195、最強の準決勝戦第一試合:1
●【No.195】●
大会三日目の昼前、準決勝戦第一試合
ここからは遂に【ベスト4】の準決勝戦の2試合が行われていく。
大型円形闘技場1の一般観客席は、ほぼ満員・満席でもの凄い盛り上がりを見せており、観客席からの歓声・熱気が大変なことになっている。
ここにはヴァグドーを応援に来たカグツチやロンギルスやエクリバやテミラルスなどが一般観客席に座って試合開始を待っている。
勿論、大型円形闘技場1の特別観戦席には、こちらもアテナが座って試合開始を待っている。
予想外の出来事であるガルマンとギアンデ将軍の敗北にショックを受けつつも、それでもアテナは準決勝戦の2試合を見学・観戦しなければならない。
そうである。
今大会では、ベスト4の全員がいずれも外部・国外の選手で埋まっており、大会初の国内・身内の選手がいない状態である。
この大型円形闘技場1の中央には、選手であるヴァグドーと悪魔神オリンデルスの二人と、黒い服を着た高齢の男性の審判がいて、試合開始の準備と戦闘準備をしている。
確かに元の究極完全体ではなく、また試合というルールに則った制限ある戦闘とは言え、実質悪魔神との初戦闘となるヴァグドーがここにいる。
これは運命なのか、それとも宿命なのか、ヴァグドーと悪魔神オリンデルスの二人が遂に激突する。
ほっほっほっ
どうやら遂にワシが悪魔神と対決するようじゃな。
さて、ワシがどの程度の実力なのか、今のあの悪魔神相手の実力にどの程度まで通用するのか、まったくもって楽しみじゃな。
さぁ、最強無双伝説の始まりじゃな。
―――なるほど
これは確かに強そうだな。
さすがにボクでもこれは苦戦しそうだな。
まぁ、気楽にリラックスして闘うけどね。
さぁ、今の悪魔神の実力をほんの少しだけ、お見せしようかな?
試合前から既にヴァグドーと悪魔神オリンデルスのそれぞれの思惑が交錯する。
あとヴァグドーと悪魔神オリンデルスの二人は、お互いに距離をとって、審判の試合開始の合図を待っていた。
そして―――
審判の「始め!」の声と同時に、ヴァグドーとオリンデルスが勢いよく地面を蹴って、お互いに素早く急接近していく。
ダッ、ダッ!
ここで最強無双のヴァグドーと悪魔神オリンデルスの夢のような試合・一戦が開始された。
まず最初にオリンデルスが右拳を素早くヴァグドーの顔面に叩きつけようとするも、ヴァグドーが一瞬速く避けていて、今度はヴァグドーが右拳を素早くオリンデルスの顔面に叩きつけようとするも、オリンデルスも難なく避けていく。
次にヴァグドーが素早く左蹴りでオリンデルスの右頬を狙うが、オリンデルスが右腕で防御して防ぐと、次はオリンデルスが素早く左蹴りでヴァグドーの右頬を狙うが、ヴァグドーも右腕で防御して防ぎきった。
こんな調子で、二人は繰り返し接近格闘技を見せており、まるで某格闘漫画さながらの白熱した攻防を見せている。
この試合を見ている一般観客席からは、はじめはなかなかの盛り上がりを見せていたが、試合が進むにつれて、どんどん静かになっていった。
両者共に互角・拮抗した闘いを見せている。
だがしかし、それはただの互角ではなく、二人のあまりの凄さに、両者共に「最強の互角」と言わざるを得ないのだ。
さんざん、お互いに一瞬で接近格闘技を見せたあげく、二人共に後方にジャンプして、一旦距離をとって一息ついた。
オオォーーッ!!
ウワァーーッ!!
スゲェーーッ!!
あまりの激闘に歓声が消えて静まり返っていた一般観客席からは、割れんばかりの凄い盛り上がりを見せていた。
「……こ……これは……?」
特別観戦席に座って見学・観戦していたアテナも、思わず言葉を失うほどの驚愕ぶりである。
ここでヴァグドーとオリンデルスがお互いに見ながら―――
ほーう
さすがにやりおるのう。
これが悪魔神の完全ではないものの、ある程度の実力なのか…?
オリンデルスよ、お前さんならば、ワシに恐怖と絶望を与えてくれるのか…?
・・・
まさか、この悪魔神が人間相手に互角の勝負をしているとは…?
確かに、ボクの実力はまだまだ全然たいしたことはないけど、それでもたとえ人間最強と呼ばれる者であっても、このボクと互角に闘えるなどとは…?
―――あり得ないのだ…!
ここでもヴァグドーと悪魔神オリンデルスのお互いの思惑が錯綜している。
少しの沈黙の後で、何か「よし!」と聞こえそうな感じで、両者共に鋭い目付きに変わって、二人共に地面を蹴って、またお互いに急接近してきた。
ダッ、ダッ!
さっきまでとは、比べモノにならないほどの高速と激烈の戦闘が展開されている。
お互いの拳や蹴りに肘打ちや膝蹴りを織り交ぜていき、両者が相手の攻撃を防御や回避や後退などしてかわし、なかなか二人の攻撃が相手に当たらない。
その戦闘は最早、一般観客席に座るお客様たちやアテナや審判などの目には映らないほどの速さである。
またしても両者の速く激しい攻防に、周囲からは歓声やどよめきも消えて静かになっていたが、今度はヴァグドーとオリンデルスの二人が闘いながら、少しずつ地面を離れて浮き上がり、なんと空中で激闘を繰り広げていた。
その後もしばらく、両者の激闘が続く中で、お互いに決定打・致命傷を与えられないまま、二人の間の中央で光輝と轟音が一瞬発生して、なんといつの間にか、ヴァグドーとオリンデルスがお互いに距離をとった状態で既に地面についていて、双方無言で立っていた。
バァァチィィン、タッ、タッ!
「……」
「……」
ヴァグドーもオリンデルスも沈黙が続いていたが、これはもしかすると、お互いにとって初めての経験かもしれない。
ここまで長く闘ってきて、相手に決定打や致命傷どころか、ただの通常攻撃ひとつさえ当たらないことに…。
最初のヴァグドーとオリンデルスは素手での格闘技で勝負している。
二人共にこれで闘ってきたけど、これで勝負がつかないと、このあと一体どうすればいいのか?
自分には見当もつかないのだ。




