190、エネルギー武闘台・A決勝戦
【ベスト8】
第一試合 (Aブロック決勝戦)
◎ヴァグドー
V.S.
◎ガルマン
(パートA)
●【No.190】●
大会二日目の昼前、まずAブロック決勝戦は大型円形闘技場1で行うことになる。
一般の観客席はほぼ満員で大変な熱気に溢れており、大きな歓声が上がっている。
ここからはアテナも特別観戦席に座って、Aブロック決勝戦を見学・観戦する。
またロンギルスやニーグルン姫や大魔女シャニルたちヴァグドーの仲間も一般観客席に座って見学・観戦している。
大型円形闘技場の中央には、審判らしき黒服を着た男と、参加選手であるヴァグドーと王護聖騎士のリーダー格のガルマンが立っていた。
ガルマンはアテナを護る光の魔法を使用する聖なる騎士のリーダー格の男性で、主にランクC・Dの多くの王護聖騎士を束ねるチームリーダーであり、そのランクは「A」である。
ヴァグドーは説明不要の男であり、最早伝説になりつつある。 これまでの予選の試合では、ほぼ素手の拳のみで勝利してきた冒険者ランキングトップの強者である。
「宜しくお願いします。 ヴァグドーさん」
「おう、宜しくのう」
審判を中央に左右に分かれたヴァグドーとガルマン。
ガルマンは槍を構える。 剣は帯刀したままだけど、まずは槍からであろう。
ヴァグドーは素手のままで突っ立ってるだけである。
ここでガルマンはヴァグドーを見ながら、ふと考え込む。 時間にして一瞬である。
今回もやっぱり素手の棒立ちか?
思えば予選の第一試合から素手のまま、ほとんど一撃で相手選手を倒している。
さすがだけど、相当な実力の持ち主だから、細心の注意をしながら、慎重に闘わなければならないな。
私以外の多くの同胞も、既に彼らに倒されてる……ここで私が敗北するわけにはいかない!
必ず今回こそは、この私が優勝するぞ!
このようにガルマンが意気込みを心の中で語ってる一方で、ヴァグドーは特に何も考えておらず、審判の「始め!」の合図を待つだけである。
「始め!」
審判の「始め!」の声と同時に、ガルマンがもの凄い勢いで地面を蹴って、もの凄い速度でヴァグドーの目の前まで急接近する。
「でぇぇい!」
その槍でヴァグドーの顔面を一突き―――
「ちぃっ!」
だがヴァグドーは瞬時に避ける。
それでもガルマンは槍の突きを高速連続して、ヴァグドーの上半身全域に襲いかかる。
だがヴァグドーは己の全身を使って、その突き全てを瞬時に巧みにひたすら避け続ける。
ダッ! ザザザザザザザッ―――ザァッ! ―――タッ!
そこでガルマンは槍を下側に振り回し、ヴァグドーの足めがけて、鋭く素早く足払いをする―――が、残念ながらヴァグドーは高くジャンプして、ガルマンの背後に回り込む。
「………」
この一連の流れで、ガルマンは既に悟った。
やはりこの男は強い……強すぎる。 おそらく、この私では……この男に勝てないだろう。 私もある程度武術に心得があるから判るのだ。 この男は私の想像も実力もはるかに凌駕している。
だがしかし、だからといって、この私には……今さら引き下がることなど、私にはできないのだっ!!
「………」
私は体勢を立て直し、再び槍を構えて、ヴァグドーを見つめていた。
「次はワシの番じゃな」
「…っ!!?」
ここでヴァグドーが左手を前に突き出し、掌からは禍々しく邪悪で漆黒の闘気が流れている。
そのままの態勢で、ヴァグドーは瞬時に地面を蹴って、今度はガルマンの目の前まで急接近する。
ダッ! バキィッ、ドゴォッ!
ヴァグドーの左手の掌底打ちが、ガルマンの右胸部分を狙うが、ガルマンがとっさに槍の柄で防御する。
だがしかし、槍の柄が破壊・鎧の右胸部分にヒビができた状態で、ガルマンが後方に勢いよくぶっ飛び、大型円形闘技場の端の壁に激突した。
「くっ!?」
「【神納覇・左頑】」
「うがぁっ!」
直撃は免れたガルマンだが、片膝を地面についた状態のまま、まだ立ち上げれないでいる。 でもガルマンはとても信じられないという表情をして驚愕している。
「ば……バカな? な……なんということなのか! ……本人はまだ本気ではないだろうが、この槍の柄を破壊して、しかも鎧の右胸部分もヒビ割れしているとは……相当な威力だぞ……っ!」
もし槍の柄で防御せずに、さらに鎧を着用していなかったら、明らかに致命傷である。 それでもある程度のダメージを受けるガルマン。
ガルマンは立ち上がり、柄が破壊された槍を捨てて、鞘から剣を取り出し構えた。
「……仕方がない……最早アレを使うしかないな……」
そう言うと、ガルマンの剣の刀身が光輝き、剣を前方に突き出し円形に動かし、ガルマンの目の前で、大きな円形の光のエネルギーが出現している。
そこから剣の刃の先端部を、大きな円形の光のエネルギーの中心部に当ててから、ここから一気に前方に押し出す。
「【ライトニング・サークル・ジェネシス】」
トン、ズドォーーン!
大型の光のエネルギーレーザービームが一直線に放出されて、一気に高速でヴァグドーめがけて襲いかかる。
「……ふむ……」
ヴァグドーは慌てることもなく、また焦ることもなく、ただ淡々と冷静に、両手の掌を前面に出して、どうやら両手だけで【ライトニング・サークル・ジェネシス】を抑え防ごうとしている。
ズッ、ズゴォウ!
ここでヴァグドーの両手の掌と【ライトニング・サークル・ジェネシス】が接触して押し留める。 ほんの少しだけ後退したものの、ヴァグドーは完璧に受けきった。
「な……なんだと……アレを抑え込んだ……だと……」
「へぇ~ なかなか凄いなぁ。 あの力をあんなにも自在に操るとは……ヴァグドーも……遂に【悪魔神の魂】を……」
ヴァグドーとガルマンの試合を観戦していた悪魔神オリンデルスは、なにやら小さく呟く。
「次はワシの番じゃな」
「…っ!!?」
再び両者は、大型円形闘技場の中央に立っていて、試合はまだまだ続く。
試合はまだまだ続くけど、既に互角の勝負ではない?
果たして、どちらが勝利するのか?




