」
「………」
「さぁねぇ、いずれにして、探し出して返り討ちにするだけさ。 どのみち、邪悪な魔族なら邪悪な気配が感じられるハズだから、それを辿っていけば、きっと見つかるハズさ。」
「ほ~う、なるほどね。 随分と気楽なものだな。 オブリルスよ」
「なんだとぉ! クノシルスッ!」
「………」
相変わらず仲が良いんだか悪いんだか、いがみ合ってるオブリルスとクノシルスの二人をよそに、ある事について、デイラルスが密かに考え込んでいた。
「………」
━ーこのバカ二人は気づいてないだろうけど、大魔王エリュドルス様も独自に動き始めているようね。 まさか、大魔王エリュドルス様自らが大魔王デスゴラグションの精鋭部隊を相手にするというの? もし、そうならアタシたちは、大魔王エリュドルス様が討ち漏らした連中の殿軍に終始するかもしれないわねー━
━ーでも、一体何の為に……? と思うけど、そんなことアタシたちがいちいち考える必要もないかしらね? 偉大なる大魔王エリュドルス様のお考えを詮索するなど、アタシたちはただ言われた命令をこなしていくだけだわー━
そこでデイラルスが、フッと笑いながら一瞬だけ両目を閉じていて、再び目を開けて空を見上げて、満月の方を見つめていた。
『ヒヒヒ、次回もお楽しみに。 ヒヒヒ』




