201、君たちは会話・質問をしたことがあるかっ!?
今回はヴァグドーと勇者アドーレの決勝戦の前の少しの時間で起きた出来事のお話です。
●【No.201】●
大会三日目の昼前、
大型円形闘技場2にて
まだ決勝戦開始までは、少し時間がある。
とある控え室の中で―――
その控え室とは、普通の広さの完全個室となっており、部屋に医療用の白いベッドがあって、そこに先程勇者アドーレとの戦闘のすえ、敗北・気絶した勇者見習いのモモネが静かにぐっすり眠っている。
そのモモネは、特に目立った外傷もなく内出血や背中の骨などにも異常がなく、ただ気絶してるだけのようであり、取り敢えずは大丈夫のようだ。
この控え室には、医療用の白いベッドの横に椅子があって、そこに悪魔神オリンデルスが座っていて、その背後には、ヴァグドー・勇者アドーレ・大魔女シャニル・カグツチ・ロンギルス・エクリバ・ニーグルン姫・ルドルス将軍・アルベルス・アルラトス・テミラルス・勇者アクナルスが同室している。
さて、ここから話し合いが開始される。
―――のだが、その前に取り敢えずは、ヴァグドーと勇者アドーレの決勝戦進出、おめでとうございます。
まず最初に口を開いたのが、ヴァグドーからである。
「その娘は大丈夫なのか?」
「ああ、特に問題ないようだね」
「そうですか、それは良かったですね」
「それにしても、あのモモネと言う娘は、お前さんの娘と言うのは、本当のことかい?」
「ああ、そうだね。 ボクの娘のようだね」
「……?」
「こいつは驚きましたね。 まさか本当だったとは……」
「……えっ、悪魔神に娘……っ!?」
「あらぁ~ やっぱりそうなのねぇ~♪」
「……えっ、あ…悪魔神って……子供が出来るのですか……っ!?」
「ふふふ、驚いたかい? 一応は、この身体は人間の身体と同じ構造なのでな。 この程度の事は造作もないことだね。」
「ということは、悪魔神は人間の女性と結婚したということなのか?」
「……ケッコン……? あぁ、人間特有の夫婦になる儀式のことか? それはまだしていない」
「ほーう、そうか」
「そうなんですか」
「ねぇ、悪魔神オリンデルス。 その娘は、あの戦士ラグレテスの血をひいてるわよね? もしかして、ラグレテスの娘と結ばれたの?」
「あぁ、その通りだね。 さすがに大魔女シャニルは知っていたか?」
「……ラグレテス……?」
「あれ、その方はシャニルさんのお知り合いの方ですか?」
「………」
「そんなことより、ヴァグドーと勇者アドーレの決勝戦進出、おめでとう。」
(ここで何故か、あのオリンデルスが話をはぐらかして、別の話題をふった?)
「おう、ありがとう!」
「はい、どうもありがとうございます。」
「でも、これは凄いことになりましたよね? 果たして勝負がつくのでしょうか?」
「でも、ボクはヴァグドーと勇者アドーレの二人が、端っこのブロックにいった時点で、決勝戦で当たる予感はしてたよ。」
「へぇ~ さすがねぇ~♪ 私は全然解らなかったわぁ~♪ さぁて、本当に決着がつきますかねぇ~♪」
「そうじゃのぉう~」
「そうですよねぇ~」
「………」
「そんなことより、悪魔神に聞きたいことがある。」
(ここで何故か、あの勇者アクナルスが話を遮って、別の話題をふった)
「なんだい?」
「伝説の皇剣は本来、悪魔神四天封皇剣と呼ばれ、四本しかないはず。」
「………」
「なのに、ここ最近で四本以上の伝説の皇剣が確認されている。 これは一体どういうことか?」
「ふっ、君は少し勘違いをしている。」
「……何っ!?」
「……なんだと!?」
「そもそも悪魔神は全部で三人いる。 悪魔神一人につき伝説の皇剣が四本必要なら、最低でも伝説の皇剣は全部で12本あることになる。」
「「「…っ!!?」」」
このオリンデルスの発言に一同が驚く。
確かに悪魔神四天封皇剣は、悪魔神討伐に四本は必要。 ならば、悪魔神が三人いれば、おのずと12本が必要となる。 今まで悪魔神は一人しかいないと思い込んでいたので、この衝撃の事実には驚愕するしかない。
「へぇ~ なるほどねぇ~」
「な、なるほど、そういうことなのか? 確かに言われてみれば、その通りだ。」
「なるほど、単純計算で言えば、伝説の皇剣が12本ないと、おかしいよのう。」
「しかし、何故そのような情報をボクたちに教えるのですか? 悪魔神よ」
「ふっ、別に秘密にしてるわけじゃない。 少し考えればわかること。 それに伝説の皇剣が本当に活躍するのは、完全復活した真の悪魔神に対してであって、ボクたちはまだ復活もしていない。 その伝説の皇剣が完全に力を発揮するには、まだまだ時間がかかるのさ。」
悪魔神オリンデルスはよほど余裕なのか、まるで他人事のように話している。
「……質問は以上かな?」
「ならば、ワシからも質問させてもらおうかの。 何故お前さんは―――」
「ふっ、何故ボクがヴァグドゥルスのことを知っているのか、だよね?」
(ここでもやっぱり、オリンデルスがヴァグドーの質問も遮ってきて、逆に質問で返してきた)
「そうじゃ。 その通りじゃ」
「ん~~~」
ここでオリンデルスが、少し考え込んでいる。
「もしかして、この質問は秘密かの?」
「いや、別に秘密というわけではなく、その質問に対する答えが長すぎて、今ある時間では少し足りないかもしれない。 ヴァグドーよ、君もゆっくりじっくり聞いて納得したいだろう?」
「ふむ、確かにそうじゃが……」
「そこで提案がある」
「一体なんじゃ?」
「ボクとモモネも君たちに同行させてもらえないだろうか?」
―――えっ、悪魔神が同行・味方に……??
次回も、今回の話の続きをする予定ですので、お楽しみ下さい。