218、大魔公就任式:2
●【No.218】●
この大陸の北側にある『魔族の国』の中にある『大魔王城』の奥の方にある『玉座の間』の中では、ただいま大魔公の就任式を行ってる最中である。
正式に就任する大魔公は全員で六人。
ウエルルス、ギロリルス、オブリルス、クノシルス、デイラルス、テミラルスの六人である。 いずれもAクラスの爵位と上位魔族の位地にある名門の魔族である。 まずマトモな魔族で初登場したのが、のちにヴァグドーたち一行と同行する事になったテミラルス。 次にテミラルスの姉として登場・活躍してるのが、大魔王エリュドルスの側近・デイラルス。 さらに大魔王エリュドルスの上位魔族粛清にも耐え抜いてきたオブリルスとクノシルスの友人関係の二人。 実は新進気鋭で名門出の上位魔族になったばかりの鎧戦士・ギロリルス。 そして、最後に古くから大魔王エリュドルスのそばで仕えてきた最側近の謎の魔族・ウエルルス。
この六人こそが魔界・魔族の中でも憧れであり名誉でもある、大魔公の称号を名乗ることが許された優秀な魔族である。
その大魔公とは、称号であり階級であり爵位でもある。
それは大魔王に次ぐ地位であり、現状の最高位である "魔の公爵" よりも高い地位にある。 つまり、実名共に権力的にも実力的にも魔力的にも、大魔王の次に偉い者こそが大魔公なのである。 そして大魔公には、ある権限が与えられてる。
その大魔公の資格とは、Aクラスの上位魔族の者であり、大魔王が独断で決めた者だけが、大魔公に就任できる。
この六人の大魔公就任式は、予定通り順調に進んでいて、予定されたプログラムを全てこなしていき、無事に終了した。 これにより六人は正真正銘・大魔公となった。
「あははは、これで立場は互角だな? ウエルルスにギロリルスよ」
「ああ、その通りだ。 我々も遂に大魔王様に認められて、これで大魔公の地位になった」
「………」
「ふっ、そうだな」
「やれやれ、アタシたちも大魔公になっちゃったみたいだねぇ。 姉貴」
「ええ、そのようね。 テミラルス、大魔公は大魔王様の次に偉い地位だからね。 これからも頑張んないといけないね」
「まぁねぇ、そうだねぇ」
「ふっ、なるほど……これで六大魔公か………。」
「………」
ここで大魔公就任式が終了して、六大魔公の面々が、それぞれ感想を述べている。
するとまず大魔王エリュドルスが大魔公テミラルスに最初の命令を出した。
「よし、これで大魔公就任式は終了する。 テミラルスは再びヴァグドーたち一行の下へ戻るがいい。」
「はい、判りました。 大魔王様ぁ」
そのテミラルスが踵を返して振り向いて、このまま玉座の間の大きな扉を開けて、外に出ていき立ち去っていった。
次に大魔王エリュドルスが今度は大魔公のオブリルスとクノシルスの二人にも命令を出した。
「オブリルス・クノシルスよ。 そなたたちはこの魔族の国にいる精鋭の魔族や強力な魔物を引き連れて、そのまま『東の岬』まで行って、そこで足止めするのだ。」
「「はっ、判りました。 大魔王様」」
そこでオブリルスとクノシルスの二人も踵を返して振り向いて、このまま玉座の間の大きな扉を開けて、外に出ていき立ち去っていった。
次は大魔公デイラルスにも命令を出した大魔王エリュドルス。
「今度はデイラルスよ。 この大陸に散らばる魔族や魔物などをかき集めて、それで『東の岬』まで行って、足止めの協力をするのだ。」
「はい、判りました。 エリュドルス様ぁ」
そのデイラルスも踵を返して振り向いて、このまま玉座の間の大きな扉を開けて、外に出ていき立ち去っていった。
最後に大魔王エリュドルスが大魔公ギロリルスにも命令を出した。
「よし、ギロリルスよ。 そなたは自分の精鋭を引き連れて、そのまま『冥道郷』まで行って、そこで待機・伏兵せよ。 奴らが攻めて来たら、迎え撃て。」
「はっ、判りました。」
ここでギロリルスも踵を返して振り向いて、このまま玉座の間の大きな扉を開けて、外に出ていき立ち去っていった。
そこで大魔王エリュドルスと大魔公ウエルルスが話し合っている。
「これで打てる手は全て打ったことになる。 相手が魔族の精鋭50名ならば、これで十分なハズだ。」
「はっ、しかし、相手はあの地球の護り神〈アクナディオス〉ならば、この我も戦場に赴き、対峙せねばなりません。」
「ふむ、まさにその通りだ。 ウエルルスよ、そなたは『東の岬』と『冥道郷』との間にある森林に潜み、奴らが攻めて来たら、迎え撃て。」
「はっ、判りました。 エリュドルス様」
そう言うと大魔公ウエルルスも、その場で姿が消えてしまい、このまま立ち去っていった。
この『玉座の間』の中には、玉座に座る大魔王エリュドルスだけとなった。
「…………」
無言のままの大魔王エリュドルスは、一体何を思う?
これから悪魔神トニトリエクルスと対決する前に、あの〈地球神アクナディオス〉に取り憑かれた大魔王デスゴラグションと対峙することになる大魔王エリュドルスたち。
これは果たして運命なのか、それとも偶然なのか、何者かの手によって、四大魔王を翻弄する者・・・それは一体誰なのか・・・?
今まさに・・・大魔王同士の戦闘が始まろうとしている・・・?
『ヒヒヒ、とうとう遂に動くのか? あの大魔王エリュドルスの誇る精鋭の軍隊がよ。 ヒヒヒ』