200、憧れの準決勝戦第二試合:3
●【No.200】●
ズバシュッ!
もの凄い勢いで大型の蒼白いエネルギーの光刃がふたつ、反対側にいる勇者アドーレの方に向かって飛んでいった。
シュッ、シュッ、シュッ、ジャッキィーン!
「これは仕方ありませんね」
そう言うと、勇者アドーレが八本ある黄金の剣を、全部自分の目の前に集結させて、八本の黄金の剣が円形に固定されて浮遊しており、勇者アドーレを守る盾の役目をしている。
それと勇者アドーレが、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を、剣先を下側にした状態で縦に構えていて、自分自身を守る盾の代わりにしている。
サッ、グッ!
これは勇者アドーレが盾を二重にした状態となり、これで果たして、モモネの特殊な攻撃を防ぎきれるのか?
「さぁ、これでどうですかね?」
次いで勇者アドーレが、両足にも力を入れて地面に立っており、そこから万全の態勢で、モモネの特殊な攻撃に挑んでいる。
準備が完了した勇者アドーレが、再びモモネの方を見ると、なんとモモネの姿が既に消えていた。
「…っ!!?」
……な…何っ、消えた…っ!!?
―――彼女が…居ない…っ!!?
い、一体どこに行ったのですかっ!!?
などと勇者アドーレが考え込むうちに、消えたはずのモモネが、勇者アドーレの背後から少し離れた場所で突如現れた。
シャッ、ズドォーン!
そのモモネが、伝説の皇剣【神納覇の剣】の剣先を前方に突き出して、そこから強力で高速の大型のエネルギーの光砲を放出させていて、勇者アドーレの背後を狙う。
敵の前方には、大型の蒼白いエネルギーの光刃がふたつ、敵の後方には、強力で高速の大型のエネルギーの光砲が、それぞれ敵を挟撃する形で襲う。
これぞ【ストリンガー・デスティネーション・ソーサリー】の真骨頂である。
「くらえ必殺―――これで終わりでーす!!」
「…っ!!?」
ここで自身の背後に備えをしなかった勇者アドーレが、またしてもこの状況でピンチになっていた。
一方の一般観客席の一番後ろから観戦していた。
そのヴァグドーと勇者アクナルスと悪魔神オリンデルスの三人が立っていて、それぞれ静かに腕組みして、現在の試合の感想を述べていた。
「おっ、勇者アドーレ先輩。 現在結構ピンチみたいだけど、大丈夫なのか?」
「………」
「ふふふ、このままだと娘の奴、勇者アドーレに負けるな?」
「……えっ、何っ!!?」
「残念だけど、あの能力技は勇者アドーレには効かないかもな?」
「何故じゃ? 一見して、あの技は敵を前後に挟み撃ちにする上に、同時に二連続攻撃を可能にしておる。 かわす隙など見当たらないのじゃがな?」
「確かに、あの能力技は防御も回避も反撃も不可能だけど、唯一弱点がある。 それに勇者アドーレが気づいていれば、あの無敗で無敵の能力技は虚しく敗れ去ることになる。」
「……弱点だと……っ!?」
「ほーう、その弱点とは、一体なんじゃ?」
すると、そこでまた〈地球神アクナディオス〉が、突然モクモクと現れ出した。
『ヒヒヒ、それは上だよ。 ……上、ハハハ』
「………」
「……えっ、上……っ!?」
「…何、上じゃと…? それは一体どういう意味じゃ?」
『ヒヒヒ、そうそう。 だが見てればわかる。 彼がそれを体現してくれるはずだよ。』
そう言うと、ヴァグドーと勇者アクナルスと悪魔神オリンデルスの三人が、再び静かに試合の方を見ていた。
肝心の試合の方は―――
その勇者アドーレが、モモネの【ストリンガー・デスティネーション・ソーサリー】を前にして、絶体絶命のピンチを迎えていた。
そこで勇者アドーレが、自分の前後を確認して、前方から、もの凄い勢いでやって来る大型の蒼白いエネルギーの光刃のふたつと、後方から、もの凄い速度でやって来る強力で高速の大型のエネルギーの光砲を、目視で見比べている。
「………」
そして勇者アドーレが、前の大型のエネルギーの光刃のふたつと、後ろの大型のエネルギーの光砲が、自分にぶつかる瞬間で姿が一瞬で消えた。
ダァン!
「やったぁーーっ! 遂に無敗で無敵の勇者アドーレさんを倒したわぁーーっ!」
ここで思わずモモネが、なにやら勝利を確信して、大喜びする次の瞬間―――
ドッカァーーン!
この勇者アドーレのいた場所で、突然大爆発が起こり、モモネが放った大型のエネルギーの光刃と光砲が接触したことで起こる爆発に、プラスして勇者アドーレの爆発能力が加わったことによる大爆発である。
その肝心の勇者アドーレは、はるか上空にジャンプしており、なんとか無事であった。
「ひゃぁああっ!?」
ヒューウ、ドォーン!
一方のモモネが、その大爆発の衝撃と爆風により、一瞬にして、後方の壁までふっ飛ばされて激突、そのまま前のめりに倒れて気絶した。
「…き、きゅぅうう……」
ここで勇者アドーレが地上に降りてきて、両足が地面についていて、浮遊していた八本の黄金の剣が、勇者アドーレの着用してる黄金の鎧に装着された。
「はわわわ、そ…そこまで!」
審判が慌ててモモネの方に駆け寄り、モモネの状態を見ると、焦った審判が両手を天高く挙げて、左右横に振っている。 これはモモネの気絶により、戦闘続行不能を意味している。
ちなみに、今回の審判は大爆発が起きた場所から、かなり離れた場所にいたので、無傷で無事だったようだ。
「勝者・アドーレ!」
なんと、そこで遂に勇者アドーレが勝ち名乗りを受けた。 これで勇者アドーレも決勝戦進出である。
なんと言うことなのか!
決勝戦はヴァグドー対勇者アドーレに決定した。
ウワァーーッ!
オオォーーッ!
一般観客席からは、割れんばかりの大歓声が上がっていた。
決勝戦に進出する選手が、二人共に余所者同士であることは、おそらくロートアンリルス連合国が建国されて以来、初めてのことであろう。
また勇者見習いのモモネが、複数の関係者に運び出されるのを、勇者アドーレが少し離れた場所から静かに眺めていた。
再び一般観客席の一番後ろの方では―――
例の三人が話し合っている。
「なるほど、唯一の弱点とは、上空のことだったのか。」
『ヒヒヒ、普通はあんなにジャンプできる者など、そうはいないはずだから、限られた者にしか、アレはかわせないのだよ。』
「それにしても惜しかったな」
「やっぱり、負けてしまったね。 どうやらボクの娘も、まだまだ修業が足りないようだね。 ふふふ」
「……ん?」
「……娘……?」
そこで悪魔神オリンデルスが、踵を返して後ろに振り向き、そのまま立ち去ろうとした拍子に、ヴァグドーたちの疑問に答えた。
「ふふふ、そうだよ。 モモネはボクの娘だよ」
今回もまた攻撃や技とかでなく、何かの拍子と偶然で勝利してしまったようだ。
そして、おおかたの予想通りにヴァグドーと勇者アドーレが決勝戦に進出した。
やっぱり読者の皆さんも、既に判ってましたか?
では決勝戦もお楽しみ下さい。




