203、最後の決勝戦・バスターB
●【No.203】●
大会三日目の午後、決勝戦・バスター
ヴァグドー対勇者アドーレ
ここ最終闘技場にて
既に最後の試合・決勝戦は開始されている。
まずは勇者アドーレが八本の黄金の剣を使用して、ヴァグドーの周囲から全方位同時に、ヴァグドーめがけて一斉に攻撃(雷撃)する【ストリンガー・ドラグーンソード】で、取り敢えずヴァグドーを牽制する。
だけど、ヴァグドーは伝説の皇剣【消滅罪の剣】を巧みに素早く使用して、勇者アドーレの【ストリンガー・ドラグーンソード】の攻撃(雷撃)をことごとく防いだり避けたりしていく。
やっぱり、ヴァグドーも勇者アドーレのある程度の攻撃方法は熟知している。
ここは明らかに防いでくるだろう。
また勇者アドーレもヴァグドーの実力は、ある程度熟知してるはず、ここはまず警戒と牽制に来るだろう。
だがしかし、両者の実力が最強であれば、拮抗することに、戦闘は激化することになる。
それは両者共に、重々承知している。
「やっぱり、ヴァグドーさんには通用しないですか? でも黄金の剣は、他にも使い道がありますよ。」
「……?」
ここで何かを感じたヴァグドーが瞬時に、八本の黄金の剣から距離をとって、さらに後方にさがった。
「くっ、相変わらず勘が鋭いですね。 ヴァグドーさん」
「やれやれ、またアドーレから遠ざかってしまったわい。」
何かの危険を察知して、素早く後方にさがったヴァグドーだが、これでさらに勇者アドーレとの距離が離れてしまった。
接近戦に特化して、近距離にこそ十二分に力が発揮するヴァグドーにとっては、これはかなりの痛手である。
「ちっ、ちっとも届かんわ。 これは仕方あるまいのう」
「……?」
ダッダッダッ!
なんとヴァグドーが突然、猛烈に全速力をもって、勇者アドーレの所まで走り出した。
「な、何ぃっ!!?」
「近づかなきゃぁ、話にならんわ!」
それを見た勇者アドーレが困惑・動揺して、慌てて八本の黄金の剣をヴァグドーの方に向けて、全方位同時に剣先から稲妻のレーザービームを一斉に発射させるけど、猛烈に全速力で駆け抜けるヴァグドーには、全く当たらないようだ。
ダッダッダッ!
そのまま一直線に勇者アドーレを狙うヴァグドー。
すると勇者アドーレも伝説の皇剣【磨羯龍の剣】の刀身を横にして前面に構えた。
そこでヴァグドーも勇者アドーレの所まで駆け上がると、左手で持った伝説の皇剣【消滅罪の剣】を振り上げて、勇者アドーレに斬撃する。
だがしかし、勇者アドーレも伝説の皇剣【磨羯龍の剣】の刀身で、ヴァグドーの斬撃をしっかり防御する。
ガッキィーーン!!
ヴァグドーの「縦の刃」と勇者アドーレの「横の刃」の、お互いの剣が、丁度十字になるように交わって激突する。
その瞬間に起きた衝撃波と轟音が、最終闘技場にこだまし鳴り響いている。
「むっ!」「くっ!」
このもの凄い力のぶつかり合いで、両者が思わず後方にジャンプして後退する。
ダッ! ダッ!
またお互いに距離をとったヴァグドーと勇者アドーレの二人だが―――
「相変わらず、なんという凄い威力ですか……ヴァグドーさん」
「やれやれ、また離れてしまったわい。 これでは一からやり直しかの?」
「このまま、いたずらに攻め続けるのは、得策ではありませんね。 さて、どうしますか?」
ここで勇者アドーレが少し考える。
ここで攻撃方法や戦法を変更する必要があるようだ。
確かに【ストリンガー・ドラグーンソード】は、中距離からの攻撃、敵を全方位から囲むようにして、同時に一斉に攻撃するので、ある程度の戦闘には有効である。
しかし、そもそも通用しなければ意味がなく、この場合は牽制になるか、ならないか程度の技でしかなくなる。
明らかに、今のヴァグドーの素早い動きを見ればわかるとおり、この【ストリンガー・ドラグーンソード】は牽制にもなっていない。
それならば、次は【ストリンガー・ドラグーンソード】の攻撃方法を変更するしかない。
ボクの【ストリンガー・ドラグーンソード】は、ただ稲妻のレーザービームを発射させるだけではないですから。
ここからの攻撃は、少しアレンジさせてもらいますよ。 ヴァグドーさん!
そこで勇者アドーレが、八本の黄金の剣を再びヴァグドーの周囲に展開させていて、今度はヴァグドーめがけて、そのまま八本の黄金の剣が剣先から突撃していく。
「おっ、戦法を変えおったな? アドーレよ」
「………」
ガキン、ガキン、ガキン!
勿論、ヴァグドーも伝説の皇剣【消滅罪の剣】の刀身を使用して、自分に向かってくる八本の黄金の剣を、巧みに鋭く叩き防御していく。
だがしかし、ここで―――
ボォン、ボォン、ボォン!
「むむむっ! これはっ!」
「よし、いいぞ!!」
なんと黄金の剣の剣先と、伝説の皇剣【消滅罪の剣】の刀身が接触する瞬間で、小規模の爆発が起きていた。
勇者アドーレの八本の黄金の剣による【ストリンガー・ドラグーンソード】は、従来の稲妻のレーザービームの離れた攻撃から、剣先に触れると爆発する突撃型へ攻撃方法を変更してきた。
多彩な攻撃能力を持つ勇者アドーレの真骨頂とも言える。
「やっぱり、さすがに色々とやって来るのう。 アドーレよ」
「ふふふ、まだまだこれからですよ。 ヴァグドーさん」
すっかり感心したヴァグドーと調子づいた勇者アドーレ。
この最強二人のあまりにも凄まじい攻防に、最終闘技場の一般観客席が静まりかえっていた。
しぃーーーん…
まだまだ最後の試合は続きます。
果たして、ヴァグドーと勇者アドーレはどちらが勝利するのか?
ここからが楽しみですね。




