217、大魔公就任式:1
【謹賀新年】
あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
●【No.217】●
ここで大魔王デスゴラグションに取り憑いてる〈地球神アクナディオス〉は静かにゆっくりと無言で考える。
まさか……本当に、わざわざ警告しに来ただけなのか?
あの大魔公ウエルルスが警告だけで終わりではあるまい。 否、奴は大魔王エリュドルスの犬だ。 やはり、何かを探りに来ていたか? そのように考えた方が妥当だね。 では、一体何を探っていた?
………。
・・・。
イーヒヒヒ、あれこれ考えても仕方ないね。 自分がやるべき事をただやるだけ。 ―――そう、それだけ……ヒヒヒ。
相変わらず大魔王デスゴラグションは玉座に座り、結局は俯いたままの状態で無言を貫いており、この〈地球神アクナディオス〉もまた無言のままの状態で、少し浮いて立っているだけ。
現在、ヴァグドーたち一行のいる大陸の北側の高い岩山に囲まれた『魔族の国』にて、その魔族の国の中にある『大魔王城』の奥の方にある『玉座の間』の中では、
その奥の方で、玉座に座る大魔王エリュドルスの右側に、上位魔族の大魔公ギロリルスが立っていた。
そこに上位魔族の大魔公ウエルルスが、玉座に座る大魔王エリュドルスの目の前に、その姿を静かに現した。
勿論、その事に気づいた大魔王エリュドルスと大魔公ギロリルスが話しかける。
「ん、ウエルルスか?」
「それでどうだった?」
「はっ、エリュドルス様の推察通りに、やはり地球の護り神〈アクナディオス〉が裏で操っていました。」
「すると、やはりあのバケモノが大魔王デスゴラグションを操っていたのか?」
「はっ、それもいとも容易く……」
「……そうか……」
「なんと大魔王を簡単に操るとは、本当にただの神ではないな。」
「ヤツは自分の事を特別な存在であり、突然変異などと言っていた。 自分だけがこの世界を支配する権利があるそうだ。」
「なるほど、典型的な独裁者の思考のようだな。」
「これは厄介なヤツだな」
「はっ、それと大魔王デスゴラグション様とは―――」
この後も大魔公ウエルルスが、先程の一件を一通り報告すると、すぐに大魔王エリュドルスの座る玉座の左側に移動して、少し浮いて立っていた。
この大魔王城の地下にある一室には、上位魔族のオブリルスとクノシルスの二人が一緒にいた。 別に牢獄に閉じ込められてる訳ではなく、ここが彼らの部屋なのだ。 この二人は、それぞれベッドの上に仰向けで寝ていて、しばしの休息をとっている。
「やれやれ、ウエルルスとギロリルスが大魔公に出世したか…。」
「ふっ、俺たちは大魔王様を怒らせているからな。 上位魔族のままだろうな…。」
まるで独り言のように、この二人が、それぞれ話し合っている。
「それにしても大魔王デスゴラグション様が、本当にこの大陸まで侵攻してくるのか?」
「ああ、そうらしいな。 もしかしたらもう、そこまで攻めてきてるかもな。」
「そうなったら、俺たちも戦うことになるだろうな。 俺たちにもプライドがある。 あちらの上位魔族どもに、この大陸を蹂躙されるワケにはいかないからな。」
「当たり前だ。 なんで他の大陸の上位魔族どもが、この大陸を好き勝手にできると思っているのだ。」
「しかし、向こうの大陸の上位魔族の実力は、一体どの程度なのか、少し気になるところではあるな。」
「ああ、確かに他の大陸の上位魔族の能力が、一体どの程度のモノなのか、少しは気になるところだけど、受けて立つしかあるまいな。」
「ああ、勿論だ。 いくらなんでも滅茶苦茶すぎるからな。 ここはせめて抵抗させてもらうぜ。」
そこにボロボロ布を頭から被った小さなおじいさん型の使い魔が小型ランプを持って、オブリルスとクノシルスの二人が、ベッドの上で寝ている部屋まで歩いてやって来た。
「オブリルス様、クノシルス様」
「―――ん? なんだ?」
「お前か、何か用だ?」
その使い魔に気づいたオブリルスとクノシルスが話しかけてきた。
「はっ、お二人に大魔王エリュドルス様がお呼びでございます。」
「な、何っ!!?」
「そ、そうか………」
「至急、玉座の間までお越し下さい。」
「そうか、わかった」
「ああ、わかった。 すぐに行くと伝えてくれ。」
「はっ、かしこまりました。」
するとここで使い魔が踵を返して振り向くと同時に姿が静かに消えていた。
「それでは行くか。 クノシルス」
「ああ、そうだな。 オブリルス」
そこでオブリルスとクノシルスの二人が、自分の寝ていたベッドから立ち上がって、そのまま歩いて部屋を出ていった。
オブリルスとクノシルスの二人が玉座の間までやって来ると、玉座に座る大魔王エリュドルスと玉座の左右には、ウエルルスとギロリルスの二人が立っていて、また玉座の目の前には、デイラルスとテミラルスの二人も既に立っていた。
そこにオブリルスとクノシルスの二人が、玉座の間の目の前まで歩いて近づくと、すぐさま跪いて頭を下げた。
「来たか? 二人共」
「はっ、お呼びですか? 大魔王エリュドルス様」
「これより大魔公の就任を行う。」
「―――えっ!!?」
「だ、大魔公の就任……ですか? しかし、大魔公は既にウエルルスとギロリルスの二人が―――」
「大魔公は余が決めた称号だが、特に人数は決めていない。 就任にはAクラスの上位魔族であることが絶対条件である。 当然、そなたたちにもその資格がある。」
「「………」」
「そこでデイラルス、テミラルス、オブリルス、クノシルスの四人も、新たに大魔公に就任することにした。」
「―――えっ!!?」
「わ、我々も大魔公に……ですかぁ!?」
「ああ、そうだ。 そなたたちも大魔公だ。 そなたたちを大魔公に就任する。」
「………」
「………」
「………」
「なんだかアタシも偉くなったモノだねぇ。」
「ま、まさか……本当に俺たちも大魔公に……っ!?」
「おぉ……お、俺たちも……大魔公に……っ!?」
まずウエルルスとギロリルスとデイラルスの三人は、既に知っていたのか、冷静かつ無口であり、テミラルスは相変わらずの口調をしていて、次にオブリルスとクノシルスの二人は、予想外の出来事に驚愕していた。
「よし、これより大魔公の就任式を執り行う。 皆の者、準備せよ」
「「「「はっ!」」」」
ウエルルスとギロリルスとオブリルスとクノシルスとデイラルスとテミラルスの六人は、ここに大魔公になったことで、正式に大魔公の就任式を執り行うことになった。
『ヒヒヒ、どうやらこれで大魔公が全員揃ったようだね。 ヒヒヒ』




